映画「ウェスト・サイド・ストーリー」の感想動画がひっきりなしに上がっていたようだ。
1日一つくらいしか見ていられないけど、あまりにあるので、ついにもう一度見に行った。2970円するメイキングブックというのも買った。これはものすごい情報量の本であり、こちらも読むと感動してしまう、素晴らしいものである。
そこにバーンスタインやロビンスの考えも示されており、初めて知ることも少なくない。
あのジョン・ウィリアムスが61年映画の録音ではピアノを弾いていたなんて……。
その経験が、彼の映画音楽に直結しているかもしれない、などと想像してしまった。彼のオーケストラ曲にはほぼ全てピアノが入っているから。
何度観ても良い理由の一つに音楽の質の高さがある、と私は思うのだが、映画ファンはそれを誰も語っていない。
ここまで上質の映画音楽は何十年ぶりに聴いたか、思いだせないほど久しぶりだ。
バーンスタインの音楽は、オペラ歌手達で録音されて、まあ満足したのが30年前。でも、「マリアの歌がキリテカナワ」というのは好みに合わない、という不満が残っていた。
そのあたりが、きれいに理想型になっていて、私は感動で泣きっぱなしだったね。
この映画では、先にオーケストラが録音されたそうだ。
それを知ると、明確に指揮者ドゥダメルのサウンドが聞こえてくる。
《マンボ》《クール》《あんな男》の3曲は結構速いテンポになっている。
バーンスタインの《シンフォニック・ダンス》内のマンボはもっと速いが、これは「踊れないマンボ」として、つとに有名。踊りとしては61年版のテンポが適正だと思うが、今回はギリギリ踊れるか、というテンポまで迫ってきた。これを踊ってしまう出演者は、それだけでもすごい。
《クール》もまた然り。
楽譜をよく見たら、これはリフが歌うことになっていた。61年版はアイス中心、今回はトニーと、毎回条件、状況、解釈が異なる訳だ。
もともとトニーが踊る曲はあまり無いから、踊れる役者さんならこの方が良い。
しかし、穴ぼこだらけの板の上で、この速いテンポで歌って踊るのだから、それまたすごい役者さん達だ。
穴ぼこにはアクリル板が張ってあったそうだが、目を凝らして見ても、そうは見えなかった。
もう1つ《あんな男》
あまり注目されない歌だけど、怒りと混乱、狂気と愛情がそのまま音楽になっている。
変ロ短調の変拍子の二重唱、メイキングブックでは「もはやグランドオペラ」と評されている、演奏至難の曲だ。
61年版では、これがちょっと短くなっていたが、今回はオリジナルの長さに戻されていて満足、泣きながら聴いたよ。
演奏のニューヨークフィル、ロスフィルも素晴らしいサウンド。
《バレエシークエンス》が朝の情景に転用されていて、本当に爽やかだった。
ドゥダメルの音色でもあるのだろう。
と、音楽映画として最高のできを示していたことを、誰も騒がないので、大騒ぎしてみました。
もっとあるけど、キリが無いのでここまで。