井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

シェフチークの重音練習は1年以上かかる

2012-05-06 22:16:05 | ヴァイオリン

ヴァイオリンの重音に苦労している話をよく耳にする。

その度に「そんなに大変かなぁ」と思う。

筆者は重音で苦労した記憶がない、というのは嘘。

今日も「この重音がなかなかできない」と思ったばかりだ。

正確に表現すると「重音が難しいのは当たり前なので、それを苦労だとは思わない」ということになろう。もっと難しいことはたくさんある。「人の心をとろけさせるような魅力的な音色」などに比べると、重音は指を同時に数ヵ所押さえるに過ぎない。だから、そんなに大変ですか、と問いたくなってしまう訳だ。

筆者自身の経験で言うと、重音の音階は小学生の中頃からやったけれど、「小野アンナ」音階教本をよちよちやったに過ぎない。

高校の途中で、初めてシェフチークop.1-1のトレーニングをした。これは易しくはなかったけれど、やった後は指が動く実感があった。それがとても嬉しかったのだ。なので、重音の練習はあまり大変だと思ったことがない。

だが、重音の練習をさせるのは辛い。早く先のステップに行ってくれないかなぁ、と常に思う。

と考えると、重音が大変だと思っている人、少なからずいるのだろうなという想像はつく。

そこで考えた。

重音の練習には、どのくらいの期間が必要なのだろうか?

そういうことを知るためにデータを取ろうと思ってからまだ日が浅い。もともとあまり小中学生を教えた経験が少ないこともあって、やっと以下の状況が判明した。

重音の訓練は、重音の音階につなげていかなければならないが、その前段階として、筆者はシェフチーク作品1-1の17,23,24,25,26をさせることにしている。全て第1ポジションで弾け、シフトを含まない。

その中の17番、「三和音」の練習で、協和音程のみの重音の練習になる。これをどのくらいの期間でできるようになったか。

・A(小5) 3週間

・B(小5) 7週間

・C(小5-6) 2ヵ月

・D(中3) 3ヵ月

・E(高2) 4週間

・F(高2) 7ヵ月以上(進行形)

Dは部活動の関係で、ほとんど練習ができなかったケース。Fは、まだ楽譜そのものを読むのが不得手という段階 (このケースでは、一時18番<分散和音の練習で17番と類似する指を使う>を1ヵ月半練習させた)。それを除くと1~2ヵ月というのが標準のように思われる。

では続く23~26番であるが、AとEは現在進行中なので、やり遂げたのは3人である。

・B 8ヵ月

・C 1年

・D 1年

一番短いBで約10ヵ月、他は1年数か月というところだ。Bがやや熱心だったかもしれないが、3人ともそこそこ誠実で、標準的と言って良いと思う。

重音の音階は一生訓練する類のものなので、これの期間を云々するのはナンセンス。

その重音の音階練習の準備として、やはりこの1年数か月が必要、というのが、ここから得られる結論ということになる。

また、いきなり音階の練習に入るケースも目にするが、音階だとどうしてもシフトを含むため、効率が悪くはないだろうか。

さらに、曲に出てくる重音で練習すれば良いという考えも聞くが、筆者としてはシェフチークで別個に練習した方がトータルとしては早く弾けるようになるのではないか、と思う。

上記のFのように、どうやってもなかなかできない人もいる。それでも、とにかくあきらめないことだ。確実に左手は発達するのだから。