The Rest Room of ISO Management
ISO休戦
鎌田 浩毅・著“知っておきたい地球科学―ビッグバンから大地変動まで”を読んで
政府は13日午前7時55分、北朝鮮から発射されたミサイルが落下の可能性があるとして、北海道を対象に全国瞬時警報システム=Jアラートを発出したが、その約40分後にようやく落下の可能性はなくなったと発表した。その40分間は、北海道在住の人は一体どうすれば良いのか、逐次情報がある訳ではなく、空白の時間が30分程度もあり混乱するばかりであった。
よく調べるとJアラートの発出も実際にミサイル発射から30分近く経っていた。それで警報の意味があるのだろうか。一体、何やってんだ。正確な軌道計算すらおぼつかないのか。発射の事前探知すらできずに、敵基地攻撃能力を確保したところで、その有効性は確保できるのか。アホアホでは国土防衛は不可能!
結局のところ、13日当日には正確にどのあたりの上空で消失したのかさえ、明らかにされなかった。北海道を飛び越えたのか、越えなかったのかすら明確に示されてはいない。
自衛隊は北のミサイル軌道を追跡・観測しているだけの団体なのか。北海道に落下しそうだったのなら、どうして迎撃しないのか。北海道を守る意志はないのか。日本の迎撃態勢はこういったミサイルに対して明らかに有効ではないからなのか。米国から高価な機材を購入してもガセを掴まされているだけなのだろうか。
というように当日は憤慨していたものだったが、続報も見られたが、翌日にはTV解説報道で次のような説明があった。
ミサイル発射直後の当初はどうやら高高度のロフテッド軌道の発射であり、日本国土に落下しても大半は大気との摩擦で焼失してしまうため、せいぜいで建物の中に避難していれば問題ないと、自衛隊は判断した。その後、高高度射出のため自衛隊のレーダーからは機影は消失した。ミサイル防衛のための感知レーダーは比較的低い高度に備えたものであり、消失するような高高度のものは対象外として防衛上問題は少ないのだ、という。
しかしながら、軽度の被害とは言え当初の軌道想定では北海道に落下する可能性があったので、内閣官房はJアラート発出が適当と判断した。後は、手順通り消防庁管轄のJアラート発出となった、というものであった。
問題は、情報の丁寧な後続がなかったことだ。一般国民は期初だけの情報に振り回されているにもかかわらず、1時間も放置されたことだ。内閣官房は刻々と変化する事象に応じた情報の提供をするべきだったのだ。Jアラート発出のあり方が問われる。
黄砂の影響があった。私も目がかゆくて、外出するのを控えた。中国の公害対策や砂漠化対策がいい加減の被害を受けている。エエ迷惑な話だ。
我等がアホアホ御大臣様のトンデモ発言でビックリシタナァ!モウ~!
それやったら、AIで質問してAIで回答して・・・・それやったら国会イランやんかぁ~AIでシミュレーションして国会経費浮くデェ~!日本の先進的、世界に冠たるアホアホのAI統治!!!
