★★たそがれジョージの些事彩彩★★

時の過ぎゆくままに忘れ去られていく日々の些事を、気の向くままに記しています。

ヘッドハンティング 9

2012年04月01日 18時19分33秒 | 小説「ヘッドハンティング」
 谷岡の説明は、具体的な条件面から、現在のシーシェルの業績内容、シーシェルにおける五人の配属部署、業務内容へと進行していった。
「われわれがやるべき業務内容が、もうすでに決められているんですか?」
 上島が疑義を挟んだ。
「これは、いわばアウトラインみたいなものです。皆さんの培ってこられたノウハウで、どんどん改良していただいて結構です」
 谷岡がそつなく答える。
「そのアウトラインからはみ出したり、アウトラインそのものを書き替えることは可能なんでしょうか?」
 梶尾が突っ込んだ。
「それは…」
 谷岡は言いよどんだ。

「合理的理由があれば可能です。当然、皆さんのほうにも長年の経験に裏付けられた、カタログビジネスに関する青写真がお有りだと思います。わたくしどもが求めているのは、まさに、そこなんです。今後はわたくしどもの設計図と、皆さんの青写真を照合して、より理想に近いカタログビジネスの企業作りを目指していきましょう」
 柳瀬がすかさずフォローした。
「下衆の勘繰りかもしれませんが、業績が芳しくならなかったら、我々は二、三年で契約切れでお払い箱、ということはないんでしょうかね?」
 大原が歯に衣着せぬ口調で尋ねた。
「みなさんの身分は出向といえども正社員です。当社の都合でやめさせるということは、法律上不可能です。ただし、年俸は三年間は据え置き、業績のアップ率により特別報奨を用意しますが、それ以降は業績や貢献度によって査定されます」
 谷岡が言った。

「まるで、野球選手並みだ」
 真田は言った。
「体力勝負の野球選手だったら、俺たちの歳ではお払い箱さ」
 大原が笑いながら言った。
「そう、みなさんには、体力ではなくて知力で勝負していただきたいですね」
 柳瀬が笑いを返した。
コメント
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