たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

葉祥明美術館へ行ってきました

2017年05月19日 20時14分00秒 | 美術館めぐり
 




梅雨前の新緑がまぶしい一日、十数年ぶりに北鎌倉の葉祥明美術館『赤毛のアン』展と、あじさい寺として有名な明月院へ行ってきました。5月1日以降、ずっと気持ちが張りつめていたので息抜きの時間が必要でした。喧噪の中に戻ってくると、束の間夢をみていたかのような気がしますが、緑のシャワーをたっぷり浴びながら、青空の下、久しぶりになにもしないという贅沢な時間を過ごすことができました。自分の部屋でも朝、鳥の鳴き声は聞こえるし、裏山の緑も青空もみえますけどね、なにかに追われるように一生懸命~しなければと何かをしてしまいます。せまいし、モノは多いし、生活の音を気にしながらで妙に緊張してしまうので、何もしないでいることって日常生活の空間ではむずかしいです。来週の面接は素直に1年3か月で学んだこと、得たことを話せばいいので、あれやこれやの手続きも終わったし、もうすぐカウントも始まるのでちょっとほっとしたところで、お仲間のブログから知った『赤毛のアン』展の最終日に間に合いました。

 葉祥明さんの絵との出会いは、わたしが高校生の頃にさかのぼります。ずいぶん前のことになりました。毎月定期購読していた小さな雑誌に葉祥明さんの絵が掲載されていました。シンプルな独特の世界観、誰にでも描きそうで描けないメルヘンの世界に憧れました。北鎌倉の美術館を訪ねたのは十何年ぶりになるでしょうか。以前訪ねた時はショップだけで中には入らなかったような記憶がありますが、今回は『赤毛のアン』展。チケットを購入して展示室に入ると、贅沢なメルヘンの世界が広がっていました。どの部屋にもゆったりとしたソファや椅子が置かれていて、ゆっくりとテーブルの本を読んだり、絵を眺めたりすることができました。『赤毛のアン』とプリンス・エドワード島を描いた絵本の原画は、物語の展開に沿って原文と訳と合わせて展示されていました。ちょっと物語の引用場面と絵があっていないかなと思わないでもないところもありましたが、吉村さんの写真とはまた違うプリンス・エドワード島。実際にはアンもダイアナもギルバートも島のどこにもいませんが、アン達が今にも動き出しそうな感覚でした。ソファに腰を沈めてゆったりと絵を眺めていると、プリンス・エドワード島の色々な緑をしっかりと描き分けられていると感じました。秋の黄葉の中をアンとダイアナが歩いている所やピンクと紫色がまじりあった夕暮れの色など、島を訪れた時本当にそんな色に出会ったのでなつかしい気持ちになりました。

 『赤毛のアン』展以外は常設展示でしょうか。企画展示室のお隣の部屋は、魂の風景と名付けられた油彩の絵が展示されていて、実は『赤毛のアン』展以上に心惹かれました。キャンバスでなければ出せないであろう深い味わいがにじみ出ている絵ばかりで、葉祥明さんの絵の真髄に触れたような想いがしました。わたしが歳をとってきているように、葉さんも歳を重ねられて、こんな深い絵を描かれるようになられていたんだと感慨深いものがありました。この部屋にも椅子がいくつもあって魂の風景に包まれながら、ゆったりと静かな時を過ごしました。DVDの映像と音楽が流れていたので癒されました。二階に上がるとメルヘンに溢れた家具と共に飛び出す絵本のコレクション、本、詩、動物の絵なども展示されていました。葉さんのふるさと、熊本城を描いた絵もありました。2012年、震災前ですね。2階はこんな本も出されているのかとちょっとびっくり、知らないでいました。印象に残ったのは、『パヤタスに降る星‐ゴミ山の子どもたちから届いた贈り物』、『地雷ではなく花をください』、『サニーちゃん、シリアへ行く』など。メルヘンではありませんが、葉さんの筆で写実的ではなく、なにかを必死に伝えていました。金銭的にだと思いますが難民支援にもかかわっておられるようです。13年働いた会社はクソですが、中東やアジアに出張で行く人たちの世話をしていたので私自身は一度も行ったことがなくても国名とか毎日仕事として目に触れていたのでなんとなく全く知らないところではない感がわたしの中であるんですね。シリアが内戦状態になる前には出張した方々がいてあれやこれやと関わったのでわたしのなかで遠くない。クソな会社でもプラスになることもあったってことですかね、それはいいとして、こうして普通の生活を営める日本人はまだまだ恵まれていて幸せなんだなと思いました。テーブルにおかれた本を読みながら、営めない人もいることを知ったあとなので、なおさら普通の生活を営めることがいかに尊いかを深く感じたしだいです。当たり前すぎると気づきませんが、ほんとにありがたいことですよ。

 長くなってきました。展示されていたこんな詩が印象的だったので書き留めてきました。葉さんの絵で本になっているようです。

「<いま>を強く生き抜くために・・・―ホワイトウルフの教え―

 やりたいことと
 やるべきことの
 バランスが大切です。
 やりたいことは
 自分のため。
 やるべきことは
 他の人や社会のため。
 どちらか一方だけでは、
 人生に悔いが残ります。」

 
 明月院もかなり久しぶりでした。あじさいには早かったですが薔薇などお花がいちばん美しいころで、日陰の椅子に腰かけて風に吹かれながらぼんやり青空と緑を眺めながら過ごしました。着いたときまずお昼を食べればよかったのに食べなかったのだけがちょっと心残り。美術館から明月院へ歩いて行く途中のお茶屋さんでいただいたうさぎまんじゅうと紅茶がお昼になりました。外の茶席で緑の木々を眺めながらいただきました。北鎌倉の緑と心地いい風に包まれた午後の時間。贅沢なひとときでした。


ミニ版CD付 赤毛のアン ∼Anne of Green Gables∼ (世界の名作英語絵本)
モンゴメリ
Jリサーチ出版