The Rest Room of ISO Management
ISO休戦
米朝首脳会談決裂に思う
先週の話題は何と言っても、ハノイの米朝首脳会談決裂だろう。トランプ氏は私益に眩むことなく国益を優先させた、という点で評価されるべきだろう。
というのは会談中にトランプ大統領の元個人弁護士であるマイケル・コーエン氏が米下院監視委員会に召喚されて宣誓証言して、次のようなことが明らかになったからだ。
①この証言で“大統領は人種差別主義者であり詐欺師であり不正の人だ”と断言し“自分は大統領の言うままに違法行為に手を染めたことを深く後悔”していると言ったのは、以下の客観的と思われる証言と併せて大統領への信頼感の毀損。
②トランプ選挙陣営が、ウィキリークスに“ヒラリーのE-mail暴露”を依頼したという疑惑は“事前にトランプの指示を仰いで行なった”という明確な証言。
③大統領のポルノ女優との不倫の“口止め料”は、大統領がコーエンに対して“自腹で立て替える”よう強制し、その後選挙法に違法して返金し、大統領夫人には口止めするよう言われたという証言。
④共和党議員がコーエンを非難して何度も議事進行を妨害した状況から、トランプ氏と“一蓮托生”の強固な共和党下院議員が結構いることの明確化。
これは不利な国内状況を覆そうと目論んで開催した米朝首脳会談であり、これを成功させるのが、現状でのトランプ氏の最大の私益と思われたからだ。さらに、そうした私益の中で経費請求は日本につけ回す懸念が大きかっただけに、私には大いに驚きだった。つまりトランプ氏の決断は米国のみの国益というよりは、アジアにおける自由陣営の国々の国益に配慮したものと言え、常々の“アメリカ・ファースト”とは色合いが大きく異なる行為だった。特に、日本には若干有利に作用するのではないか。
会談が決裂したこと自体に、当初の評価はいずれも独裁的首脳の会談だったからではないか、という憶測だった。つまり両国政府の役人が先ずアジェンダ設定し、各アジェンダの結論を十分に詰め切れずに首脳会談に突入したためではないか、との推測によっている。それは恐らく正しい見方だろう。
しかし、こうした一見私益のぶつかり合いの失敗のように見える会談決裂だが、今後のアジア情勢の大きな転換点になるものと思われる。そこで、各国の今後の内部事情の変化を推測整理してみたい。
会談決裂で大きなダメージを負ったのは、当事者の北朝鮮そのもの、というよりは金正恩その人ではあるまいか。北ウォッチャー専門家の言によれば正恩自身が会談に成果があるとかなり期待していたフシがあるとのこと。トランプの人物そのものをかなり信頼して、ある種頼り切った側面もあったのではないか。会談途中での記者団とのやり取りの映像があったが、その中で“(会談時間の)1分でも大事だ”との自身の一言は、彼の大きな期待と弱みを見せつけたことになった。北は苦境にあることを如実に示している一言ではなかったか。
しかし結果からは確かに“寧辺核施設の廃棄”というワン・イシューで全て解決と言うのは余りにも虫が良すぎるし、トランプをはじめとする米政権を舐めてかかっていたことになる。その後の米側の説明によれば、“追加で発見された施設はウラン濃縮施設のようなものが存在し、それを米側が知っていたということに北朝鮮は驚いていた”ということだ。これと同じような光景は、約30年前の米ソ首脳会談にもあった、と聞いている。当時保有する核関連装備の正確な数字を米側が提示して、ソ連側が驚愕し、交渉に臨む強硬姿勢が折れ、それが冷戦終了・デタントのきっかけになった、という。
しかし、北にとって核放棄は、その見返りはオール・オア・ナッシング“生か死か”の非常に重要な課題であると改めて分かったと解説する向きもある。まぁ当然の見方ではある。
“大山鳴動ネズミ一匹も出ず”は結局のところ、北朝鮮国内での勢力関係に微妙な変化をもたらすのではないか、つまり正恩の指導力に陰りが見え始めるのではないか、との専門家の推測が出ている。
その上、米側に秘密施設の情報を流したのは誰かの疑心暗鬼もあるはずだ。それに伴う粛清による引き締めも考えられる。それが逆に正恩政権の不安定化につながるかも知れない。
そうなれば、正恩は国外に誰を頼るのか。恐らくは、差し詰め習近平の中国。或いは、ロシアのプ-チン。その延長線上に韓国の文在寅との板門店での会談となるか。差当り帰国途中の動揺の中で、習近平に泣きつくか。
中国にとって北朝鮮は地政学的な安定性を確保するための要衝地域である。東北地域には朝鮮族が多く分布しているとも言うので、半島北部の平穏は、中国国内政治の安定性にも欠かせない。