米国機密文書漏洩問題。スノーデン事件で機密情報の取扱は十分に改善していたのではなかったのか。たかが3年ほどの勤務の連邦軍ではなく州兵が高度機密情報にアクセスできる仕組みになっていたとは、大変な驚きである。確か、スノーデンはCIAに十数年勤務していたのではなかったか。どういうことなのか。
さて、今回紹介するのは前回に引き続き鎌田浩毅教授の“知っておきたい地球科学―ビッグバンから大地変動まで”としたい。本来は、地球科学入門的な本から入るべきだったかも知れないが、京大名物教授の最終講義の方が魅力的な感じがあったので、順序を入れ替えての紹介である。そうだ、もっと他にも順序入替の理由があった。それは前の本には“地球温暖化は自明でない”が入っていたからだった。それを私の中では前回のタイミングで是非とも紹介したかったからだった。今回は、そういう思惑に惑わされずに紹介したい。
いつものように、以下に同書の概要を記す。
[出版社内容情報]
宇宙や生命はどうやって生まれたのか。地球のエネルギー資源はどう作られているのか。気候変動や災害の原因は何か。ミクロからマクロまで、地球に関わるあらゆる事象を丸ごと科学する学問=地球科学は、未来を生きるための大切な知恵を教えてくれる。大人の学び直しにも最適な知的刺激に満ちた一冊。
[内容説明]
宇宙や生命はどうやって生まれたのか。地球のエネルギー資源はどう作られているのか。気候変動や災害の原因は何か。ミクロからマクロまで、地球に関わるあらゆる事象を丸ごと科学する学問=地球科学は、未来を生きるための大切な知恵を教えてくれる。大人の学び直しにも最適な、知的刺激に満ちた一冊。
[目次]
第1章 地球・生命(「大ボラふき」で始まった宇宙;ブラックホール研究にノーベル物理学賞 ほか)
第2章 環境・気象(熱輸送を支配する表層海流と偏西・貿易風;気候の安定に寄与する深層海流 ほか)
第3章 資源・エネルギー(海の原始生物が作った鉄鉱石;火山国・日本に埋もれる金鉱脈 ほか)
第4章 地震・津波・噴火(「大地変動」の時代に入った日本;首都直下地震のリスク ほか)
[著者等紹介]鎌田浩毅[カマタヒロキ]
1955年東京都生まれ。東京大学理学部卒業。通産省地質調査所主任研究官、京都大学大学院人間・環境学研究科教授を経て、京都大学名誉教授、京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授、理学博士。
専門―火山学・地球科学・科学コミュニケーション。
著書 ― 『火山噴火』(岩波新書),『地球は火山がつくった』(岩波ジュニア新書),『地震はなぜ起きる?』(岩波ジュニアスタートブックス),『日本の地下で何が起きているのか』(岩波科学ライブラリー),『地球の歴史』(中公新書,全3冊),『富士山噴火と南海トラフ』(講談社ブルーバックス),『生き抜くための地震学』(ちくま新書),『首都直下地震と南海トラフ』(MdN新書),『揺れる大地を賢く生きる 京大地球科学教授の最終講義』(角川新書) ほか
HP ― http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/resilience/~kamata/
こうやって本を紹介すると言いながらも、実は紹介の順序を入れ替えたために、この本を読み終わって相当日数が経っている(読み終えたのは2月半ば)ので、細かい部分は忘れているところも多々あるように、手に取って改めて見直すと思われる。したがって、客観的にみて当然紹介するべき点が抜け落ちている可能性も大いに考えられるが、あくまで“私の感想”なので容赦願いたい。
この本の“はじめに”に次の一文がある。
“あえて地球科学の目標を一言で表すと、「我々はどこから来て、我々は何者で、我々はどこへ行くのか」という問いに回答を与えることとなる。これはフランス印象派の画家ポール・ゴーギャンが1897~98年に描いた大作絵画のタイトルで、地球科学者のお気に入りの名文句でもある。”
へぇーそうなんだ。知らなかった、あのタヒチ大好き画家がそんなことを宣っていたんだ。Wikipediaによると正しくその“タヒチで描かれた作品で、2020年6月現在は米国マサチューセッツ州ボストンにあるボストン美術館に所蔵されている”とある。さらに解説には“この作品は、ゴーギャンのポスト印象派の先駆けとも言える。自身の感情、印象派的な技法を強く追求するあまり、鮮やかな色彩、明確な筆使いといった印象派の手法を否定する結果となり、20世紀のキュビズム、フォービズムなどといったアヴァンギャルドの前兆となった。”
へぇーそうなんだ。知らなかった、これが画期的作品だったのだ。この年齢になっても知らないことが多過ぎる。これぞ読書感想文を書く醍醐味か。そして、それが“地球科学者のお気に入りの名文句”なのか・・・!
