シンセサイザーが単音しか出なかった時代には妙なキーボードがありました。私がシンセサイザーというものを意識したのは昭和50年か51年頃ではなかったかと思うのですが、その時代の妙なキーボードで代表的なのがソリーナ。正式にはソリーナ・ストリングスアンサンブルとかいうのでしょうか。当時のレコードの使用楽器にクレジットとして見かけたりしたのですが、なにぶんにも現物を見る機会はなくさっぱりわかりませんでした。
当時見てた雑誌にヤングセンスというのがあって、あるとき小林克己氏のバンド講座がありました。本当に単純な記事で、ベースはこんなのでギターはこんなのでキーボードはこんなのって感じだったのですが、その中で「シンセサイザーは単音しか出せないので、バンドのキーボードをシンセサイザーだけでやるのは危険だ」というような話もあって「へぇ~」と思った記憶があります。その時にキーボードの例でソリーナが出てて「あ、これが」と思ったのが最初の遭遇。それ以降結局実物には遭遇する機会がなく(笑)、今になってネットで調べてみるとあれはストリングスシンセではなくエレクトーンに近いようなものだそうですね。それが優秀なコーラスシステムを搭載しているのでそれっぽく聞こえたと。ということで、「シンセが単音しか出せない時代だったのにあれはなんだったのだ?」という30年来の疑問が解けました。私の聞いてた曲でこれを使用した代表は甲斐バンドの「氷のくちびる」です。あれの間奏がまさにこれだと思うのですが。
もう一つ妙なのがクラビネット。なんかのレコードのクレジットで「クラビネット」とあるのを見たときは、てっきりクラリネットの誤植だと思ったものです。これについては上記のヤングセンスの記事で「エレクトリック・チェンバロという感じ」と書いてあったのであっさり解決。なにしろガキョンガキョンと特徴的な音なので、キャンディーズの「春一番」をはじめ、岡本正さんの「北鎌倉」のイントロとか新必殺仕置人のテーマ曲だった川田とも子さんの「あかね雲」のイントロ、アニメ版野球狂の詩のテーマ曲(堀江美都子さんのスキャットの)、などあげればキリがないくらい思い浮かびます。もしかすると、スペクトラムの奥慶一さんもライブの「アクトショー」で使ってるでしょうか。あとは、原田真二さんがテレビで「キャンディ」を歌うときにもクラビネットの弾き語りということがありました。当然尾崎亜美師匠もレコードで使ってますし。
そのヤングセンスでは毎年冬の号で楽器フェアの記事がちょこっとあって、昭和52年だと思いますがオーバーハイムの4ボイスだか8ボイスだかが出てました。それを見て「へぇ~」と思ったものですが、その隣にはローランドのMC-8の写真があって「なんじゃこりゃ?」と。写真の解説でも「中央の電卓のようなものがそれ?」なんて話があったくらいで、さすがにシーケンサーはまだまだという時代でした。
当時KORGが出してた「サウンドシンセサイズ入門」という冊子があったのですが、それによると「ハモンドオルガンもシンセサイザーも元はというとパイプオルガンの音を再現しようとした」とありました。シンセサイザーなんて、出たころは「どんな音でも出せる」なんて言われてましたけど、始まりはそういうものだったんですね。それが発達してピッチベンドとかいろいろ出来るようにもなったわけで、なんかえなりかずきの声色で「先にシャワー浴びてきなよ~」とかいう物真似のネタをやるようなものだと感じてしまいます。(なのか?)
実際に当時のそういう楽器の音をいろいろ聞こうと思うと、今はYou Tubeでデモ演奏を公開してる映像が多いですからその辺便利ですね。尾崎亜美さんの「あなたはショッキングシャイン」の間奏のシンセの音はオーバーハイムだと思うのですが、それを検証するためにちょっと調べてみようかと。ということで、明日はオーバーハイムの記事を…ってことまではやりませんけど。