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07/11/15の朝刊記事から
報復殺人犯 英雄に? ロシア
航空機事故で管制官を殺害 遺族に国民寛大
【モスクワ14日藤盛一朗】ドイツ上空で2002年に管制ミスにより墜落したロシア旅客機の乗客の遺族が、報復としてスイス人の管制官を殺害し、13日、刑期を終えて帰国した。
テレビ各局がこれを大々的に報じ、ロシア社会では「遺族の行動は英雄的か犯罪か」との論議が起きている。
02年7月、ドイツ南部上空でロシアのチャーター旅客機と国際貨物DHLの貨物機が空中衝突し、ロシア機の乗員・乗客71人と貨物機の乗員2人が死亡した。
妻、長男、長女を失ったロシア南部ウラジカフカスの建築技師、ビタリー・カロエフ氏(51)は管制官への復讐を決意。
04年2月、スイス・チューリヒ郊外で管制官=当時(36)=を刺殺した。
カロエフ氏はスイス当局に逮捕され、禁固8年の刑に服することになったが、減刑され、12日に釈放された。
ロシアのテレビ各局は、チューリヒからモスクワに向かう帰国便にこぞって記者を派遣。
「ようやく家族の墓に行ける」と穏やかに語るカロエフ氏の機中インタビューを放映した。
モスクワの空港では、親族のほか、大統領府が設立した青年団体「ナーシ」の活動家が出迎えた。
活動家は、モスクワ市内に向かう道路沿いにも立ち、「あなたは真実の人間だ」と書かれたプラカードを手に歓声を上げた。
カロエフ氏は、歓迎に戸惑う一方、テレビの取材に「(報復は)なされねばならなかった」と固い信念を吐露している。
14日の新イズベスチヤ紙は、23%が同氏の行動を支持し、44%が同情するとした世論調査の結果を報じ、「犯罪や復讐に寛大な国民意識がうかがえる」と指摘した。
また、「カロエフを英雄にしてはならない。殺人は何といっても犯罪だ」(女優のクラチコフスカヤさん)という非難の声も上がり、角界で反響を呼んでいる。