普通に考えたら、熊本県のセカンドシティは八代市だ。
い草は日本で一、二を争う生産量を誇り、日本製紙やメルシャンなどの工場を抱える工業都市でもあるのだが、筆者の考える「文化・芸術」の象徴である「オーケストラ」がない!
一方、県庁所在地の熊本市は、熊本交響楽団、熊本ユース・シンフォニー、熊本大学フィルハーモニー、熊本学園大学グリーンフィルハーモニック、ザ・シンフォニエッタ、熊本音楽院オーケストラ、そして筆者の関わるアンサンブル・ラボ・クマモト、計七つもある。
これが、ほぼ年代別に棲み分けられているのが興味深い。
注目すべきは大学のオーケストラが二つあること。国立大学にあるのは普通だが、私立大学で地方都市の大学は、なかなかオーケストラを持てないと聞いている。
この事実だけでも結構がんばっているのだが、他にもがんばっている様子はいろいろ聞く。
半世紀以上の歴史がある熊本交響楽団は、一時「団費」が徴収不要になったそうだ。メンバーに町の名士や医者が増えて総予算は一千万を超え、団費フリーになったのだが、そうなると誰がメンバーだかわからなくなり、本番前にしか来ない人も増え、再び団費は徴収されるようになったということだが、羨ましいを通り越して、非常に現実味のない話に聞こえる。
鹿児島とは別の意味でセカンドシティが無いように思えるが、よく考えてみたら、熊本市自体が九州全体のセカンドシティであろう、ありたいと躍起になっている様子が浮かび上がってきた。
熊本市民のメンタリティには、九州の中心を「福岡に持って行かれた」感が深く根を下ろしている。
九州新幹線が開通して、北九州、福岡、熊本の3都市がサミットのようなイベントを開き、これからは一緒に盛り上がろうみたいなことで気炎をはいていたらしいのだが、多分福岡市民はこのことを一人も知らないのではないか。大体、福岡市に何のメリットもないし。
こういうことを見聞する度に、心が痛い。
ようやく「くまモン」で落ち着きを見せている県民魂。(熊本県民は日本一がとにかく大好き。)
でもオーケストラで見る限り、福岡は敵ではない。いつもとはいかないが、平均すると、熊本のオーケストラのレベルは福岡より高い。
九州のファーストシティである福岡市、なまじプロがいるために、市民文化はなかなか育たない。それからするととても羨ましいポジションに熊本があること、熊本市民は知っておいて良いと思う。