田母神空幕長を更迭
論文で侵略正当化
防衛省の田母神俊雄航空幕僚長(60)が、日中戦争などについて「侵略国家だったというのはまさにぬれぎぬ」と、中国侵略や朝鮮半島の植民地支配を正当化する論文を民間企業主催の懸賞論文に応募していたことが31日、明らかになった。
浜田靖一防衛相は同日、「政府見解と大きく異なる認識を示したことは空幕長としてふさわしくない」と空自トップの発言を重大視し、田母神氏を更迭、航空幕僚監部付とした。
政府は同日付の持ち回り閣議で田母神氏更迭を了承した。
論文は「自衛隊は集団的自衛権も行使できない」と憲法も批判している。
浜田防衛相は野党や中韓両国などの批判を避けるため早期の事態収拾を図ったが、野党側は今国会で政府の責任を追及する構えだ。
麻生太郎首相は同日夜、記者団に「立場が立場だから適切でない」と述べた。
防衛省幹部も「新テロ対策特別措置法の審議に影響する。憲法に抵触する内容だけに田母神氏の責任は重い」と指摘した。
論文は「日本は侵略国家であったのか」と題してマンション・ホテル開発企業「アパ・グループ」(東京)の懸賞に応募し、最優秀賞(懸賞金三百万円)を受賞した。
審査委員には自民党の中山泰秀前外務政務官らが名を連ねている。
論文は、日清戦争、日露戦争などで国際法上合法的に中国大陸に権益を得たとしたうえで、日中戦争について「辛抱強く和平を追求したが、国民党の度重なる挑発を受けた。わが国は蒋介石により日中戦争に引きずり込まれた被害者」と主張した。
また、太平洋戦争については「白人国家の支配から解放された。戦わなければ人種平等が200年遅れた。
アジア諸国が大東亜戦争を肯定的に評価している」と強調。
東京裁判が戦争責任を日本に押し付けたため「自衛隊は武器の使用も極めて制約が多い」と不満を述べた。
田母神氏は今年4月、名古屋高裁が空自のイラク空輸活動を違憲と判断したことについて「そんなの関係ねえ」と発言し、批判を浴びた。