骨董品に関する物語・お月様のブロッター

　光を失って久しいお月様を見つけたので磨いてあげたら丁寧にお礼を言われた。ところで貴方の仕事は何と尋ねると、ペンで書いた文字の上に吸い取り紙を置いた時に押さえる事ですと答えが返ってきた。だからお月様をインクやガラスペンと一緒に今は遠くで暮らす彼に贈ったら、律義に手紙をくれるようになった。

骨董品に関する物語・星のカフスとネクタイピン

「
このネクタイピンを身に付ければ君も胸に七つの星を持つ男になれる！」
「この星の数、八つ無いか？」
「多分八つ目は死兆星だな」
「表に出ろこの野郎」

第十五景・冬桜

たかあきは、厳冬の田舎と桜の造花に関わるお話を語ってください。

　故郷で暮らす祖母は手先が器用だが、冬の間は桜の造花ばかりを作っている。どうして他の花を作らないのかと尋ねると、年が明けてから春になるまでの間の寒い日に、ふと今年は本当に春が来るのだろうかと不安になる時があって、だからそういう時は一足早く自分の手で桜を咲かせたつもりになるのだそうだ。