折からの台風の影響で、11時間遅れの、6月29日午前3時過ぎ、揃いの法被をまとった4人の若者が羽田空港に降り立った。
もちろん、今年ではない。
56年前、1966年の6月29日だ。
ザ・ビートルズの4人は、その疲れも見せず、6月30日から3日間の武道館コンサートを敢行した。
それは日本のロック史上記念すべき日々となった。
4人揃っての来日コンサートはそれが最初で最後だった。
九州の辺境の村で、当時小学6年生だった私は、まだビートルズを知らなかったし、その来日騒動も記憶にない。
かろうじてベンチャーズは、近所の兄ちゃんたちがエレキで弾いていたので知っていた。
ビートルズを知ったのは、後年流行るグループサウンズの談話によく出てきてからだ。
レコードを買ったのは中学3年の時だ。
シングル盤の「ゲット・バック」で、B面は「ドント・レット・ミー・ダウン」だった。
初期のビートルズファンが、「ラブ・ミー・ドゥ」や「抱きしめたい」にシビれたのと同じように、私は「ゲット・バック」に訳の分からない衝撃を受けた。
その影響が冷めやらぬうちに、アルバム「アビイ・ロード」を発売と同時に買った。
「ゲット・バック」をはるかに上回る衝撃がそこにあった。
そこからタイムトラベルよろしく、ビートルズの歴史を遡っていった。
高校1年になる前の春休みに、ポールの脱退宣言のニュースが全世界を駆け巡った。
その後は4人が元の鞘に収まることはなく、ビートルズは伝説となった。
そんなわけで。私はビートルズ最終世代を自認している。
後年、ジョージやポールの来日コンサートには行ったが、そこにビートルズを見出すことはできなかった。
今は、当時観られなかった、世界各地でのコンサート風景をYouTubeで観て、ちっぽけな感慨に耽るしかない。
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