科学は分析から始まる。分けて分けて、分子に至り、分子から原子に至り、量子に至って量子力学の世界になる。だが地球科学は、“物理学で言う「複雑系」”であり分けて行って分析的態度のみでは返って分からなくなる。例えば地球温暖化問題の難しさはそこにあると著者は指摘する。“地球をまるごと捉え、個別ではなく全体を一つの「システム」*1として理解する”ことが大切となっている。“地球にまつわる諸現象は、それぞれの構成要素を単純に足し合わせれば理解できるものではない。マクロにシステムとして見る視座、すなわち「科学的ホーリズム(holism)」が重要なのである。”と言っている。
CO2温暖化起因説はやはり、より広い視座からの解釈が不十分な“科学的知見”なのだろう。だからこそこのブログでも昔に紹介した“丸山茂徳・著『科学者の9割は「地球温暖化」CO2犯人説はウソだと知っている』”という本が書かれたのだろう。“科学はウソをつかないが、科学者はウソをつく”のであるから、確認しようがないことを断言する言説には十分に警戒を要する。挙証してくる“証拠”も部分的であり網羅的でないことが多い。中には簡単に否定できる“証拠”も含まれていることがある。たかが数世紀のデータでもって“温暖化している”というのは、笑止なのだ。又その言説を政治的に利用する輩も登場するものなのだ。ましてや、“「予防原則」を地球温暖化に適用する”などというのはファッショ的発想なのではないのか。
*1:複数の構成要素からなり、それぞれが相互作用する系のこと
それから、“「大地変動の時代の日本列島」”には地球科学が必要であること、地球科学は“「現場主義」の科学”であり、著者はその「現場主義」で生きてきたこと、“日本人が学んでいない高校地学”が大切なこと、等を訴えている。
“地学では21世紀の最先端が学べる”のであり、他の理系学科では数学は17世紀までの微積分、化学は19世紀までの知見、物理では20世紀初頭の原子核物理、生物学では20世紀後半の免疫や遺伝子操作までであることに注目するべきであると指摘している。ちなみに地学では今世紀で展開中のプルーム・テクトニクスや地球温暖化問題がテーマになっているというのだ。
ところが、“高校で地学を学習する生徒が少ない”との指摘である。これは“防災”でもしばしば話題になることである。御多分に漏れず、私も高校では地学は1年生の時に“太陽時”等部分的に習った程度で記憶が薄く、2年以降物理と化学を選択して受験した。だからこの本をこの年齢になって取り上げた次第である。
“はじめに”の紹介で相当長くなってしまった。これ以降、本来ならば逐次章立て毎に紹介説明するものであろうが、先にも言ったように読み終えて約2カ月経っていて、記憶が定かではない部分が多数であり、本の雰囲気さえ薄れているような状態だが、前回紹介した本とかぶる部分もあるので、印象の強いところを紹介したい。
とは言え、最初の第1章 地球・生命で、“「大ボラふき」で始まった宇宙”は気になるところだろう。これだけは簡単に説明しておく。要は“ビッグバン”のこと。
米・物理学者ジョージ・ガモフが“宇宙は超高温・超高密度のエネルギーのかたまりが急激に膨張し、火の玉が「弾け飛ぶ」ように宇宙が始まったとする説”を出したところ、ライバルの天文学者フレッド・ホイルが「ビッグバン」(でたらめの大ぼらふき)と揶揄したのだが、当のガモフはそれを気に入ってそう名乗った。それを後に“宇宙が大爆発した際に発せられた電磁波”が観測されて、科学的事実となったというエピソードのことである。
第2章 環境・気象は、“最終講義”の本での異常気象の説明とかぶっている部分がある。偏西風、貿易風のラニーニャ、エルニーニョ現象の部分だ。第4章 地震・津波・噴火はそのままかぶっている。
第3章 資源・エネルギーは地球の育てた貴重な資源を現代人は一気に費消しようとしているという指摘でかぶっている。
当然のことながら、まぁ気にせず読みこなして欲しい。
私がこの本で注目したのは、月に関する説明の部分だ。それは第1章“7 月は地球の1億年後輩”の月の形成に関わる箇所にある。ここに生命誕生と人類への進化への大きな影響を見るというのだ。
“月は今から45億年前に地球から飛び出して誕生した”のであり、それは“月から持ち帰られたもっとも古い岩石は、約45億年前のもの”で確認されているとある。“地球は太陽系初期の46億年前に誕生した”ので、1億年後輩だという。
