ベッラのブログ   soprano lirico spinto Bella Cantabile  ♪ ♫

時事問題を中心にブログを書く日々です。
イタリアオペラのソプラノで趣味は読書(歴女のハシクレ)です。日本が大好き。

大テノール マリオ・デル・モナコ

2008年05月31日 | オペラ
 往年の大テノール、マリオ・デル・モナコ主演、モスクワ・ボリショイでのオペラ「カルメン」「道化師」のDVDを観ました。
ボリショイ側がロシア語で歌い、デル・モナコはイタリア語で歌っています。
今時、こんな演奏はないでしょう。原語か訳詞のどちらかをひとつの言語で歌うことでしょう。今はほとんど原語でしょうけれど。

ところで、往年の大テノール歌手マリオ・デル・モナコを聴いて、素晴らしいどころではありませんでした。自分のすべてを賭けて壮絶に歌っています。
アリアでは高音を力強くおもいきり伸ばし、「黄金のトランペット」と称えられた美声は<肺腑をえぐらんばかりの>・・・この例えは有名な批評家のことばですが・・・悲愴美に満ちています。

ボリショイ側も相手役には堂々たる至宝のアルヒーポワを出してきて、「名勝負、結びの一番!」といきたかったのですが、ちょっと待てよ、これは「土俵がちがうんじゃないかしらん」と思いました。
アルヒーポワは「ボリス・ゴドゥノフ」のマリーナや「ホヴァンシチナ」のマルファを歌うと底知れぬ力量、まさに<大河のごとく>聴かせるのですが、デル・モナコとはどうも噛み合わないのです。

アルヒーポワの歌は、イタリアのメゾ、シミオナートやダニエリとも通じます。
全体の中で他を引き出しながらも、自らを輝かせるのです。
コッソットは他を圧しながらも自分と他者のコントラストをハッキリさせていきます。
全体の中で生かしながら輝く歌手たちなのです。天動説ではありません。

戦後まもないイタリアでは、敗戦のなかから力強くパセティックな魅力のデル・モナコを期待し求めたのかも知れません。
デル・モナコは荒れ果てた国土のなかから立ち上がった「英雄的な声」でした。
そして「一騎当千」の勇者、関羽のごとく、悲愴感をただよわせた魅力でした。

こうしてデル・モナコという不世出の芸術家を味わうこともDVDならではでした。

私は今、カップッチルリとギャウロフの「シモン・ボッカネグラ」の東京公演のDVDを待っています。ヴェルディ歌手の至芸を味わうために・・・。



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それぞれの臥薪嘗胆

2008年05月31日 | 政治
 フーレンさま(中国語で夫人の意)から「臥薪嘗胆」の番組が動画にある、というお知らせをいただき、名優陳道明の主演であると伺うと全編見たくなりましたが、それはさておき、「それぞれのちりとてちん」ならぬ「それぞれの臥薪嘗胆」なんて考えてみました。
「シェナルワゼにひかれて」というタイトルの文で、私が心ひかれたのはソ連崩壊前後の英雄であった彼です。それからはいろんな説があり、よくわかりません。
随分いいかげんかとは思いますが、オペラでスカラのライヴ「アンドレア・シェニエ」やザルツブルグのライヴ「ドン・カルロ」のカップッチルリと重なったのです。

ソ連外相からグルジア大統領になり、テロに襲われることもしばしば、やがて「バラ革命」で政界から追われる、というまでは知っていましたが、昨年、彼がプーチン批判の上、「ソチオリンピック」をボイコットせよ、と声明を出したことは記憶に新しいことです。グルジア人の彼は、ソ連時代外相を務めながらも「臥薪嘗胆」だったのかな、と思いました。

また、世界的チェリストのムスティスラフ・ロストロポーヴィッチですが、ソ連に弓をひいたとして国外追放になり、自ら「音楽の戦士」と称していて、その素晴らしい演奏は世界を魅了しました。やがてロシアに帰った彼は「外国公演に行ったら何万ドルが待っている」と言い出し、各国の王室と親密になり、かつてトラックで田舎をめぐって演奏した「野武士」は今何処、でした。そして音楽も琴線に触れることはすでに・・・。

「臥薪嘗胆」で敵を打ち破った春秋戦国の王も絶世の美女「西施」に溺れ、亡国への道となった、といわれます。

諸行無常の鐘の音、ですね。
「古典」の持つ真実に感動です。

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