井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

ジャングル大帝

2019-09-28 15:18:09 | 音楽
山本直純の名曲を演奏したのが好評だったので、次は冨田勲だ、と張り切って準備をしたのは良いが、冨田勲作品の和声は複雑である。

あちらこちら、よくわからないところがあり、ようつべで確認する。

新日本紀行に続いて《ジャングル大帝》。

こういう確認がすぐできるのはありがたい世の中である。

しかし、オープニングのアニメを数十年ぶりに見ると、そのスケールの大きさに圧倒される。
私達は、こんなにも素晴らしいものを見て育ったのか……。

大学の同級生の声がよみがえる。
「長9度の音程をとる時は、この曲を思い浮かべるんだ」
彼は、この曲を平野忠彦先生が学生時代に変名で歌ったこととか、歌詞のあるなしのバージョンとか、まあ私より数倍詳しいので、私はただお説拝聴するのみ。

しかし今回、見ていたオープニングアニメの途中で、私は涙が止まらなくなってしまった。

絵とすれば、2枚の絵が交互に入れ替わることで、動物の行進を表現している。ただそれだけである。

しかし、そこからかつての私達は、子ども心にも「人類愛」を学んだのである。

この数秒間の絵で、私の涙腺は崩壊してしまい、その後は仕事にならなくなってしまった。

チョコミントアイスでも食べるか……。

《ウェストサイド物語》のプロローグ

2019-07-29 20:14:00 | 音楽
年に1コマのミュージカル講義で取りあげるのは、

《マイ・フェア・レディ》から〈スペインの雨〉~〈踊り明かそう〉

《サウンド・オブ・ミュージック》から〈ドレミの歌〉
誰でも知っている歌だが、正確に知っている人は少ない。日本の歌だと思っていた学生も結構いる。

そして《ウェストサイド物語》の〈プロローグ〉(序曲とも言う)

このプロローグには、音楽だけでも実に様々な要素が入っている。

全曲を支配する核音【G】【C】【Fis】の提示、20世紀和声とも言うべき「9の和音ninth chord」の多用、違う調の和音を同時に鳴らす「dur-mollの和音」、ポリコード、パート毎に拍子が違うポリリズム、これらをドラムセットやラテン打楽器を鳴らしながらやるのだから、【ザ・20世紀音楽】とでもいうような傑作なのである。

それをそれと気づかせずにやるところが素晴らしい。
その多様な要素に最初から気づく必要はなく、単に「すごい」と感じてもらえば良い。

と思いながら、学生さんに映画を見せる。「どうだ、すごいだろう」と思いながら……。

案の定、その通りの反応があって、私も大満足、だったのだが、ある感想で目が覚めた。

「ミュージカルなのに歌がないので驚きました」

あちゃー!

そうだ、冒頭しか見せないと「歌がない」というウタがいない事実を突きつけられてしまった。

次回からどうするか、また考えよう……。

私の好きなミュージカルは

2019-07-21 09:04:00 | 音楽
某大学で、年に1コマだけ「ミュージカル」の講義をしている。正直言って、ミュージカルの専門家ではないのだが、音楽面から見たミュージカルということで、レクチャーしている次第。

その視点で見てしまうからかもしれないが、私が音楽として絶賛できるミュージカルは3つしかない。

《マイ・フェア・レディ》
《サウンド・オブ・ミュージック》
《ウェストサイド物語》

これに、好きなミュージカルとして《屋根の上のバイオリン弾き》が加わる。
これらの作品は、私の価値観ではドニゼッティやベルリーニのオペラの遥か上をいく。

で、90分の講義では上記3作品のごく一部を紹介しかできないが、それでも《ライオンキング》や《レ・ミゼラブル》しか知らない若者に一矢報いる効果はあるだろう。

そして3作品とも映画化されているのがありがたい。

さらに、サウンド・オブ・ミュージックのジュリー・アンドリュース以外は吹き替え歌手が歌っている。
個人的にはアンドリュースのマイ・フェア・レディも観てみたい(オリジナルキャストはアンドリュースなので)が、映画ではよくぞヘップバーンを起用したと思う。

この映画を学生に見せると確実に何人かは「オードリー・ヘップバーンがかわいい」「きれい」と感想を寄せる。
これだけ繰り返し鑑賞するのだから、役者も最高であってほしいと思うけど、本当にオードリー・ヘップバーンは永遠のスターだと言わずにはいられない。時代を超えて魅了するとは、実に凄い。

グローバル・サウンドスケープス・フェスティバル

2019-06-13 18:02:43 | 音楽
カナダのバンクーバーで開催された音楽祭に、初めて参加した。九州・沖縄作曲家協会の会員と共に。

ホスト団体はバンクーバー・インターカルチュラル・オーケストラ(VICO)。主にアジアの民族楽器と西洋楽器の混成アンサンブルである。

このような団体に既成の曲はもちろん無い。VICOは作曲家が基盤にある演奏団体、という特徴を持っている訳だ。

そこと九州・沖縄作曲家協会が交流してみないか、という話があったのが2年前。

全てが手探りの中、交流が始まった。とりあえずバンクーバーに赴き、VICOの演奏を聴いた。次には一部メンバーが来福して福岡で25分くらいのオペラを上演した。

そしていよいよ、九州・沖縄作曲家協会のメンバー6名がバンクーバーで作品を発表したのである。

まあとにかくトラブルの連続で大変だった。
しかし、結果的に成功で終わったから、それも良い話のネタに変化する。
なかなか無い充実感にあふれ、メンバーは大いに満足して帰国したと思う。

私も自作を含め4曲を指揮し、カナダで指揮者デビューをはかったことにもなる。この写真はリハーサル風景。


ステージマネージャーは楽しい、かも

2019-05-31 20:39:39 | 音楽
東京芸術大学には同声会という同窓会組織があって、その福岡県支部が数年前から演奏会を始めた。

前回、私も出演させてもらったのだが、今回は「前回の出演者はお手伝いにまわるように」とのお達しがあった。

それならば、とステージマネージャーを志願して、やらせてもらった。

ステージマネージャーという仕事、誰でもはできない。しかし、大勢が関わる演奏会においては不可欠な存在なのだ。

なのだが、実際にはなかなか頼める人がいないのである。結構専門知識も必要だから。仕方ないから経験がないような人に頼むこともある。そういう時は事細かに打ち合わせておかないと、演奏会がぶち壊しにならないとも限らない。

さて、一体何が事細かなのか。

と考えて、実は私もわからなかったのである。
やはり、やったことがないことはわからない。
それならば、一度やってみるに限る。

ということで、頼み込んでやらせてもらった。

皆さん、私には何かと仕事をさせないようにする雰囲気はあった。確かに舞台袖で、私に見られているのは嫌な人も多いかもしれないが、そんなことは知ったことではない。

で、やってみて……、

案外楽しかったのである。

舞台袖でしか見ることのできない、さまざまな個性を見ながら、次々と演奏が進んでいく様子を見るのは快感だった。

袖には、あと2人いて、両人とも大学の先生。その人達と寸評がちょこっとあるのも面白かった。(嫌だよね、こんなこと言われているのがわかったら。)

ステージマネージャー、なかなか楽しいではないか、と思いかけて、ふと気づいた。

これはステージ上の質が、ある程度高いから楽しいなんて言っていられるのだ。下手くそだったら、どっと疲れるに決まっているだろう。楽しい気持ちにさせてくれた演奏者に感謝である。

それはともかく、やはり一回やってみると、ステマネの何たるかが、結構わかったと思う。次は、これをできる人材を育てることなのだが、これも難しそうだなぁ。