邦楽シーンでは歌謡曲と、拓郎や陽水、かぐや姫などのフォークソングが混在していた頃だ。
フォークもアコギだけの編成から、エレキのバックバンドやオーケストラを従えて、四畳半フォークから豪邸フォークへと変遷していた時期だ。
そんな時期に、歌謡曲にもフォークにもジャンル分けできない、のちにニュー・ミュージックとして確固たるジャンルを築く、オールディーズ・テイストの曲が忽然と現れたのだ。
新しさの中にも、懐かしさが同居するシンプルなメロディライン、ドゥワップのリズム、あっけらかんとした能天気な歌詞。
歌っているのが、歌謡曲のアイドル性やフォークの泥臭さもない、いかにも都会の金持ちのお嬢。
それまでに何曲かシングル盤をリリースしていたはずだが、「ルージュの伝言」、および収録アルバムの「コバルトアワー」は、その後のユーミンの方向性を決定した名曲、名アルバムだ。
私が唯一買ったユーミンのアルバムだ。
このアルバムこそ、日本のニュー・ミュージックの原点だと言われる。
といっても、私は別にニュー・ミュージックのファンでも、ユーミンのファンでもない。
その当時の私の心象風景にぴったりシンクロしたアルバムだったのだ。