たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

『アンネの日記』より-現代の悩み

2024年06月29日 11時35分53秒 | 本あれこれ

「ここの生活では、大人たちの方が苦しんでいるという人は、わたしたち子供の上にのしかかっている問題が、どんなものだかを知らないのです。これらの問題は、若いわたしたちにはあまりにも重荷で、絶えずわたしたちを苦しめています。わたしたちはいろいろ苦しんだあげく、やっとその解決策を考えついたと思っても、現実にぶつかると、その解決策は泡のように消え去ります。理想も、あこがれも、夢も冷たい現実に直面すると、たちまち打ち砕かれてしまうのです。これが今のような時代の悩みです。

 あまりばかばかしくて、とても実現しそうもない自分の理想を、全部捨てられないのをわれながら不思議に思います。理想を持ちつづけているのは、人間の性は結局、善であることを、いまでも信じているからです。わたしは混乱、不幸、死などを土台として、その上に自分の希望を築くことはとてもできません。

 わたしは世界が次第に荒廃しているのを見、わたしたちさえも破壊するかも知れない、嵐の近づいている音を聞きます。数百万の人々の苦しみを身に感ずることができます。しかしそれでもなお、天を仰ぐとき、すべてがまた正常に帰り、この残虐も終わり、平和と静けさが世界を訪れるだろうと思います。

 それまで、理想をもちつづけなければなりません。やがて、これを実現できる時が来るでしょう。」

 

(A・フランク 皆藤幸蔵訳『アンネの日記』1974年7月25日第1刷、1978年10月1日第11刷文春文庫、365~366頁より)

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