井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

バーンスタイン:シンフォニック・ダンス

2009-12-26 23:49:51 | オーケストラ
 今年のNHK音楽祭のテーマは「故郷」だそうで,それにちなんだプログラムが組まれ,賑々しく演奏されていた。だからと言って,シンシナティ交響楽団が「新世界」をやる,というのに興味はわかなかった。

 他のブログラムも含めて,それほどそそられなかったので,ほとんどの番組はスルーしていた。それで,たまたま今日,最後の総集編再放送を観たのであった。

 観てびっくり!観て,聴いて,とても良かった!

 プログラムはコープランドの「市民のためのファンファーレ」,バーバーの「アダージォ」,そしてこの曲。

 この曲を始め,バーンスタインの曲は(あるいはアメリカの曲は),どうしても「アメリカ的」でないと私は満足しない。ベルリン・フィルもウィーン・フィルも下手ではないけれど,サウンドが違い,私の好みではない。

 これがこのヤルヴィ指揮のシンシナティ響,最初のサウンドから違った。軽くてシャープ,これでなければならない。シンシナティ・ポップスの活動が並行してなされていることもプラスに働いているようにも思った。

 パーヴォ・ヤルヴィもヨーロッパ人なのに,無駄な力が全くはいらなくて,非常にセンスの良い指揮だった。バーンスタインの指導も受けていたというから,やはりバーンスタインを思い浮かべたら,あまり苦労なく表現できたのかもしれない。

 各演奏者もゴキゲンなプレイ。フィンガー・パンチに始まり,「マンボ!」のかけ声も元気一杯。特にトランペットは「マンボ」でスタンド・プレイだった。しかもその後の「フーガ」でもハイEフラット(通常最高音の3~4度上)を何回も出すアドリブまで入れてくれて。

 「最高!」と思ったら,その後の「ランブル(乱闘)」で文字通りトラブル。トロンボーンがソロを出損なったのだ。動揺がオーケストラを駆け巡り,ヤルヴィも「1,2」と数え始めちゃったりして・・・。トロンボーンの事故直後,巻き込まれたパートはなかったが,次にはトランペットがフライング。スーパー・プレイヤーでも他人が事故を起こすと結構危ない状態になっていた訳だ。それが如実に示された結果を観たことになる。

 なんてことも,私が暗譜するくらい曲を熟知していたから分かったことで,普通にはわからないで済んだと思う。同時に,わからないように何とかしてしまうプロの技を見せてくれたこと,見ることができたことも感動だった。

 こんな事故まで見せてくれて,私はシンシナティ響のことがいよいよ好きになってしまったのである。