井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

ピチカートの「まめ」

2019-09-08 21:53:00 | 日記・エッセイ・コラム
連続したピチカートを演奏すると、必ず「まめ」ができて、それからしばらくピチカートは演奏できなくなる。

何十年も、それを繰り返していたのだが、昨年「箏」の演奏家が「まめを作ってはつぶし、また作ってはつぶしを数回続けると、『たこ』になって、もうつぶれない。そこまでやるのが修業」みたいなことを話されていたのを聞いて、思いついたことがある。

「そうか、長い時間をかけて『たこ』を作れば良い訳だ。」

話が単純でないのは、通常は「柔らかい指」の方が美しい音が出る。硬い指になると音も硬くなるので、「たこ」を作るなど、とんでもない自滅行為になる。

なのだが、この9月に弾くことになっているラヴェルのソナタ、ここでつかうピチカートは硬質な音で良い。

ならば、ということで、それに向けて数ヵ月かけて、ゆっくり「たこを作る」作戦を考えた。
毎日、緩くピチカートを弾く練習をするのである。そうしたら、徐々に指先が硬くなり……を狙ってみた。

そして本番。

指は少ししか硬くなっていないけど、まあここまで練習はできた。

弾いている時、ふと視界に入ってきたオジサン、何と携帯電話をいじっている。

そうはさせないぞ!もうすぐピチカートだ。こっちを聴け、オジサン!

レラドラ、レドミレドミド……

どうだっ!と、オジサンをチラッと見ると、こちらを凝視していた。作戦奏功。

調子に乗ってジャカスカやり、本番が終わる。

ホールを出て気づく。右手人差し指が痛い。見たら「まめ」ができていた……。

これは「たこ作り作戦」とすれば失敗なのだろうか。
とにかく痛くて、普通の曲のピチカートが弾けない。
早く治っておくれ、私の人差し指。