コロナが流行る直前の2年前の同じ日に飲んで以来だ。
彼との仲は、18歳の時、大学のフォークソング同好会で知り合って以来、半世紀の付き合いだ。
同じように旅館の泊まり込みのアルバイトに精を出し、お互いの下宿を行き来し、徹マンを共にした間柄だ。
就職してからも、付かず離れず、他の気の置けないメンバーも交えて、交流は続いている。
飲めば、同好会のメンバーたちの思い出話に花が咲き、抜け落ちていた記憶がジグソーパズルのように埋まっていく。
圧巻は、デビューしたてのキャロルの、円山音楽堂でのコンサートの会場整理のアルバイトだ。
詰めかけた暴走族やヤンキー連中の前に並び、ロープを肩に、最前列で必死に彼らが舞台に上がるのを制止していた。
振り向けば1mほどの距離のところで、矢沢永吉がベースギターをかき鳴らし熱唱していた。
コンサートが終わり、観客が帰った後、楽屋から出てきたキャロルのメンバーは、リーゼントをほぐし、ダサいシャツとジーパン姿で、まるで青年団の兄ちゃんのようだった。
短い活動期間を経てキャロルは解散し、今は矢沢だけが生ける伝説のロックンローラーとして君臨している。
半世紀近くの時の流れを実感したひと時だった。
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