かつて安い労働力を求めて多くの企業が中国に進出しました。中小企業はもちろん、誰もが知る日本の大企業も例外ではありません。しかし、その状況は近年大きく変わりつつあり、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者、北野幸伯さんは「日本企業はすぐにでも中国から撤退したほうがいい」と警告しています。
対中直接投資25%減の衝撃
産経新聞11月14日付を見てみましょう。
中国リスクに翻弄され、工場撤退や合弁解消などに踏み切る日本企業が相次いでいる。ここにきて中国経済の減速も相まって、日本から中国への直接投資実行額は1~9月で前年同期比25%減と、数字上でも日本企業の対中進出に衰えが見え始めた。
前年同期比、25%減とは…。
メチャクチャ減ってるではないですか?
なぜ?
中国市場の巨大さや、安価な人件費にひかれて中国に進出した企業は多いが、突然の規制変更やコスト増など中国リスクに直面し、拠点を他国に移すなど戦略を見直す動きが広がっている。(同上)
結局、中国進出は「人件費」でしたよね。
10年前は、日本の20分の1ぐらいだった。
それが今では、5分の1くらい。
ベトナムはいまだに、日本比で20分の1くらいですから、超反日国家中国にとどまる理由はありません。
ルール変更で泣いたNTTコム
同記事には、中国で泣かされた「具体例」が出ています。
最初は「NTTコム」。
↓
中国政府の規制変更によって、上海でのデータセンターの事業計画が頓挫の憂き目にあったのは、NTTコミュニケーションズ(NTTコム)。
米エクイニクスやKDDIなどの競合に先駆け、世界で初めて独自資本で中国(上海)にデータセンターを開設する予定だったが、中国政府が今年1月、突然、データセンター事業の運営には免許が必要だと方針を変更し、独自での事業展開を撤回せざるをえなくなったのだ。
「突然ルールを変更する」
「法治ではなく、人治」
なのは、「独裁国家」らしいです。
突然の方針変更に、NTTコム関係者は「自国企業を守るため、当社のデータセンター事業を意識したのは間違いない」と苦虫をかみつぶす。中国の通信事業に詳しい関係者も「法制度の解釈権は中国側にある。あるときには何も言われなくても、急に『ここはこうだ』といわれることも多い」と、中国ではこうした朝令暮改は日常茶飯事だと指摘する。(同上)
中国の事情をよく知らず、あまく見て「痛い目にあった」ということですね。
しかし、考えようによっては、「事業を実際にはじめる前でよかった」ともいえます。
合弁会社株51%を19円(!!!)で売却するカルビー
次も、驚きの話です。
一方、浙江省杭州市にあるスナック菓子の製造・販売合弁会社を設立わずか3年で売却することを決めたのはカルビー。合弁会社の51%の持ち株全てを、合弁相手の康師傅方便食品投資にたった1元(約19円)で譲渡する。(同上)
1元(約19円)(!!!)とは……。
理由はなんでしょうか?
売却の背景には、売り上げが伸びず赤字が続いたことにある。5年で500億円を見込んでいた売上高が100分の1のわずか5億円程度にとどまった。
発表資料によると、これに伴い、最終赤字は進出した2012年12月期が500万元、13年12月期が4900万元、14年12月期が7100万元と年を追うごとに拡大。
早期に改善が見込めないと判断、12年8月の設立からわずか3年での撤退となった。
(中略)
わずか1元で持ち株を手放すのは、「早く中国戦略を仕切り直しをして、再挑戦するため」(市場関係者)とみられている。
カルビーは青島や香港にも製造や販売の拠点があり、スナック菓子の販売は今後も継続する。
損失が膨大になる前に、「サッサと売却を決めた」のは英断ですね。
しかし、「仕切り直しして再挑戦」というのは、やめた方がいいのではないでしょうか?
マクロ経済の動向を見ると、「再挑戦しよう」というのは無謀に思えます。
中国から逃げ出す日本の大企業
二つ例を挙げましたが、細かい話をしたら、まだまだ山ほどあるのです。
今年に入り、中国から撤退する企業が目立って増えている。2月にパナソニックが液晶テレビ生産、エスビー食品がカレールウなどの生産を打ち切ることをそれぞれ発表。
サントリーホールディングスは中国ビール2位の青島ビールとの合弁を解消、合弁相手の青島に製造販売をまかせ、ライセンス料を得る形に移行する。
また、ホンダも湖北省武漢に新工場を建設する構想があったが、中国経済の減速を受け、当面見送る。(同上)
パナソニック、エスビー食品、サントリー、ホンダ…。
日本を代表する大企業ばかりです。
なぜこれらの企業は、中国から逃げ出すのでしょうか?
日本企業が中国の生産拠点を撤退、縮小の方向に舵を切っているのは、経済失速のほか、人件費の高騰や政策変更などリスクがつきまとい、中国での事業が「割に合わない」状況になっているためだ。(同上)
「中国での事業は、もはや『割に合わない』」そうです。
まさに。
一方で、ネット上には中国から撤退や事業縮小した企業に対し、「英断」といった肯定的な意見も寄せられている。
中国リスクと付き合って、これ以上損失を広げない意味から、撤退を正しい判断と評価しているようだ。(同上)
まさに「英断」です。
中国にどうコミットしていくか、日本企業の間でも今後判断が分かれていきそうだ。(同上)
私は、「コミットしないのが最善」だと思います。
中国という「タイタニック号」はまさに沈みはじめているのに、「コミット」してたら一緒に沈んでしまいます。
「巨大な市場が…」というのなら、日本で生産して輸出すればいいのです。
「日本で生産すると、高くなり中国で売れない」
というのなら、東南アジアには人件費が中国より全然安い国がたくさんあります。
人件費の安い「親日国家」に生産拠点を移動させ、そこから中国に輸出すればいい。
こういうネタのときは、毎回書いてますが。
日本政府は、東日本大震災被災県の法人税をゼロにし、日本企業が中国から「撤退」「帰国」しやすい環境を整えてあげたらいかがでしょうか?
被災県に雇用が生まれ、復興も速くすすみ、安倍総理の支持率も上がるのでは?
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『ロシア政治経済ジャーナル』
著者/北野幸伯
★ 本日、在日フランス人協会主催のパーティーに初参加、ざっくばらんにいろんな話がきけました。
文学、ニュース、テロ事件・・・もちろん料理のお話も。
チャイナのことはよくご存じのようですが、私も初参加なので遠慮がちに発言。
元植民地だったベトナムからフランス語が完全にきえてしまったこと。
ベトナムはチャイナの人件費の半分、外国企業はチャイナからベトナムに軸足をうつしつつあるということです。
南京大虐殺の話、私はもちろん否定しました。
音楽関係や政治関係でない集まりなので、また違う雰囲気。