下関を中心に活動している「アンサンブル・シュヴィュ」が、昨年に続き、1月17日には北九州市戸畑市民会館で、このドビュッシーのピアノ三重奏曲を演奏します。それに際して、筆者が解説を頼まれてしまいました。それで、本番に先立ち、ちょっとここでご紹介。お近くの方は、ぜひご来場を…。井財野友人の「トリプティーク・ナハ」も演奏します。
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ドビュッシー19才の時の作品が、百年以上たってドイツのヘンレ社から1986年に出版された。ヘンレ社と言えば非常にアカデミックな原典版で有名な出版社だ。なので、そこからドビュッシーの若書きの作品が出るということ自体、当時とても注目されたものだ。
しかし中身はというと、やはり19才なのである。楽譜の書き方の怪しげな部分、演奏不可能な音符、そして、弦楽器の扱いはまだまだと言わざるを得ない。
かと言って、音楽史の流れを変えた偉大な音楽家の一ドキュメントとだけみるには、あまりに甘美で切ない音楽が含まれているのも確かである。
だから、つまらないなあ、と思ったら、それはドビュッシーのせいにして、美しいところだけ楽しんでしまおう。
第1楽章
ソナタ形式のようだけれど、テーマがちょいと多めに聞こえる。このあたりは、最晩年のヴァイオリン・ソナタの形式の萌芽がみてとれる。このように次々と旋律が出てくるのが、結局好きだったんだよね、ドビュッシー。
ただ、細かく動き回る音型は実にピアノ的で、チェロ向きじゃないよ。そして、何回も四分休符でストップがかけられるのもいただけませんなあ。
それを除けば、はつらつさわやか、青春そのもの。
第2楽章
三部形式。自然短音階を基調に作られた主部は、同時期に作られた「ジプシー・ダンス(ボヘミア風舞曲)」と同工異曲だが、どちらもかわいらしい。
第3楽章
もう絶品!この楽章が発掘できただけで、この三重奏曲の出版は意味があると言ってよい。書法の問題もほとんどない。やっぱりドビュッシーって天才?
第4楽章
フランスにも演歌があったんだねー、と思わず言ってしまうような主題で始まる。中間部には、小組曲や「春」といったその後の作品を思わせる部分もあり、それはそれで楽しい。
しかし「このエンディングはないでしょう」というあっけない終わり方で曲は閉じられる。いやぁ、それからがんばったんだね、ドビュッシー。
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