アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

ベートーベンを超えたかったシューマンの弱点と天分

2017年02月15日 | ピアノ
ベートーベンが偉大な作曲家であることはもちろん異論ないけど、シューマンも十二分にスゴイと思うし、でもそれで満足して幸せに暮らしましたとさ、とならないところが芸術家というものらしい。たいへんだよねほんと。

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これまでシューマンにほとんど手をつけてこなかったのは、まぁシューマンの曲ってあれもこれも弾きにくいじゃない? それに難しい曲ばっかりでどうせ弾けるものがないと思ってたんですよ。謝肉祭とかクライスレリアーナとか。「子供の情景」もあるけど(楽譜白い系)あれはあれで煮ても焼いても食えないというか…

つまりそう思っていたときというのはユーゲントアルバムのことが視野に入ってなかったんです。今回、ようやく弾いたり聞いたりしてみて、十分シューマンの魅力が楽しめる、そこそこ挑戦しやすい曲がある(短いだけでも大きなアドバンテージといえよう)ということがわかったので、

弾いてさしあげてもよろしくてよ

ってな気分になっている(^^;; 今年のうちにあといくつか弾いてみようと思います。

ともかく、私の弾けないクライスレリアーナとかも含めて、そういう、小粒な作品が合わさって一体となっているタイプのピアノ曲にはあれこれ傑作があるわけだけど(弾きにくいのは難点としても)、シューマン自身はこれに満足して「どやっ」て気分にはなれなかったらしい。

そんな曲(キャラクター・ピース、性格小品)を書ける作曲家はいくらでもいる(いるのか!?)、もっと本格作品(ソナタとか交響曲とか)を作らないと。つまり、ベートーベンの後継者になりたいというわけ。でも向き不向きってあるもんだし…

向いてない分野なんてほっときなさいよって思うけど。クララと結婚してほとばしる勢いで作られた歌曲なんてほんとに傑作目白押しで、美しいメロディーラインもさることながら、画期的なのは歌とピアノの関係。単にメロディー担当する歌、伴奏担当するピアノということにとどまらず、

「ピアノやオーケストラが担うメロディと、声が担うレチタティーヴォ」(グリーグによる)
という画期的なあり方を生み出した。

ちなみに、この「グリーグ」ってのはあのグリーグのことだけど、ワーグナーの子分(ヨゼフ・ルービンシュタイン)がシューマンへの攻撃記事(シューマンの音楽は安っぽいサロン音楽だという)を書いたとき、グリーグは自分の音楽に刺激を与えてくれたシューマンに感謝していたので反撃を試みたのです。

そういった話を、今私は「音楽と感情」(チャールズ・ローゼン)の付録部分にある「ハッピーバースデー、シューマン!」から引き写して書いているのですが、この短い文章はたいへんおもしろいんです(artomrくんが推薦してくれました)。

この小論によればシューマンの弱点のひとつは、「基本リズムに変化をつけるのが苦手」ということだそうで、基本リズムというのは、たとえば「四分の四拍子」というのが「1(強)-2(弱)-3(やや強)-4(弱)」という拍を持っていて、その小節が4とか8とか集まってひとまとまり、というようなものです。西洋音楽では基本中の基本。

シューマンはこの拍節システムのことを「監獄」とまで形容している(ベルリオーズの幻想交響曲についての評論の中で)のだけど自分はこれから抜け出すのがとことん下手らしい。モーツァルトやショパンはわりとやすやすと自然に崩しちゃうんだけれども。

でも苦手だからこそ、その限界に挑み続けて新しいことをしちゃうという面があるもので、拍の原則を崩すこと(そういや私の弾いた「ミニョン」もやたらと四拍目が強かったですが)とか、いろんな実験的な作曲に意欲的に取り組んでいました。そういった「あがき」が前述の、グリーグがいう素晴らしい声/ピアノの組み合わせにつながっている(らしい)。

また、もうひとつの苦手が対位法で、ショパンはバッハを研究し尽くして「一小節一小節が理論的に誤りのない四声の和声の実現」という調子で曲をモノにしているのに対して、シューマンは「ひとつのメロディとそれに従属する和声」というふうに作っていく。ここから、ショパンとは違うペダル使いの魅力とかが生まれてくる(らしい)。

よくわかってないでまとめてるので、正確なところは元をご覧ください。なんか、そういうことを聞いてからまた曲を聞くとおもしろいかなと思って、シューマン「詩人の恋」レクチャーコンサート、楽しみにしてます(^^)

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