O dolce stelle,è l'ora di morire.
Un più divino amor dal ciel vi sgombra.
このくだりは即座に、トリスタンを彷彿とさせるだろう。
「おお、降り来よ、愛の夜を、
我が生きることを忘れさせよ。
汝のふところに我を抱き上げ、
現世から解放せしめよ」
(トリスタンとイゾルデ 第二幕)
Morir debbo. Veder non voglio il giorno,
Per amor del mio sogno e della notte.
わたしも死ねばよい、昼など見たくはないのだから
わが愛の夢、愛の夜がために。
このくだりはやはり有名なトリスタンのこの歌へと直結していく。
「こうして私たちは死ねばよい、
離れずに、永遠にひとつとなり、
果てなく、目覚めず、不安なく、名もなく、
愛に包まれ、我らかたみに与えつつ、
愛にのみ生きるために!」
(トリスタンとイゾルデ 第ニ幕)
が、この詩とトリスタンの違いは、この詩には恋人は出てこないということだ。
この詩は、詩人の一方的な愛であり、一方的な願いなのだ。
詩人はトリスタンの語り口は借りたが、かれが語りたいのは耽美的で閉鎖的な恋人たちの共同体のことではないのだ。
とりあえずここではそうではない、、、。
◆
三島由紀夫はダヌンツィオを生涯にわたって愛したが、かれの存在は同時にダヌンツィオという詩人を解き明かす鍵でもあるとわたしは思ってきた。
この詩における太陽、それは「豊穣の海」の勲が最期にみた太陽と重なるのはわたしだけであろうか。
「正に刀を腹へ突き立てた瞬間、日輪は瞼の裏に赫奕と昇った」(豊穣の海 第二巻 奔馬より)
憂国の士である勲のまぶたに昇った太陽は天皇陛下の象徴であり、日本そのものの姿であった。それは崇高な太陽だった。
ダヌンツィオもまた憂国の士であった。
だから、
O dolce stelle,è l'ora di morire.
Un più divino amor dal ciel vi sgombra.
このくだりの神聖なる愛とは、ただのことば遊びではないはずだ。
この太陽はダヌンツィオにとってはイタリアそのものであり祖国であった、と考えることもじゅうぶんに出来るのだ。
そうすると、母なる胸、青ざめた(荒廃した祖国の)大地、ということばが急に、憂国的なものに思えてくる。
この詩における夜が、ある時代を覆う''夜''であると思えてくる。
まあ、もっとも詩を解釈しようなどという愚かなことはこの辺でやめよう。
一週間後、わたしはイタリアに二週間研修し、さいごは完全な休暇として、ふたたびガルダ湖で過ごそうと思う。
湖のほとり、朝まだき、わたしはこの詩をつぶやき歌うだろう。
◆
この歌曲ほど名演に恵まれたイタリア歌曲もない。
とくにテノールが覇を争い、さいごのアクートは、ほとんどプッチーニの最高音を聴くかのようだ。
ティート・スキーパのまさにローマのダヌンツィオの時代を感じる演奏、
このバリオーニによるドラマティックな演奏(いちばんわたしのダヌンツィオのイメージに近い)、
クラウスによる詩人のデリケートさが出た演奏、
さいきんではファン・ディエゴ・フローレスのパリでの演奏が素晴らしく感じた。
リクエストしてみたいひとはヨナス・カウフマン。
バリトンは、、、バリトンが歌うときは最後のアクートはソ、音域も広く、難しい。
でも、やっぱりわたしは歌いたい。
バスティアニーニが歌ったものがあったらよかったけど。。。
''L'alba separa dalla luce l'ombra'' Gabriere D'Annunzio
L'alba sepàra dalla luce l'ombra,
E la mia voluttà dal mio desire.
O dolce stelle,è l'ora di morire.
Un più divino amor dal ciel vi sgombra.
Pupille ardenti,O voi senza ritorno
Stelle tristi,spegnetevi incorrotte!
Morir debbo. Veder non voglio il giorno,
Per amor del mio sogno e della notte.
Chiudimi,O Notte,nel tuo sen materno,
Mentre la terra pallida s'irrora.
Ma che dal sangue mio nasca l'aurora
E dal sogno mio breve il sole eterno!
''暁は光から'' ガブリエーレ・ダヌンツィオ
暁は光から闇を分かち、
わが欲求から快楽を分かつ。
おお、愛しき星たちよ、滅び行く時は来た。
さらに崇高な愛が 夜空からお前たちを退かせるのだ。
Und Morgen wird die Sonne wieder scheinen, und auf dem Wege, den ich gehen werde,
wird uns, die Glücklichen, sie wieder einen inmitten dieser sonnenatmenden Erde...
Und zu dem Strand, den weiten, wogenblauen, werden wir still und langsam niedersteigen.
Stumm werden wir uns in die Augen schauen,und auf uns sinkt des Glückes stummes
Schweigen...