太陽系形成初期に“現在の火星ほどの巨大な天体が地球に衝突し、そのエネルギーによって地球の表面は非常に高温となり、破片が四方八方に飛び散った。宇宙に飛び出した最大の破片が、地球の引力によって周囲を回り始める。これらの破片が集まってできた最大の物質が月なのである。”これはシミュレーションによっても1年から1カ月ほどの期間で起きたと確認されているという。だから、月は同じ面だけを地球に向けてシンクロ周回しており、月が自転する周期と月が地球の周りを一周する周期が同じなのだ。
“月が誕生した当時の地球は、現在よりも速く自転しており、一日は4~6時間ほどだった。”地球と月の間に働く引力によって「潮汐」が起きたが、それによって海水の移動が起きるが“海底との間で摩擦を起こし、地球の自転にブレーキをかける。その結果、地球の一日は(40億年以上もかかって)次第に長くなり、現在の24時間となった。”もし、自転が早く8時間程度ならば、“地表では東西方向に絶えず強風が吹き荒れる。同じ状況は木星や土星の大気にも見られる。”
“こうした強風は生物の生存を大きく変える。植物は風から身を守るために地中深く根を張り、太陽エネルギーを効率的に受け取る葉が進化するだろう。また、動物は強風でも呼吸を維持し乾燥から身を守るため、特別な器官を発達させる。人類も現在とは全く異なる進化を遂げていたに違いない。”
月形成に巨大な天体が衝突した影響はもう一つあり、地球の公転面に対し地軸に23.4度の傾きが生じた。“この結果地球に四季の変化が訪れた。・・・もし地軸が公転面に垂直(0度の傾き)であれば、赤道上はいつも灼熱の夏で極地はつねに氷に閉ざされた厳冬”となる。もし地軸が公転面に90度の傾きであれば、“極地地域では6カ月の夏と6カ月の冬が交代し、他の地域でも灼熱の夏と極寒の冬がめまぐるしく変わるきわめて不安定な気候となる。”
“こうして45億年前の月の誕生は、地球上で生命が進化するための貴重な条件を整えてくれた”のであり、それを考えると、生命誕生には9つの条件*2が揃わなければならないとされるが、人類のような高等生命の誕生には温和な気候条件も必要であり、そのような天体が他にあり得るかどうか、かなり厳しい条件ではないかと想像されることである。
*2:(1)エネルギー源(電離放射線と熱エネルギー)、(2)栄養塩の供給(リン、カリウム、レアアース元素など)、(3)生命構成主要元素の供給、(4)CH4,HCN,NH3などの還元ガスの濃集、(5)膜やRNAを合成するための乾湿サイクル、(6)非毒性の湖水環境、(7)Naの少ない水、(8)非常に多様な環境、(9)周期的環境
よく調べるとJアラートの発出も実際にミサイル発射から30分近く経っていた。それで警報の意味があるのだろうか。一体、何やってんだ。正確な軌道計算すらおぼつかないのか。発射の事前探知すらできずに、敵基地攻撃能力を確保したところで、その有効性は確保できるのか。アホアホでは国土防衛は不可能!
結局のところ、13日当日には正確にどのあたりの上空で消失したのかさえ、明らかにされなかった。北海道を飛び越えたのか、越えなかったのかすら明確に示されてはいない。
自衛隊は北のミサイル軌道を追跡・観測しているだけの団体なのか。北海道に落下しそうだったのなら、どうして迎撃しないのか。北海道を守る意志はないのか。日本の迎撃態勢はこういったミサイルに対して明らかに有効ではないからなのか。米国から高価な機材を購入してもガセを掴まされているだけなのだろうか。
というように当日は憤慨していたものだったが、続報も見られたが、翌日にはTV解説報道で次のような説明があった。
ミサイル発射直後の当初はどうやら高高度のロフテッド軌道の発射であり、日本国土に落下しても大半は大気との摩擦で焼失してしまうため、せいぜいで建物の中に避難していれば問題ないと、自衛隊は判断した。その後、高高度射出のため自衛隊のレーダーからは機影は消失した。ミサイル防衛のための感知レーダーは比較的低い高度に備えたものであり、消失するような高高度のものは対象外として防衛上問題は少ないのだ、という。
しかしながら、軽度の被害とは言え当初の軌道想定では北海道に落下する可能性があったので、内閣官房はJアラート発出が適当と判断した。後は、手順通り消防庁管轄のJアラート発出となった、というものであった。
問題は、情報の丁寧な後続がなかったことだ。一般国民は期初だけの情報に振り回されているにもかかわらず、1時間も放置されたことだ。内閣官房は刻々と変化する事象に応じた情報の提供をするべきだったのだ。Jアラート発出のあり方が問われる。
黄砂の影響があった。私も目がかゆくて、外出するのを控えた。中国の公害対策や砂漠化対策がいい加減の被害を受けている。エエ迷惑な話だ。
我等がアホアホ御大臣様のトンデモ発言でビックリシタナァ!モウ~!
