「神のごときフラグスタート」と讃えられた彼女の全盛時代はナチス統治の頃だった。
フルトヴェングラーはドイツ音楽を護る為、ナチス政権下で指揮をし、ユダヤ系の楽員をひそかに外国に逃がしていた。
そのフルトヴェングラーが絶賛したソプラノはフラグスタートで、世界最高のドラマティック・ソプラノだった。
キルステン・フラグスタートはノルウエー出身、祖国ノルウエーはナチスに占領され、なんと夫はナチスと協力したという疑いで投獄。(彼女の夫の疑いは晴れたが夫はその後亡くなる。彼女の演奏にはあからさまな妨害も出た。)
客席は冷淡な反応、そのような中で彼女は歌の力で逆転し客席は熱狂、しかしマスコミは冷ややかだったと彼女の自伝にある。
コンサートが始まると客席は嫌な雰囲気で、歌うのに勇気が必要だった。
しかし彼女が歌い始めると客席は熱狂した。彼女の「勝利」だった。
驚いたことにマスコミは「完全な失敗だった」と報じた。
Kirsten Flagstad "Ave Maria" Schubert
もう一曲、フラグスタートが珍しくイタリア語で歌ったヘンデル作曲「セルセ」から
オンブラ マイ フ(木陰よ)
完璧なイタリア語の発音と抑揚に驚いた。(彼女はイタリアオペラを歌っていない。)
ドイツ音楽を歌っていた歌手はかなり訛りがあるはずだが、それがない。
Ombra Mai Fu-Kirsten Flagstad