第十六景・花に棲む鬼

たかあきは、朝の初恋と桜の上に関わるお話を語ってください。

　毎朝恒例のジョギングの最中、ふと咲き揃った桜並木の枝に視線を向けると、何故かそこに白い古風な着物を着た綺麗な人がいた。呆然としている間に姿は消え、散々探しても見つからなかった上に学校に遅刻して傷心の僕は何があったと聞かれるまま友人に朝の出来事を話したら、知ってるか、桜の精は男だぞと言われて更に落ち込んだ。

骨董品に関する物語・フランス製の時計ケース

　子供の頃、中で花が浮いているように見える貯金箱を持っていたことがある。勿論鏡を使ったトリックが仕込んであるのだが、そんな貯金箱を持っていた私にも彼が使っている時計ケースに入れたものが宙に浮くトリックは見破る事が出来なかったので降参したら、彼にも分からないそうだ。

骨董品に関する物語・マラカイトグリーンの文房具セット

　中学に入学した時、父から随分と古風な文房具セットを贈られた。スクレーパーと頭文字の印章、それにペーパーナイフと一体になった付けペンを示しながら、お前にはまだ早いかもしれないが使い方を教えるから覚えなさい。きっと生涯の相棒になると言われても実感がわかなかったあの時からずいぶん時間が経ったが、文房具セットは父の言葉通りに今も僕の傍らで働いている。

骨董品に関する物語・義眼ケース

　刑事だった曽祖父が解決した最悪の案件は数か国を跨いで発生した連続殺人事件で、被害者は老若男女の別なく全て顔を潰されていた。一連の事件をさる令嬢の証言を元に結びつけた曽祖父が追い詰めた犯人の部屋には被害者から奪った義眼がケースに並び、犯人が描いた被害者全員の肖像画が飾られていた。