★★たそがれジョージの些事彩彩★★

時の過ぎゆくままに忘れ去られていく日々の些事を、気の向くままに記しています。

ある夏の思い出 (拙著「あの頃の海」から抜粋)

2021年08月18日 17時17分13秒 | 徒然(つれづれ)
 僕が小学一年生の夏休みのある日。
 僕は母親とふたりで、素麺を食べながら、テレビで『ロッテ歌のアルバム』を観ていた。

 そこへ近所の電話のある家の人が、血相を変えて、母親に何事かを伝言しに駆けつけてきた。漏れ聞くところによると、どうも母親のクラスの生徒が、隣村の海で遊泳中に行方不明になったらしい。
 当時、母親は、僕と同じ小学校で四年生の担任をしていた。
 
 母親は取るものも取りあえず、ついて行くと駄々をこねる僕を連れて、路線バスで現場の海へ急行した。バスの座席に座る母親の顔が、いつになく蒼ざめていて、僕は子供心にも、何かただ事ではない感じがした。
 
 隣村の海岸に着くと、人だかりがしていて、漁師や消防団員と思しき男たちが、海の中を捜索している最中らしかった。
 昼下がりの太陽が照りつける海は、真っ青な空と白い入道雲の下、眩いばかりにキラキラと輝いていた。
 母親はまわりの人たちから状況を聞いて回っていた。
 僕はあまりの暑さに、アイスキャンデーを食べたかったが、それを言い出せる雰囲気ではないことが、何となく感じられて、退屈を噛み殺しながら海を見ていた。
 
 海中から上がってきたひとりの男が、大声で何か叫んだ。まわりの男たちが一斉にそこへ集まって行った。
 数分後、男に抱きかかえられた男の子が、砂浜へと運ばれてきた。
 子供は首や手足がダラリと垂れ下がり、まるで壊れた人形のようだった。

 男の子の母親らしき女の人が半狂乱で名前を呼んでいた。
 砂浜に仰向けに寝かされた男の子の胸を、待機していたらしい、白衣の医者が懸命に押し続けていた。
 僕はそこへ残る母親と別れて、近所のおばさんに連れられて家に戻った。
 
 その男の子が亡くなったということを知ったのは、翌々日の全校登校日の朝礼でのことだ。僕には何の感慨も動揺もなかった。
 その子は海から生まれて、海に帰って行ったのだ、と思うことにした。

 隣村の海は遊泳禁止になった。
 僕は明日からも海で泳げるかどうかが心配だった。幸い、僕たちの村の海岸での遊泳は禁止されなかった。
 僕は何事もなかったかのように、夏休みが終わるまで毎日泳ぎ続けた。


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重荷はないほうがいい

2021年08月18日 15時37分07秒 | 徒然(つれづれ)
 人の一生は重荷を負うて遠き道を行くが如し、とは徳川家康の遺訓だ。
 まさにその通り、と共感する人間もいるだろうし、果たしてそうか、と疑問を抱く人間もいるだろう。

 二択なら私は後者のほうだ。
 遠き道を行く、という部分はそうかもしれないと思うが、重荷を負うて、の部分は受け入れがたい。
 ぶっちゃけた話、重荷など負わないほうがいいに決まっている。

 そんなことを言うと、重荷を負うのが美徳の日本古来の考え方の人間には、顰蹙ものかもしれない。
 自分の思いとは関係なく、人生いろんな重荷を負うこともあるだろう。
 具体的には、自身の病気であったり、家族の介護であったり、経済的な困窮などだ。
 そんな人間は山ほどいるだろう。

 もし重荷を負うたら、軽くするために筋力をつけたり、機械を開発したりするのが人間だ。
 しかしそんな効果的なことにも、楽をしたいからだ、などと穿った見方をする人間もいる。

 反対に、重荷を負うて苦労する人間を、努力が足りないからだ、と見下す人間もいる。
 件のメンタリストがそうだ。

 聖人でもない限り、人間、誰しも心の中にダークサイドを持っている。
 それを表に出さないのが理性であり良識だろう。

 しかしそれにしても、労苦を抱えた人間に同情はできても、それを共有することはなかなかできないものだ。
 昔からそうだが、私は幸いにもこれといった重荷を負うたことがない。
 それは運がよかっただけかもしれないが、人生は運によって左右されるということも、またあることだ。
 

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習慣化した隠れビール

2021年08月18日 15時03分54秒 | 徒然(つれづれ)
 今朝も小雨模様の天気でウォーキングは断念。

 10時過ぎに雨の小休止を見計らって、ブランチのために駅前のケンタに向かう。
 駅の喫煙所で一服してから、近くのコンビニで缶ビールを買い、開店3分前にケンタに到着。

 ドアの前で待っていると、開店2分前に店を開けてくれた。
 いつものランチSとコールスロー、クーポン利用でクリスピーを求め、監視カメラの死角の指定席に陣取る。

 先客のいない店内は、空調がほどよく効いて、心地よいBGMが流れている。
 カウンターとセパレートタイプになっている客席は、店員から見えないので、監視カメラの死角だと安心してビールが飲める。

 チキンやポテトをツマミに、缶ビールをゴクゴクと飲む。
 ク~っと満足のため息が漏れる。

 至福のひと時だ。
 窓の外は束の間の晴れ間が覗き、見慣れたビルや看板が見える。

 幸いなことに私が滞在している間に客はひとりも来なかった。
 遅い朝のケンタの隠れビール、やめられまへんなぁ。
 

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雨の日と月曜日

2021年08月18日 00時28分28秒 | 徒然(つれづれ)
 季節外れの長雨が続くと、当然ながら朝の日課のウォーキングができない。
 1日、2日だとそれほど問題はないが、3日以上、ルーチンをサボると、思考や体調に少なからず影響が出る。
 歳をとるとなおさらだ。

 今日は月曜日と勘違いして、阪神vsDeNAのナイターをまるまる見逃してしまった。
 夜のニュースのスポーツコーナーまで気がつかなかった。

 そんな時に限って、しばらくホームランから遠ざかっていた佐藤輝が、久々の2打席連続ホームランを打っているではないか。
 まあ、阪神が勝って巨人が負けたのでよかったものの、逆だったら、首位陥落だったところだ。

 体調面でも、ウォーキングとの関係は定かではないが、右下の奥歯の入れ歯が浮いて、歯茎が腫れあがり、その痛みで食べ物が噛めない状態だ。

 窓を閉め切った書斎にこもっているので、部屋に湿気や加齢臭が充満して、自分でも居心地が悪い。
 今度晴れの日に、布団を干して、部屋に掃除機をかけて、窓を全開にして風を通そう。
 

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