★ 昨夜、NHKBSで世界的な指揮者「近衛秀麿」氏が欧州でドイツナチスからユダヤ系音楽家を護ったことの事実を報道していた。
「戦火のマエストロ近衛秀麿」という本を読んでいた私はぜひこの番組を見たいと思っていた。
内容は大変良かったし、貴重な資料も見ることができて有意義な時間であった。
近衛秀麿先生のことは私のブログでも書いていた。(ぜひご一読をお願いします・・・)
http://blog.goo.ne.jp/bellavoce3594/e/8b7606c41cd2d5af08e208272fde37fb
実は近衛秀麿・・・近衛先生の話は私淑していた戦前・戦中のプリマドンナであったN女史最晩年に出会った時にムソルグスキーの「ボリス・ゴドゥノフ」の日本初演の件に関してよく伺っていた。
しかし日本では指揮者と言えば岩城宏之氏や朝比奈隆氏をはじめ、テレビなどでよく放映されていた方々で、近衛先生はほとんど放映されていなかったように思う。
その中でNHKテレビが一日の放送の終わりに「君が代」を流すが、そのオーケストレーションが近衛先生によるものであり、オリンピックはもちろん世界的な場で、近衛先生による編曲が公式なものとされていたことを知っている。
並の才能ではない、「才能」なんていう言葉が吹っ飛ぶほど自然な音楽であり毅然たる魅力があった。
近衛先生がドイツナチスから救った音楽家は数多いが、その中で日本に亡命させ当時の東京音楽学校(現東京芸術大学)に教授としてお世話した偉大なピアニスト、レオニード・クロイツアー氏の名前が番組で出た時に、あのホロヴィッツと並んで最高のピアニストとして絶賛されていた演奏を思った。
東京音楽学校での教え子には戦後はじめてショパンコンクールに入賞した田中希代子氏、今でも90代でリサイタルを開き、ケンプにも学んだ室井摩耶子氏、フジ子・ヘミング氏、また欧州での生徒だったシュピルマン氏(映画「戦場のピアニスト」の主人公)がいる。
「戦火のマエストロ近衛秀麿」は大変読みごたえがあったが、当時の近衛先生は亡命させた人たちの安全を思ってその方々の名前を一切明かさなかった。
その中で日本に亡命させ、東京音楽学校に教授として就職も世話したレオニード・クロイツアー氏のことはある程度明らかにしている。クロイツアー夫人は共に亡命できず、後で夫君のいる東京に来るということでまだドイツにいたところ、ユダヤ系ということで捕えられた。
夫人に生活費を届けていた近衛先生はクロイツアー夫人を追って行ったが逮捕されてしまった。
ところがそこの役人たちが近衛先生の合唱団のメンバーだったのですぐに釈放された、という。
このことがユダヤ人たちに「近衛は私たちを救ってくれる」という希望をもたせた。
もちろん近衛先生は命がけである。
ただ、この番組には当時の日本政府がドイツナチスのユダヤ人迫害に一切手を貸していなかったことは報道されていない。これこそ最も報道してほしいと思ったことである。
もし続編が作成されたら日本の名誉の為にもぜひこのことをお願いしたいと思っている。
首相だった近衛文麿氏は兄だったが最後に弟にこう言ったという。
「お前は音楽家でよかったなあ・・・」何とも辛い言葉であろう。
兄はインテリ、弟は破天荒な性格、全く違うタイプだが仲が良かったという。
ブログのティールーム
**♪スメタナ:交響詩「モルダウ」~わが祖国 / 近衛秀麿指揮読売日本交響楽団
レオニード・クロイツアーのピアノ、リスト作曲「愛の夢」
Franz Liszt Liebestraum Leonid kreutzer
・・・古い録音で雑音がありますが、19世紀風のおおらかで雄渾な演奏です。今の演奏家と違うところがハッとします。素晴らしすぎる。録音の古さや雑音の欠陥を補ってあまりある魅力を感じます。