しかし、前回報告したように中国経済はトランプ大統領によって締め上げられ始めている。既にマイナス成長ではないかとの憶測も広がっている程だ。そこで中国首脳は、どの程度の支援策を打ち出せるのだろうか。それが北にとって満足できるものになるかどうか。それは一にかかって北の経済の現状に依ることでもある。つまり全面的に中国のみに頼る訳にはいかなくなるのが現状だろう。
こう見てくると、トランプ大統領の世界戦略政策は中々のものに見えてくるではないか。
或いは、それがロシアのプーチンの介入を許すことに繋がるのかもしれない。そうなれば、ここにも米露の確執の種が発芽するのかもしれない。しかし、ロシアの経済力はその軍事力から想像するよりはるかに小さいことに留意するべきだ。特に欧州からの経済制裁や原油価格の下落が続く昨今、苦しい経済状況にあるのは事実のようだ。だから日本の北方領土問題も一時の強気虚勢と見るべきなのだろう。
また金正恩にとって、対米交渉の橋渡し役として頼りになった文在寅はどう映るのだろうか。それはこれまで文在寅が正恩にどのような台詞を吐いていたかによる。
しかし、米国側にとってこれまでの文在寅発言、つまり“北の非核化は本気だ”という言葉はかなりウソに近いもので信じ難いことが明らかになったとの専門家の見方もある。要するに、文在寅に対する米朝両首脳の信頼はかなり薄れた、結果になったのではないかと見られている。
携帯電話市場で台頭する中国のファーウェイに対し、韓国のサムソンが主たる中国市場で苦戦するのではないかと見られるが、これに象徴されるように、韓国経済も不調と伝えられ、ここも非常に苦しいとのこと。このような背景もあってそうした自覚が、“3.1独立運動100周年” 記念行事ので文大統領の挨拶に、対日姿勢の温和的言辞として現れているという。
結果として、対北外交無策の日本の立場が相対的に向上してきているのは、事実ではないだろうか。この好機をどのように生かせるか、“得意の外交” でどのような立ち位置に持ち込めるのか、安倍氏の手腕に期待したいが、果たして果断に動ける俊敏さがあるのだろうか。無策の間抜けな結果になることが目に見えるような気がする。何故ならば、北朝鮮には勿論、中国やロシア、韓国にすら日本の外交パイプは存在しないからだ。対米盲従、これは最早外交ではないが、そうしたことの結果であるのは間違いない。
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というのは会談中にトランプ大統領の元個人弁護士であるマイケル・コーエン氏が米下院監視委員会に召喚されて宣誓証言して、次のようなことが明らかになったからだ。
①この証言で“大統領は人種差別主義者であり詐欺師であり不正の人だ”と断言し“自分は大統領の言うままに違法行為に手を染めたことを深く後悔”していると言ったのは、以下の客観的と思われる証言と併せて大統領への信頼感の毀損。
②トランプ選挙陣営が、ウィキリークスに“ヒラリーのE-mail暴露”を依頼したという疑惑は“事前にトランプの指示を仰いで行なった”という明確な証言。
③大統領のポルノ女優との不倫の“口止め料”は、大統領がコーエンに対して“自腹で立て替える”よう強制し、その後選挙法に違法して返金し、大統領夫人には口止めするよう言われたという証言。
④共和党議員がコーエンを非難して何度も議事進行を妨害した状況から、トランプ氏と“一蓮托生”の強固な共和党下院議員が結構いることの明確化。
これは不利な国内状況を覆そうと目論んで開催した米朝首脳会談であり、これを成功させるのが、現状でのトランプ氏の最大の私益と思われたからだ。さらに、そうした私益の中で経費請求は日本につけ回す懸念が大きかっただけに、私には大いに驚きだった。つまりトランプ氏の決断は米国のみの国益というよりは、アジアにおける自由陣営の国々の国益に配慮したものと言え、常々の“アメリカ・ファースト”とは色合いが大きく異なる行為だった。特に、日本には若干有利に作用するのではないか。
会談が決裂したこと自体に、当初の評価はいずれも独裁的首脳の会談だったからではないか、という憶測だった。つまり両国政府の役人が先ずアジェンダ設定し、各アジェンダの結論を十分に詰め切れずに首脳会談に突入したためではないか、との推測によっている。それは恐らく正しい見方だろう。
しかし、こうした一見私益のぶつかり合いの失敗のように見える会談決裂だが、今後のアジア情勢の大きな転換点になるものと思われる。そこで、各国の今後の内部事情の変化を推測整理してみたい。
