1993 Europe日記
1993.3.5(Fri) Paris
15:00 バスに乗ってエッフェル塔へ向かう。一日券を買っているので、躊躇が無く何度もバスに乗ってしまう。
エッフェル塔(Wikipedia)
最初から電波塔として計画された東京タワーとは異なり、エッフェル塔はパリ万博の展望塔として建てられたもので、後になってラジオの送信塔などとして使われるようになったという。だからどちらかといえば、機能重視ではなく、見栄え重視だったのだろう。東京タワーのように足下に送信設備のあるビルが納まったりしておらず、塔の足下はすっきりしているし、公園から見るときっちりとシンメトリーな景観になっている。
この公園の並木と塔の姿も、パリ市の景観保全策によって保持されていることを、後になって知った。シンメトリーな景観は西欧ではかなり意識されている。日本でも近代以降の都市や、中国の影響を受けた都、寺社などにはシンメトリーな景観が見られるが、バロック都市ほどのこだわりは無い。
何度も比べるのもどうかとは思うが、やはり身近で規模も近い東京タワーと比べたくなる。エッフェル塔の竣工は1889(明治22)年で、1958(昭和33)年竣工の東京タワーより70年近く前にできており、鋼鉄製ではなく、なんと錬鉄製なのだそう。昔なので太く大きな鋼材も造れなかった、使えなかったのだろう。最近の建物よりは全体に細い材で構成されている。
技術的な理由もあるし、また当時はまだモダニズムの合理的デザインの時代より前だという理由もあって、エッフェル塔は東京タワーに比べると遙かに細かなディテールデザインを持っている。高さや姿形は似ているが、近くで見ると二つの塔は実はかなり異なっているのだった。
足下から覗くと第1展望台のフロアは中央が空いていて、ロの字型をした平面している。鉄骨で造られたアーチのディテールがシルエットになって美しい。
16:00 10FFで第2展望台まで階段で上る。さすがにこれは少々しんどかった。
第1展望台(1er etage)から基部を見下ろす。第1展望台の高さは約57m、その上の第2展望台は高さ約116m。
特段の理由はなかったのだが、別に高い料金を払ってまで頂部に上りたいとは思わなかったので第2展望台までにした。パリの場合、周辺に高い建物がないので、途中のレベルでも眺望は十分よい。そのへんは周辺を超高層ビルに囲まれてしまいつつある東京タワーとはかなり状況が異なる。
途中のフロアには斜行エレベーターの巻上機があり、大きなホイールがゆっくり回ってエレベーターを上下させていた。東京タワーは塔の中央に垂直のエレベーターシャフトがあるが、エッフェル塔の下部では、斜めになった4本足の中にエレベーターが仕込んであり、籠はレールの上を斜めに上下する。このあたりも美的なものを重視したデザインに因る仕様なのだろう。複雑なことになってはいるが、機械が動くさまが近くに見えるのがまた面白い。
シャン・ド・マルス公園から
ところで、エッフェル塔は各面の正面から見ると、すっきりして格好良いのだが、斜め方向から見ると、下部の広がりが大きく見えて、ややもっさりした感じになる。これは実際にパリに行ってあちこちからエッフェル塔を眺めてみて、初めて気がついた。
設計・建設時にどのように意図していたかは知らないが、立面図的に見る時に美しく見えるようにしたようで、立体的になると却って下部のスカートが広がったようになって、安定感はあるが高さ感がやや減るような気がする。それもあって絵葉書などでもその過半が立面図的な写真になっている。
これに対して東京タワーは立面図的に正面から見ると思っている以上に細身だ。もともと正面から見える場所が少なく、シンメトリー景観が得にくいせいもあって、多くの写真は塔に対して斜めに撮られていることが多く、そのラインが私たちの記憶認識の中でも一般的なものになっている。だから斜めから見た時にもっさりするなどということはなくて、逆に正面から見ると妙にすっくと建っている感じに思われる。
エッフェル塔と比べた時、塔の足下のあたりのごちゃごちゃ感は東京タワーの景色の残念な部分なのだが、斜めから見た時のフォルムに関していえば、個人的には東京タワーの方がすっきりしていて高さ感が感じられるプロポーションなのではないかと思っている。
ヨーロッパ旅行記 1993.2.28〜3.21
Google Map 1993.03 Europe
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