骨董品に関する物語・ワイングラスとボンボニエール

「賢者の贈り物って、お酒好きの旦那が妻にワイングラスを、甘いもの好きの妻が旦那にボンボニエールをプレゼントする話だっけ？」
「お前はもう何も喋るな」

骨董品に関する物語・スプーンリング

　彼女はずいぶん昔から鎖に通した大振りの指輪を首から下げていて、当人に言わせるとそれは彼女の家に代々伝わる、将来の夫となる相手の証だという。やがて僕は彼女から告白を受けたが指輪のサイズが合わないことを突っ込んだら、指輪に嵌る細さの指の持ち主なら良いのだそうだ。

骨董品に関する物語・肉切り用カトラリーセット

　森で獲物が捕れると、祖父は必ず秘蔵のカトラリーを用意して肉を切り分けさせた。かつて森で遭遇した鹿の王があまりに優美だったので、王の眷属を拝領する礼儀だと話してくれた。やがて家名が傾き、財産が散逸して久しい今、私は見知らぬ骨董店で懐かしい再会を果たすことになる。

骨董品に関する物語・フランスのクレイユモントロー窯のプレート

　揃いだった筈のプレートが一枚足りないと指摘したら、少し前に大喧嘩した時の感情に任せて割ってしまった、大事な皿を台無しにしたことを怖くて言い出せなかったと泣いて謝られた。だから僕は妻が捨てられずにいた皿の破片を職人に依頼して金継ぎさせ、一度きりなら粉々になっても直せる事だってあると笑いかけた。

作品その７５・妹弟子

たかあきは『真珠』と『水砂糖』を材料に『大地の花兎』を錬成しました。用途は滋養強壮です。

　私の弟子になるなら、もう親戚と思って甘やかしはしないと断言した後で、師匠は妹弟子に得意及び不得意錬成項目を尋ねた。得意は絡繰りで不得意は基礎触媒錬成という答えが返ってくると、最近多いんだよなと苦々しげに呟いた師匠は、とりあえずここ一か月は精錬水を作っていろと有無を言わせず宣言して妹弟子を落ち込ませた。