それやったら、AIで質問してAIで回答して・・・・それやったら国会イランやんかぁ~AIでシミュレーションして国会経費浮くデェ~!日本の先進的、世界に冠たるアホアホのAI統治!!!
米国機密文書漏洩問題。スノーデン事件で機密情報の取扱は十分に改善していたのではなかったのか。たかが3年ほどの勤務の連邦軍ではなく州兵が高度機密情報にアクセスできる仕組みになっていたとは、大変な驚きである。確か、スノーデンはCIAに十数年勤務していたのではなかったか。どういうことなのか。
さて、今回紹介するのは前回に引き続き鎌田浩毅教授の“知っておきたい地球科学―ビッグバンから大地変動まで”としたい。本来は、地球科学入門的な本から入るべきだったかも知れないが、京大名物教授の最終講義の方が魅力的な感じがあったので、順序を入れ替えての紹介である。そうだ、もっと他にも順序入替の理由があった。それは前の本には“地球温暖化は自明でない”が入っていたからだった。それを私の中では前回のタイミングで是非とも紹介したかったからだった。今回は、そういう思惑に惑わされずに紹介したい。
いつものように、以下に同書の概要を記す。
[出版社内容情報]
宇宙や生命はどうやって生まれたのか。地球のエネルギー資源はどう作られているのか。気候変動や災害の原因は何か。ミクロからマクロまで、地球に関わるあらゆる事象を丸ごと科学する学問=地球科学は、未来を生きるための大切な知恵を教えてくれる。大人の学び直しにも最適な知的刺激に満ちた一冊。
[内容説明]
宇宙や生命はどうやって生まれたのか。地球のエネルギー資源はどう作られているのか。気候変動や災害の原因は何か。ミクロからマクロまで、地球に関わるあらゆる事象を丸ごと科学する学問=地球科学は、未来を生きるための大切な知恵を教えてくれる。大人の学び直しにも最適な、知的刺激に満ちた一冊。
[目次]
第1章 地球・生命(「大ボラふき」で始まった宇宙;ブラックホール研究にノーベル物理学賞 ほか)
第2章 環境・気象(熱輸送を支配する表層海流と偏西・貿易風;気候の安定に寄与する深層海流 ほか)
第3章 資源・エネルギー(海の原始生物が作った鉄鉱石;火山国・日本に埋もれる金鉱脈 ほか)
第4章 地震・津波・噴火(「大地変動」の時代に入った日本;首都直下地震のリスク ほか)
[著者等紹介]鎌田浩毅[カマタヒロキ]
1955年東京都生まれ。東京大学理学部卒業。通産省地質調査所主任研究官、京都大学大学院人間・環境学研究科教授を経て、京都大学名誉教授、京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授、理学博士。
専門―火山学・地球科学・科学コミュニケーション。
著書 ― 『火山噴火』(岩波新書),『地球は火山がつくった』(岩波ジュニア新書),『地震はなぜ起きる?』(岩波ジュニアスタートブックス),『日本の地下で何が起きているのか』(岩波科学ライブラリー),『地球の歴史』(中公新書,全3冊),『富士山噴火と南海トラフ』(講談社ブルーバックス),『生き抜くための地震学』(ちくま新書),『首都直下地震と南海トラフ』(MdN新書),『揺れる大地を賢く生きる 京大地球科学教授の最終講義』(角川新書) ほか
HP ― http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/resilience/~kamata/
こうやって本を紹介すると言いながらも、実は紹介の順序を入れ替えたために、この本を読み終わって相当日数が経っている(読み終えたのは2月半ば)ので、細かい部分は忘れているところも多々あるように、手に取って改めて見直すと思われる。したがって、客観的にみて当然紹介するべき点が抜け落ちている可能性も大いに考えられるが、あくまで“私の感想”なので容赦願いたい。
この本の“はじめに”に次の一文がある。
“あえて地球科学の目標を一言で表すと、「我々はどこから来て、我々は何者で、我々はどこへ行くのか」という問いに回答を与えることとなる。これはフランス印象派の画家ポール・ゴーギャンが1897~98年に描いた大作絵画のタイトルで、地球科学者のお気に入りの名文句でもある。”
へぇーそうなんだ。知らなかった、あのタヒチ大好き画家がそんなことを宣っていたんだ。Wikipediaによると正しくその“タヒチで描かれた作品で、2020年6月現在は米国マサチューセッツ州ボストンにあるボストン美術館に所蔵されている”とある。さらに解説には“この作品は、ゴーギャンのポスト印象派の先駆けとも言える。自身の感情、印象派的な技法を強く追求するあまり、鮮やかな色彩、明確な筆使いといった印象派の手法を否定する結果となり、20世紀のキュビズム、フォービズムなどといったアヴァンギャルドの前兆となった。”
へぇーそうなんだ。知らなかった、これが画期的作品だったのだ。この年齢になっても知らないことが多過ぎる。これぞ読書感想文を書く醍醐味か。そして、それが“地球科学者のお気に入りの名文句”なのか・・・!
