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「高田みづえの相撲部屋おかみさん」読みました

2021年03月13日 | ブックレビュー

 高田みづえさんは元歌手で、大関若島津と結婚して引退し相撲部屋のおかみさんになったのはご存じの通り。これは毎日新聞日曜くらぶ連載の、「高田みづえのおかみさん日記」を改題して出版したもの。連載は1991年9月~93年3月までで、本としてはその年の5月に出版されました。

 アイドル歌手が本を出すというと、大体ゴーストライターが適当にまとめるイメージですが、これは歌手を引退して5年以上経ってから出版されたものであり、新聞連載の記事でもありますので本当にご本人が書いたようですね。色々なエピソードを見てもそう感じますし、上手すぎない文章からもその辺ひしひしと感じます。

 実は図書館で見かけて珍しさだけで借りてきたのですが、読んだところ凄く面白かったです。高田みづえさんと結婚した若島津関は、引退後松ヶ根を襲名し二子山部屋の部屋付きの親方となったのち、松ヶ根部屋として独立。この本は独立した翌年からの連載によるものです。

 私は相撲の世界は知らないことが多いのですが、高田みづえさん自体も当初は二子山部屋で色々お手伝いを経験したのちに独立しておかみさんとなったので、その初々しさというか周りから助けられながら一歩一歩努力していった様子がよくわかります。

 入門してくる力士は大体親方が各地の有望な若者を口説いて連れてくるわけですが、大半は中学を卒業したばかりの少年。そして高田みづえさんも、高校を卒業した直後の5月に歌手を目指して鹿児島から上京したわけで、15歳にして親元を離れて厳しい勝負の世界に入る気持ちはある程度理解できたのでしょうね。

 松ヶ根部屋は両国ではなく千葉の船橋に設立されたのですが、部屋での稽古の様子から、地元の人たちとの触れ合い、新入門の若手の苦悩、力士の日常生活、地方巡業の話など、高田みづえさんが見たことや感じたことを率直にあれこれ書いてるので、写真は無く挿絵だけの本ですがかなり想像力を働かせることができ、相撲の世界もほんのちょっとだけわかった気になりました。

 相撲界はこの後一旦若貴ブームで大いに盛り上がり、その後外国人力士全盛の時代が来たり不祥事を含めいろいろなことがあって、さらにこの親方自体も大変なことになりました。これはまだ良き時代の良き話ということになりましょうか。

 当時その連載やこの本がどの程度話題になったのかはわかりませんが、私としては面白かったです。今も入手は可能なようですので、興味のある方は是非どうぞ。割と爽やかな気分になれます。