メディア映像によるストレス体験

実際に体験していなくても報道の映像を見ることでPTSDを引き起こしたという報告が2001年、アメリカで起きた同時多発テロの際になされています。自爆テロの映像を見た人に対しての調査では、メディアによる間接的な体験でもPTSDやストレス症状の発症につながる可能性が示唆されています。映像による間接体験とストレスについての調査論文は少ないのですが、2011年の東日本大震災の津波の映像を毎日視聴していた人や視聴頻度が高い人は精神的健康度が低下し、積極的に情報収集をしていた人は震災を自分の体験としてとらえる傾向がある、という報告が行われています。

今回のウクライナ侵攻は、インターネットやSNSが活発に機能するようになって初めての戦争ということで、生々しい映像や画像がリアルタイムで送られてきます。報道機関だけでなく個人のツイッターなどからも流れ、衝撃的な情報に対する制限がない状態です。こうした情報にさらされることが間接的な戦争体験となり、人によってはストレス症状を起こす可能性が否定できません。過去に虐待や暴力などを体験した人にとってはフラッシュバックなどが起きることも懸念されます。たとえばロシア兵によるレイプなどの報道が、かつて性暴力を受けた人にとっては暴力の再体験となる可能性があります。

どのようにウクライナ報道と関わるか

今起きている事実を知ることが大切なことは言うまでもありません。事実を知り自分ができる行動や支援については考える必要があるでしょう。ただ見るのがつらいのを我慢してまで情報を得ようとはしないようにしてください。また眠れなくなった、食欲がない、気持ちがぼんやりして集中できない、などの症状がある方は報道を見るのをやめて医師に相談してください。

気持ちが落ち込むのを防ぎながら事実を知るために、次のような方法を考えました。

 

1.報道を見る番組を決めておく。信頼できると決めた番組から情報を得るようにし、何となくテレビをつけるのはやめる

2.SNSは見る時間を決めておく。目的を持って見るようにし、際限なく見続けることは避ける

3.何度も繰り返し同じ内容の映像を見ない。高頻度に衝撃的な内容を見ることで精神的健康度が低下するリスクが高まるため

4.夜寝る前には映像を見ない

5.夜寝る前に深呼吸やストレッチなどのボディーワークをして体と心の緊張を緩める時間を作る

以上のように情報に触れる時間を決めておくことと緊張を緩める時間を作ることが大事だと思います。

 

私もウクライナの報道を見ると吐き気がしてきます。でも事実としては知る必要があるので時間を決めて見るようにしています。情報に触れて起きるさまざまな感情の中で怒りや混乱、不安などは心の活気を低下させます。ですからこうした感情が起きたら、その都度、呼吸を整えたり身体を伸ばすストレッチをしたりして、ため込まないよう心掛けています。こうした心のケアをこまめにしておくことが必要だと思います。

全文は 凄惨なウクライナ情報とどう向き合うか 心のケアを考える(海原純子) - 個人 - Yahoo!ニュース