会談決裂で大きなダメージを負ったのは、当事者の北朝鮮そのもの、というよりは金正恩その人ではあるまいか。北ウォッチャー専門家の言によれば正恩自身が会談に成果があるとかなり期待していたフシがあるとのこと。トランプの人物そのものをかなり信頼して、ある種頼り切った側面もあったのではないか。会談途中での記者団とのやり取りの映像があったが、その中で“(会談時間の)1分でも大事だ”との自身の一言は、彼の大きな期待と弱みを見せつけたことになった。北は苦境にあることを如実に示している一言ではなかったか。
しかし結果からは確かに“寧辺核施設の廃棄”というワン・イシューで全て解決と言うのは余りにも虫が良すぎるし、トランプをはじめとする米政権を舐めてかかっていたことになる。その後の米側の説明によれば、“追加で発見された施設はウラン濃縮施設のようなものが存在し、それを米側が知っていたということに北朝鮮は驚いていた”ということだ。これと同じような光景は、約30年前の米ソ首脳会談にもあった、と聞いている。当時保有する核関連装備の正確な数字を米側が提示して、ソ連側が驚愕し、交渉に臨む強硬姿勢が折れ、それが冷戦終了・デタントのきっかけになった、という。
しかし、北にとって核放棄は、その見返りはオール・オア・ナッシング“生か死か”の非常に重要な課題であると改めて分かったと解説する向きもある。まぁ当然の見方ではある。
“大山鳴動ネズミ一匹も出ず”は結局のところ、北朝鮮国内での勢力関係に微妙な変化をもたらすのではないか、つまり正恩の指導力に陰りが見え始めるのではないか、との専門家の推測が出ている。
その上、米側に秘密施設の情報を流したのは誰かの疑心暗鬼もあるはずだ。それに伴う粛清による引き締めも考えられる。それが逆に正恩政権の不安定化につながるかも知れない。
そうなれば、正恩は国外に誰を頼るのか。恐らくは、差し詰め習近平の中国。或いは、ロシアのプ-チン。その延長線上に韓国の文在寅との板門店での会談となるか。差当り帰国途中の動揺の中で、習近平に泣きつくか。
中国にとって北朝鮮は地政学的な安定性を確保するための要衝地域である。東北地域には朝鮮族が多く分布しているとも言うので、半島北部の平穏は、中国国内政治の安定性にも欠かせない。
しかし、前回報告したように中国経済はトランプ大統領によって締め上げられ始めている。既にマイナス成長ではないかとの憶測も広がっている程だ。そこで中国首脳は、どの程度の支援策を打ち出せるのだろうか。それが北にとって満足できるものになるかどうか。それは一にかかって北の経済の現状に依ることでもある。つまり全面的に中国のみに頼る訳にはいかなくなるのが現状だろう。
こう見てくると、トランプ大統領の世界戦略政策は中々のものに見えてくるではないか。
或いは、それがロシアのプーチンの介入を許すことに繋がるのかもしれない。そうなれば、ここにも米露の確執の種が発芽するのかもしれない。しかし、ロシアの経済力はその軍事力から想像するよりはるかに小さいことに留意するべきだ。特に欧州からの経済制裁や原油価格の下落が続く昨今、苦しい経済状況にあるのは事実のようだ。だから日本の北方領土問題も一時の強気虚勢と見るべきなのだろう。
また金正恩にとって、対米交渉の橋渡し役として頼りになった文在寅はどう映るのだろうか。それはこれまで文在寅が正恩にどのような台詞を吐いていたかによる。
しかし、米国側にとってこれまでの文在寅発言、つまり“北の非核化は本気だ”という言葉はかなりウソに近いもので信じ難いことが明らかになったとの専門家の見方もある。要するに、文在寅に対する米朝両首脳の信頼はかなり薄れた、結果になったのではないかと見られている。
携帯電話市場で台頭する中国のファーウェイに対し、韓国のサムソンが主たる中国市場で苦戦するのではないかと見られるが、これに象徴されるように、韓国経済も不調と伝えられ、ここも非常に苦しいとのこと。このような背景もあってそうした自覚が、“3.1独立運動100周年” 記念行事ので文大統領の挨拶に、対日姿勢の温和的言辞として現れているという。
結果として、対北外交無策の日本の立場が相対的に向上してきているのは、事実ではないだろうか。この好機をどのように生かせるか、“得意の外交” でどのような立ち位置に持ち込めるのか、安倍氏の手腕に期待したいが、果たして果断に動ける俊敏さがあるのだろうか。無策の間抜けな結果になることが目に見えるような気がする。何故ならば、北朝鮮には勿論、中国やロシア、韓国にすら日本の外交パイプは存在しないからだ。対米盲従、これは最早外交ではないが、そうしたことの結果であるのは間違いない。
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