Ferdinand David、フェルディナンド・ダヴィッドとも言う。本ブログでも一回書いた覚えがあるのだが、この名前を覚えていた人は「通」と言って良いだろう。
井財野が最も興味を示すのはヴァイオリニスト作曲家達、その中の一人である。
最大の業績はメンデルスゾーンにアドバイスしてくれたお陰で、かのメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲が小学生でも弾けるくらい弾きやすくなったこと。もう一つ、「ヴィターリのシャコンヌ」として有名になった曲を世の中に知らしめたこと。(これについてはその昔書いた。2010年9.29)
この二つの業績は、ヴァイオリンを弾く人ほとんどが恩恵を受けているはずだ。その意味で、ヴィエニアフスキやヴュータンよりもずっと重要な人物と言える。
一方、トロンボーン界にもダヴィッドという人がいて、この人のトロンボーン小協奏曲はトロンボーンを吹く人は必ず吹く曲だ。私には高校時代、トロンボーンを吹く友人がいて、そのお陰でこの曲はその頃から知っていた。そして、何と陳腐な曲、これをありがたく吹かなければならないなんて、かわいそうなトロンボーン、と思っていた。
ところが、そのダヴィッドとあのダヴィッドが同一人物だと最近知ることになる。しかも教えてくれたのは、うちの学生であった。
これにはびっくりだった。
ヴァイオリニスト作曲家がヴァイオリン曲を書くのは当たり前だが、管楽器の曲を書いて、しかもそれが重要なレパートリーにはいっている例、時々あるのだ。クラリネット曲のレイモン・ガロワ=モンブラン、トランペット曲のエネスコなどを想起するが、ダヴィッドのトロンボーン小協奏曲は、それらをはるかにしのぐ、トロンボーン界ではメジャーな曲だ。
ダヴィッドには当然ヴァイオリン曲もある。しかし、ヴィターリのシャコンヌ(ダヴィッドがかなり作っている)以外、演奏されたのを聞いたことがない。トロンボーン曲で有名なヴァイオリニストとは、全く類例をみない。
またダヴィッドはライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のコンサートマスターでもあった。コンマスのトロンボーン曲! こう考えても凄い。ここに井財野友人の祖型を見る思いがする。
いやはや、段々良い曲に聞こえてきた。ベートーヴェンの亜流がベートーヴェンへのオマージュに変化してくる。
という次第で、そのことを教えてくれた渡辺君をちょっとだけ紹介したい。宮崎県出身で、来年から宮崎で中学校の先生をしたいとのこと。緊張のため、あちこちでミスがあったけれど、本番は来年の2月頭だ、これからまだまだ完成度は上げられるだろう。