科学は分析から始まる。分けて分けて、分子に至り、分子から原子に至り、量子に至って量子力学の世界になる。だが地球科学は、“物理学で言う「複雑系」”であり分けて行って分析的態度のみでは返って分からなくなる。例えば地球温暖化問題の難しさはそこにあると著者は指摘する。“地球をまるごと捉え、個別ではなく全体を一つの「システム」*1として理解する”ことが大切となっている。“地球にまつわる諸現象は、それぞれの構成要素を単純に足し合わせれば理解できるものではない。マクロにシステムとして見る視座、すなわち「科学的ホーリズム(holism)」が重要なのである。”と言っている。
CO2温暖化起因説はやはり、より広い視座からの解釈が不十分な“科学的知見”なのだろう。だからこそこのブログでも昔に紹介した“丸山茂徳・著『科学者の9割は「地球温暖化」CO2犯人説はウソだと知っている』”という本が書かれたのだろう。“科学はウソをつかないが、科学者はウソをつく”のであるから、確認しようがないことを断言する言説には十分に警戒を要する。挙証してくる“証拠”も部分的であり網羅的でないことが多い。中には簡単に否定できる“証拠”も含まれていることがある。たかが数世紀のデータでもって“温暖化している”というのは、笑止なのだ。又その言説を政治的に利用する輩も登場するものなのだ。ましてや、“「予防原則」を地球温暖化に適用する”などというのはファッショ的発想なのではないのか。
*1:複数の構成要素からなり、それぞれが相互作用する系のこと
それから、“「大地変動の時代の日本列島」”には地球科学が必要であること、地球科学は“「現場主義」の科学”であり、著者はその「現場主義」で生きてきたこと、“日本人が学んでいない高校地学”が大切なこと、等を訴えている。
“地学では21世紀の最先端が学べる”のであり、他の理系学科では数学は17世紀までの微積分、化学は19世紀までの知見、物理では20世紀初頭の原子核物理、生物学では20世紀後半の免疫や遺伝子操作までであることに注目するべきであると指摘している。ちなみに地学では今世紀で展開中のプルーム・テクトニクスや地球温暖化問題がテーマになっているというのだ。
ところが、“高校で地学を学習する生徒が少ない”との指摘である。これは“防災”でもしばしば話題になることである。御多分に漏れず、私も高校では地学は1年生の時に“太陽時”等部分的に習った程度で記憶が薄く、2年以降物理と化学を選択して受験した。だからこの本をこの年齢になって取り上げた次第である。
“はじめに”の紹介で相当長くなってしまった。これ以降、本来ならば逐次章立て毎に紹介説明するものであろうが、先にも言ったように読み終えて約2カ月経っていて、記憶が定かではない部分が多数であり、本の雰囲気さえ薄れているような状態だが、前回紹介した本とかぶる部分もあるので、印象の強いところを紹介したい。
とは言え、最初の第1章 地球・生命で、“「大ボラふき」で始まった宇宙”は気になるところだろう。これだけは簡単に説明しておく。要は“ビッグバン”のこと。
米・物理学者ジョージ・ガモフが“宇宙は超高温・超高密度のエネルギーのかたまりが急激に膨張し、火の玉が「弾け飛ぶ」ように宇宙が始まったとする説”を出したところ、ライバルの天文学者フレッド・ホイルが「ビッグバン」(でたらめの大ぼらふき)と揶揄したのだが、当のガモフはそれを気に入ってそう名乗った。それを後に“宇宙が大爆発した際に発せられた電磁波”が観測されて、科学的事実となったというエピソードのことである。
