
『大江健三郎全小説2』
2018年11月9日 第一刷発行
株式会社講談社
--------抜粋
「リアリスチクに現代日本の青年をえがきだすこと、それを、現実から疎外された青年をえがくべく試みるということとして、この作品のテーマの位置においたことを、私は決してまちがっていたとは思いません。しかし、達成された作品がはたして日本の現代の青年をリアリスチクにえがきだしているかの批判は、それも否定的な批判は、この作品の上梓にあたって再び激しくおこなわれるだろうと思います」(著者・『孤独な青年の休暇』)
【収録作品】
ここより他の場所/共同生活/上機嫌/勇敢な兵士の弟/報復する青年/後退青年研究所/孤独な青年の休暇/遅れてきた青年/下降生活者
──初期作品群その2
著者について
大江健三郎
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞、94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。
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・ここより他の場所
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暑い夏の真昼だ、汗みずくの老人がホテルの前の陽にてらされた舗道を行ったりきたりして待伏せしている。
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冒頭の一文
何やら怪しい雰囲気
しかし単純に結婚から逃れたい男性の心情物語
誰にでもある逃避願望
・共同生活
猿との生活
主人公の青年の狂気と妄想
四匹の猿の上手い具合に死角がないその目線を辿ってみたり・・
こちらも結婚を迫られてる恋人からの逃避願望
(・ここより他の場所同様)
ただ妄想からだと、少し前に読んだ引きこもりの少年の話に似ている(・鳥)
・上機嫌
ある夏の日にオートバイ事故を目撃したことから始まる。
作家のわたしと映画女優K、そしてその事故をきっかけに出逢った青年
ラストの心中が意外だった。
救いのない物語
自由 嫉妬 憤怒
そして 心中
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こうしてわたしはこの現実世界にひとりぼっちでのこされた。
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・報復する青年
超短編
自室から見える女の部屋を覗き見する青年
・勇敢な兵士の弟
こちらも超短編
勇敢な兵士→特攻隊だった兄
その弟→憂鬱な青年
母が無念でその兄の霊を呼び出すのに、霊媒師の元へ。
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―—兄さんは水泳がうまかったし好きだったけど、と戻って来た憂鬱な青年に母親はいった。死んでもやはり毎日、海を泳いでいるんだねえ。
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ラストのおかしみがよき。
・後退青年研究所
題名からして時代を感じる。
GIO(ゴルソン・インタビュー・オフィス)
ミスター・ゴルソンという社会心理学者が登場
怪しさ満点
・孤独な青年の休暇
Ⅰ 浮浪者
Ⅱ 解放
Ⅲ 地方都市
Ⅳ 性関係
Ⅴ 陥穽
Ⅵ 自由が!
「リアリスチクに現代日本の青年をえがきだすこと、それを、現実から疎外された青年をえがくべく試みるということとして、この作品のテーマの位置においたことを、私は決してまちがっていたとは思いません。しかし、達成された作品がはたして日本の現代の青年をリアリスチクにえがきだしているかの批判は、それも否定的な批判は、この作品の上梓にあたって再び激しくおこなわれるだろうと思います」
(著者・『孤独な青年の休暇』)
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・下降生活者
偽りの自分 本当の自分とは?
「下降の主人公まとも?」
「なんか、踏み外すっしょ 助教を」
「あぁやっぱりそういう展開!?」
期待を裏切らない大江さんです。。
今回はここまで///
「何だか『大江健三郎全小説2』暗黒時代ですね」