今日のひとネタ

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黄金仮面(ネタばれあり)

2008年01月05日 | ブックレビュー
 「黄金仮面」とは江戸川乱歩先生の小説です。昭和5年発表ですからネタばれもくそもないかもしれませんが、一応探偵小説ですので今後読む予定があって仕掛けを知らずにいたい人は以下の記載は読まない方がよいです。

 今回読んだのは2003年刊行の光文社文庫「江戸川乱歩全集第7巻 黄金仮面」。この巻には表題作以外に「何者」「江川蘭子」「白髪鬼」の合計4作が収録されています。乱歩ファンを自称している私ですが、恥ずかしながらどれも初めて読みました。

 感想として「黄金仮面はヤリ過ぎ」というのが正直なところ。明智小五郎というと「心理試験」とか「D坂の殺人事件」のイメージが強いのですが、この作品の中では変装したりピストル撃ったり飛行機に乗ったりと派手過ぎです。天知茂シリーズのファンにはちょうど良いかも知れませんが。

 このあたりは自作解説でも述べられており、当時百万部を超していた人気雑誌「キング」での連載ということで「老若男女誰にも向くように」という講談社的条件があったのだとか。なのでご本人も変態心理を持ち出さなかったそうです。

 そう考えれば納得もできるところですが「それでもやっぱり…」という気持ちは強いです。「こうなればこの先は面白いかも」という方向に進んでいく展開はさすがなのですが。なお黄金仮面の正体は「アルセーヌ・ルパン」なのですが、彼に心を奪われるナイスバディーな日本人美女の名前が「不二子」でした。乱歩先生がルパン三世をパクったんですね、きっと。…って違うでしょ!

 一方他の三作は素晴らしいです。特に「白髪鬼」は「これぞ乱歩!」というものですね。一応海外作品を基にしたということになるのですが、先に黒岩涙香先生の翻訳ものがあったので敢えて独自のものにしたとか。それも黒岩涙香作品にリスペクト溢れる思いをこめて。

 こうやって全集で読んでみると、解説が充実してるので助かりますね。市内の図書館ではこの全集が揃ってるので今年から乱歩先生の作品を制覇していこうと思います。ただし文体が文体なので現代の作品を読むよりは時間がかかりますが。

 ちなみに全集の目次の中で私が読んだことのある作品は、二銭銅貨、恐ろしき錯誤、D坂の殺人事件、心理試験、黒手組、赤い部屋、算盤が恋を語る話、屋根裏の散歩者、人間椅子、闇に蠢く、黒蜥蜴、十字路、堀越捜査一課長殿、妻に失恋した男、ぺてん師と空気男、鏡地獄、陰獣、押絵と旅する男、目羅博士の不思議な犯罪、暗黒星、化人幻戯、影男、など。

 ほとんどが中学生の頃に読んだのですが内容を忘れてるものも多いです。確実に覚えてるのは、心理試験、黒手組、赤い部屋、黒蜥蜴、人間椅子、鏡地獄、ぺてん師と空気男、くらい。「黒蜥蜴」とか「影男」は「おお、さすがに面白い!」と思った記憶があるのですが…。まぁいくらなんでも「鏡地獄」を忘れるほどボケてはおりません。

 ということで本年一発目のブックレビューはきらびやかに黄金の話でした。なお「黄金仮面」の解説によると「連載中の昭和6年5月、平凡社の『江戸川乱歩全集』がスタートした。その宣伝役に駆り出されたのが黄金仮面である。黄金仮面に扮したチンドン屋行列が町を練り歩き、セルロイドの黄金仮面がビルの屋上から舞った。黄金仮面のポスターが書店の店頭を賑わせた。」のだそうです。なんか楽しそうな時代ですね。戦前というのが嘘みたいです。むぅ。