第2章 環境・気象は、“最終講義”の本での異常気象の説明とかぶっている部分がある。偏西風、貿易風のラニーニャ、エルニーニョ現象の部分だ。第4章 地震・津波・噴火はそのままかぶっている。
第3章 資源・エネルギーは地球の育てた貴重な資源を現代人は一気に費消しようとしているという指摘でかぶっている。
当然のことながら、まぁ気にせず読みこなして欲しい。
私がこの本で注目したのは、月に関する説明の部分だ。それは第1章“7 月は地球の1億年後輩”の月の形成に関わる箇所にある。ここに生命誕生と人類への進化への大きな影響を見るというのだ。
“月は今から45億年前に地球から飛び出して誕生した”のであり、それは“月から持ち帰られたもっとも古い岩石は、約45億年前のもの”で確認されているとある。“地球は太陽系初期の46億年前に誕生した”ので、1億年後輩だという。
太陽系形成初期に“現在の火星ほどの巨大な天体が地球に衝突し、そのエネルギーによって地球の表面は非常に高温となり、破片が四方八方に飛び散った。宇宙に飛び出した最大の破片が、地球の引力によって周囲を回り始める。これらの破片が集まってできた最大の物質が月なのである。”これはシミュレーションによっても1年から1カ月ほどの期間で起きたと確認されているという。だから、月は同じ面だけを地球に向けてシンクロ周回しており、月が自転する周期と月が地球の周りを一周する周期が同じなのだ。
“月が誕生した当時の地球は、現在よりも速く自転しており、一日は4~6時間ほどだった。”地球と月の間に働く引力によって「潮汐」が起きたが、それによって海水の移動が起きるが“海底との間で摩擦を起こし、地球の自転にブレーキをかける。その結果、地球の一日は(40億年以上もかかって)次第に長くなり、現在の24時間となった。”もし、自転が早く8時間程度ならば、“地表では東西方向に絶えず強風が吹き荒れる。同じ状況は木星や土星の大気にも見られる。”
“こうした強風は生物の生存を大きく変える。植物は風から身を守るために地中深く根を張り、太陽エネルギーを効率的に受け取る葉が進化するだろう。また、動物は強風でも呼吸を維持し乾燥から身を守るため、特別な器官を発達させる。人類も現在とは全く異なる進化を遂げていたに違いない。”
月形成に巨大な天体が衝突した影響はもう一つあり、地球の公転面に対し地軸に23.4度の傾きが生じた。“この結果地球に四季の変化が訪れた。・・・もし地軸が公転面に垂直(0度の傾き)であれば、赤道上はいつも灼熱の夏で極地はつねに氷に閉ざされた厳冬”となる。もし地軸が公転面に90度の傾きであれば、“極地地域では6カ月の夏と6カ月の冬が交代し、他の地域でも灼熱の夏と極寒の冬がめまぐるしく変わるきわめて不安定な気候となる。”
“こうして45億年前の月の誕生は、地球上で生命が進化するための貴重な条件を整えてくれた”のであり、それを考えると、生命誕生には9つの条件*2が揃わなければならないとされるが、人類のような高等生命の誕生には温和な気候条件も必要であり、そのような天体が他にあり得るかどうか、かなり厳しい条件ではないかと想像されることである。
*2:(1)エネルギー源(電離放射線と熱エネルギー)、(2)栄養塩の供給(リン、カリウム、レアアース元素など)、(3)生命構成主要元素の供給、(4)CH4,HCN,NH3などの還元ガスの濃集、(5)膜やRNAを合成するための乾湿サイクル、(6)非毒性の湖水環境、(7)Naの少ない水、(8)非常に多様な環境、(9)周期的環境
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