1990年のNHK大河ドラマ「翔ぶが如く」をNHKオンデマンドで約2ヶ月かけて全話視聴しました。一応ドラマの概要について解説すると、もちろん原作は司馬遼太郎の同名小説ですがドラマは二部構成になっており、第二部のみが原作のドラマ化です。もともと原作は幕末ものではなく、維新後の征韓論~台湾出兵~士族反乱~西南戦争までを描いたものですが、ドラマは若き日の西郷、大久保も取り上げて構成としては第一部が29回、第二部が19回でした。
で、早速ドラマレビューです。今回も登場人物が多いのですべて敬称略とさせていただきます。
これが面白いか面白くないかというと大変面白い。当時私は日曜8時というと「元気が出るテレビ」を毎週欠かさず見ていたと思われ、これはリアルタイムでは一話も見てません。さらに、恥ずかしながら当時は幕末や維新の歴史にまったく興味を持ってなかったので見てたとしても今ほど楽しめたかどうかは疑問。
この原作は昨年読んだばかりですのでまだ記憶は鮮明なのですが、映像と音声付きで見てみると当時の様子がよりわかるようになりました。特に官軍が進軍する際に「ピーヒャーラピッピッピッ!」という音楽が奏でられてるあたりで「ほぉ~こんな感じか」とか。あとは、前半の時代劇部分ではいかに当時の殿様が偉いかというのがわかりますね。家来のへりくだり方が尋常ではありません。
ただし面白いとはいえ、いろいろ不満に思うところはあります。まずは第二部が端折りすぎかなぁと。台湾出兵とか大久保が清と交渉するところとか神風連をはじめとする士族反乱とかその辺あっさりし過ぎ。(ちなみに、台湾出兵も清のあたりもオープニングナレーションで「…であった」と紹介しただけでかっ飛ばしてました。) 特に神風連の乱なんて今の役職でいう熊本県知事が殺害されてるわけで、そんな大事件があったことを知らなかった私は恥ずかしい思いをしたわけで、このドラマのみ見た人はその辺の詳しいことは知らないわけで、そういうのは非常にもったいないわけで。(と、変な日本語)
また堤真一と有森也実のロマンスなんて意味があんのかなぁとか。たしかに原作に忠実に行くと色気がなさ過ぎなのはわかりますが。あとは維新後の大久保をいい人に描きすぎのような気が。別に悪い人ではないですが、もっと何を考えてるかわからない冷徹な感じなんじゃないかなぁとか思いました。(まぁこの辺は私が原作に影響されてますが) それと、桐野や篠原あたりが策がなさ過ぎて西南戦争が惨憺たる結果になったあたりも、もっとわかりやすくした方がよかったかも。
ドラマでは全般的に女性の登場割合がやたらと多いのが原作との一番の違いかもしれません。あと西郷どんの最後は原作とは結構違うけど、ドラマにするならあんな感じで仕方ないかなぁとか思ったり。
と、なんだかんだ言ってますが面白いのは確か。主演のお二人は熱演ですし、それ以外では田中裕子が素晴らしいです。彼女に最優秀助演女優賞をあげましょう。あとは次点で草笛光子とスーちゃんに銀メダルと。男優で素晴らしかったのはなんといっても大山綱良役の蟹江敬三ですね。処刑される前に「男として面白か人生じゃった」というのは原作にあったかどうか忘れましたが、見ていてほろっと来ました。他には若大将加山雄三と桃太郎侍高橋英樹もさすが。また江藤新平の隆大介もはまり役。これは素晴らしかったです。(そういえば佐賀の乱の描き方もちょっと物足らなかったです)
逆に役のイメージに合わなかったのは伊藤博文の小倉久寛と岩倉具視の小林稔侍。 岩倉具視なんて誰がやっても難しいのでしょうが小林稔侍じゃちょっと…。三条実美の角野卓造が案外バッチリだっただけに。
ということで、見てみると面白かもんじゃというのがわかりもした。NHKオンデマンドの回し者ではありませんが、ツタヤでDVD全部借りてみるより安上がりで手間もかからないので、興味のある方は是非見てたもはんか。(と、インチキ薩摩弁)