20世紀世界第一の強大国としてのアメリカはもう終わったと、そのことを「証明」してみたい。そして、だからこの国の今は怖い、とも。
① 2015年に元会計検査委員長のデイブ・ウォーカーがこんな発表をした。国家累積赤字はGDPの4倍であると。これは、当時の正式発表の数字の3倍を上回るもので、年金、医療などの国の未払い分などを加算したものということであった。大変な自転車操業をやっているのだろう。
② 8月20日新聞夕刊にこんな記事が載った。『株主最優先を米経済界転換』。書き出しはこうだ。
『米主要企業の経営者団体「ビジネス・ラウンドテーブル」は19日、株主の利益を最優先する従来の方針を見直し、従業員や顧客、地域社会など全ての利害関係者の利益を尊重する新たな行動指針を発表した。これまで米経済界は「株主利益の最大化」を標榜してきたが、大きな転換点となる』
この団体表明が本心か否か、守られるのか否か、つまり単なる見せかけ、嘘ではないかという問題は今は置いておいて、これの歴史的重要性は分かる人には分かるという、世界史的な出来事である。
③ ①と②の背後にある原因は同一「株主」たちだ。株主資本主義がアメリカの物作りを壊して、大量の白人失業者や超格差を創ったことを通して税収は減っているのに、イラク戦争、アフガン戦争を実質継続中などと、軍事費の政府支出に占める割合などはほとんど減らしていないからだ。ちなみに、イラク戦争の期間には爆発的に増えたから、もうあんな戦争は、自暴自棄にもならない限りできないだろう。「戦争はしない」と公約していたトランプが今はベネズエラ、イランなどにやってきたように「戦争」と口で脅す、とかだけ?
④ この「株主資本主義」は偽の好景気、サブプライム・バブルを創り、リーマン・ショックでこれが弾け飛び、イタリア、スペインなど西欧も含めて世界を「100年に一度」のどん底に落とし込んだ。今また懲りずにGAFAバブルを創っているのも、そういう「株主」たちではないのか。彼らが喧伝している「求人率向上」は日本安倍政権の宣伝と同じで、パート、臨時など、不安定雇用を増やしたというだけの話であって、何の職業的展望も開けない社会であり続けている。これこそ、株主資本主義が創った世界なのだ。生産力は爆発的に伸びたこんなに豊かな社会なのに、なぜなのか?
⑤ 以下のアメリカが進行させてきた諸行動も、こういうアメリカの困窮からこそ出てきたものと考える。ずっと標榜してきた「自由主義」経済を投げ捨てて、ブロック経済に走ったこと(ブロック経済とは、知る人ぞ知る、二つの世界大戦への反省から人類に生まれた世界史的禁じ手だったはずだ)。シリア、ベネズエラ、イランなどに対する「戦争外交」。これらすべてを通じて、一貫して見られる、国連無視、つまり多国間主義外交を放棄した単独主義行動を、他の何よりも僕は批判的に強調したい。今は、アメリカが国連を尊重しさえすれば「人類に戦争があるという現実」(これが、9条改訂の理由になっている)さえ変えられる時代が来たと、僕は思う。だからこそ、20世紀人類に初めて生まれたこの国連が大切なのだとも。