たんぽぽの心の旅のアルバム

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松本侑子著-断頭台に散った女王メアリ~スコットランドの風土と魔法をたどる旅~

2024年06月23日 11時09分54秒 | 本あれこれ

イギリスへの旅の思い出-エジンバラ2日目

イギリスへの旅の思い出-エジンバラ

 

 2024年6月21日(金)東京宝塚劇場で月組を無事に観劇。『Eternal Voice消え残る想い』がレディ・ベス(のちのエリザベス1世)に処刑されたスコットランド女王メアリ・スチュアートの首飾りをモチーフとした物語だったので復習。映像もとても綺麗で、1992年に訪れたロンドンとスコットランドの丘がおぼろげに思い出されました。

赤毛のアンのセミナーでいただいた資料より全文引用させていただきます。

 

「連載エッセイ「読む旅vol.4

断頭台に散った女王メアリ

~スコットランドの風土と魔法をたどる旅~松本侑子

 

🌸『赤毛のアン』に登場する女王メアリの詩

 スコットランド女王メアリを、ご存じだろうか。私は以前はよく知らなかったが、『赤毛のアン』の翻訳をきっかけに興味をもった。『アン』の主人公案は、スコットランド系カナダ人で、メアリの悲劇を描いた詩を唱える。そこから興味をもって、英国貴族レディ・アントニア・フレイザー著『スコットランド女王メアリ』(中公文庫)を読んだ。本を持ってスコットランドに行き、メアリの生涯の土地を訪ねてまわった。

 

🌸生後6日めに父と死別、16歳でフランス王妃に

 メアリは1542年、スコットランド王の娘として生まれた。当時のスコットランドは、イングランドとは別々の国で、両国は戦争中だった。メアリが生まれた6日後、父は、戦況悪化の心労で逝去する。

 国内には、王と敵対する反乱貴族もいた。いずれは女王となるメアリの身を案じた母は、娘をフランスに送る。というのも母は、フランス貴族の出身だったのだ。

 メアリは5歳で母と離れ、フランスへ。私は、メアリが母と永遠に分かれたグラスゴー近く、ダンバートンの山城に登り、メアリが船出した海を見下ろした。冷たい海風に吹かれながら、幼くして親元を離れて外国へ行くメアリの寂しい心境を想像したものだ。

 フランスで、メアリは美しく育ち、15歳で皇太子と結婚、16歳でフランス王妃となる。ところが夫が亡くなり、18歳のメアリは、スコットランド女王として祖国へ帰る。

 

🌸メアリとエリザベス、波乱に満ちた2人の女王

 その頃、スコットランドの隣国イングランドは、エリザベス女王1世が治めていた。

 エリザベス女王と言えば、スペインの無敵艦隊を破って英国を発展させ、劇作家シェイクスピアが活躍した時代を作った名君として有名だ。

 そのエリザベスにむかって、生意気にも、19歳のメアリは、自分こそが正当なイングランド王だと主張した。王家の血筋を見ると、メアリの要求に不思議はないが、いずれにしても、血のつながった2人の女王の亀裂が深まり、結局メアリは自分の死期を早めることになる。

 さらに時代は宗教革命。スコットランドでも新教プロテスタントが力を伸ばし、少数派となった旧教のメアリは、力が弱かった。

 そんな折り、イングランド王の血をひくダーンリー卿と出逢い、若いメアリは救いを求めるように結婚。だが夫は酒と女にだらしなく、しかもメアリの王位を狙っていた。夫に裏切られた身重のメアリは、堅牢なエディンバラ城にこもり、一人で息子を出産する。

🌸古都エジンバラに残されるメアリの面影

 古都エジンバラには、20代のメアリが夫と暮らした宮殿、出産したお城がある。彼女の毛髪、日用品、丁寧な刺繍、肖像画があり、メアリの人となりを思い浮かべて見学した。

 メアリの生涯は波瀾万丈で簡単には語れないが、結局は、スコットランド国内で、貴族との戦いに負け、イングランドに逃げていく。

 祖国スコットランドを離れる最後の夜を過ごした最後の夜を過ごした僧院は、エジンバラから遠く離れた辺境の村。500年たったいmは、廃墟になっていたが、保存公開されていた。遠くから海鳴りが響く寂しい所だった。次の日隣国イングランドに入ったメアリは、すぐに捕まり、19年間幽閉され、44歳の時、処刑された。

 

🌸ケルトの魔法に包まれた魅力あふれるスコットランド

 スコットランドは、しばしば冷たい時雨がふり、夏でもホテルやバスに暖房が入るほど寒い。木も育たない荒れ地、灰色の湖と海が広がる。けれど冷たく澄んだ空気や、バッグパイプの不思議な音色、スコットランドなまりの言葉に、ケルト族の魅力が、魔法のように溶けているのだ。

 帰国したある日、英国ペンクラブ元副会長が来日され、お会いした。驚いたことにメアリの評伝作者、フレイザー女史の妹さんだった。メアリの直筆手紙も研究した作家の身内からお話を聞いて、はるか昔に生きたメアリとの距離が少しだけ縮まった気がした。」

 

 


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