「自然と人間の関係、世界における人間の位置を考える時、フランスの作家サン=テグジュペリの思想もクローズ・アップされてくる。空を飛んだサン=テグジュペリは、肝心なものは目では見えず、心で見るのだ、と考えた人だが(『星の王子様』)、人々が人生に意味を導き入れながら生きることの重要性を論じたのである。サン=テグジュペリは「人間であるということは、自分の石をそこに据えながら、世界の建設に加担していることだ」と述べている(『人間の土地』)。私たちは、今、しっかりと地に足をつけながら、一人ひとりが「世界の建設」に加わっていることを感じ、生きているだろうか。私たちは、今、改めて、自らの感性がどのようなものになっているかを問う必要があるのではないだろうか。時代の変容のなかで、私たちが何を得、何を失ったのかを真摯に問う必要があるのではないだろうか。
私たちはどのような方向に向かって歩むのか。かつては、親密で水入らずの関係と、深い愛情と人間理解によって支えられていたと思われる家庭においても人間関係の希薄化が指摘され、学校社会、地域社会、全体社会、さまざまなレベルにおいて、感性の荒廃が叫ばれている。私たちは、自らが辿って来た道を再考し、これからの時代、社会を人間の深い相互理解に基づいていかに創造するかを考える必要があるだろう。」
(山岸美穂・山岸健著『音の風景とは何か』NHK出版、4頁より)
大切なものは、目にはみえないんだよ
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