The Rest Room of ISO Management
ISO休戦
“バリュー投資”を読んで―株購入のためのスクリーニングの参考として
今週も株式投資関連の図書紹介である。その標題もそのものズバリ “バリュー投資”。
この分野では 今やバフェットが絶対的存在だが、この本の著者クリストファー・H・ブラウンは“かつてベンジャミン・グラハムやウォーレン・バフェットを顧客に持ち、バリュー投資の実験工房として名を馳せたニュー・ヨークの名門投資顧問会社ツウィーディ・ブラウンのマネジング・ディレクター”であると言う。ところでベンジャミン・グラハムはバフェットの師である。そして、バフェットの活動の拠点となるバークシャー・ハザウェイ(会社)の株の引取りを仲介したのは、この著者の父親のハワード・ブラウンだったと言う。そこで分かるように、この本は バフェットを中心とする現代のいわば“バリュー投資”派の中心人物による書であり、これまでの彼らの経験と それを裏付ける経済学者達の調査結果を総括・紹介した本と言える。そういう背景があるためか、読んでみて 著者の自身ある記述にある種の重みを感じた。
さて、この著者ブラウンは当然かも知れないが株式へ絶対の信頼を持っている。3年以上の長い目で見れば、リターンが現預金や債権などより はるかに確実で大きいと 過去の調査結果を証拠として示している。何よりも この“事実”をベースに様々な考え方や経験、教訓を結構こと細かに展開している。
例えば次のように指摘している。“ジェレミー・シーゲル教授の‘株式投資’には1871年から1992年までを対象とした調査結果が掲載されている。この期間のうちのどの30年間をとっても、株式(株価指数)のリターンは債権と現預金を上回っている。10年ごとに区切って比較しても、株式のリターンはその期間の80%において債券と現預金を上回った。債権と現預金のリターンは、対象期間の50%においてインフレ率を上回ることができなかった。”
そして、三分の一を債券、三分の二を株にするというポートフォリオを頑なに守ることが賢いやり方とは到底思えないと言っている。債券は株の値下がり時期を乗り越える3年分の資金源としてあれば良いと断言している。もっとも、株への投資は“バリュー投資”を前提としているのだが。
次にいよいよ、その“バリュー投資”とは何かという本質テーマとなる。“誰もが、上がっている株を買い、下がっている株を売るべきだと考えているようだ”が、実は “バリュー投資”とは下がっている価値ある株を安く買い、企業の成長と共にその利益を享受する分かりやすいやり方である。バフェットの師の“グラハムは本質的価値の3分の2以下で売られている株を買うことを望んでいた。”このことによって安全を確保する、というものだ。つまり、市場の変動で価値ある企業が 不当に安く評価されて“下がっている株を買う”のである。だが、これを実践するとなると、意外に勇気がいるものだ。つまり、その時の“常識”に逆らって行動しなければならず、いわば表面的にもせよ逆張りとなるからだ。
周囲の“常識”に逆らって行動するための根拠として、如何に価値ある企業を見抜くのかが大きな課題となる。そこでは先ずPER(株価収益率=株価/1株当たり純利益)を話題にしている。次にPBR(株価純資産倍率=株価/1株当たり総資産)と至極常識的である。PERについては具体的基準は指摘していなかったが PBRについては1.4以下で、時価総額100万ドル(1970年代)以上の企業と言う事例を紹介している。
貸借対照表や損益計算書から読み取れる指標をこと細かに紹介しているが 各指標がいくらであるべきかの基準は書いていない。5~10年の経年変化を見ることが重要であるとは何度も述べている。そして それ以外の企業環境について何に注意するべきか16項目にわたって挙げている。その中で面白いというか ある意味深刻なのがインサイダー(当該企業内部者)が自社株をどうしているかに注目するべきだ、と言っていることだ。もしインサイダーが買っていれば、その後の株価パフォーマンスは良くなる確率は高いとしている。売っていればその逆。だが、そのインサイダーの売買状況の届け出と公開が徹底しているのは米国だけだと、世界を投資先に考えている著者も残念がっている。そればかりか、アクティビストと呼ばれる活動的投資家の挙動も株価を左右するという。
また世界の投資先について次のように見ているのも面白い。“中国はまだ共産主義国家である。上海・香港両市場の上場企業を買う多く所有し、管理しているのは中国政府である。政策が変更されても、投資家には資産の保護を求める手立てがなく、泣き寝入りするしかない。(安心して投資できる地域は)具体的には、すべての西ヨーロッパ諸国、日本、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、シンガポール、そして香港の非中国系企業である。私は、これらの安定した国々、民主主義と資本主義がほぼ確立している地域で、米国企業に適用してきたバリュ-投資の基準に従って割安な株を探し続けるつもりである。”
とは言うものの三原淳雄著の“バフェット入門”によるとバフェット自身はペトロ・チャイナの株を230億株以上購入し中国投資して話題となっていたと言う。しかし、この“バフェット入門”は2006年発行であって、“バリュー投資”は2007年発行。ところが実はバフェットは2007年には早くもそれを売却したとしてネット上でも話題になっていたようだ。株は一旦買ったら5年10年いや生涯持つべきだ、として十分に吟味して購入したはずのバフェットも さすがに 中国企業の国益最優先で、国際基準の社会的信頼を無視するパフォーマンスには嫌気をさした様子だ。
結局のところ、企業価値をどう見極めるかが“バリュー投資”の究極のテーマとなるのだが、著者ブラウンは過去の買収事例からその買収価格と、財務上の指標との相関を把握し、それに基づいて逆に個別企業の適正な価格を推算し、適正株価を推定するべきであると、再三指摘している。その財務指標とは、売上高や利払い前・税引き前利益(EBIT)、利払い前・税引き前利益、減価償却前・その他償却前利益(EBITDA)などである。だが、結局 買収価格とそれら指標とに どういう相関があるのかについては 残念ながら述べてはくれていない。
ところで、私はここまでに前々回紹介したように “バフェットの教訓”、“「バフェット式」投資の原則”を読み、それ以外に三原淳雄著の“バフェット入門”も読んでいる。これらの本で語られた“バリュー投資”のための株のスクリーニング方法について とりあえずまとめてみたい。だが“バフェットの教訓”は こういう視点ではほとんど参考にならない。
いずれもPBR、PERが重要との指摘をしているが、なかなかその適性値を明示してくれていない。PBRについては、“バリュー投資”で さきほど示した1.4以下で評価した事例を提示しているだけで、いずれも1に近い値が望ましいとしている。PERは“バフェット入門”では単純に“何倍なら割安という単純な基準はないことに注意”としている。しかし、“「バフェット式」投資の原則”では“PER<20”という式で一応の提示をしている。
“バフェット入門”では先ずはROEをPBRやPERより重要視しているが、これについても適性値がいくら以上かについては言及していない。業種平均や競合他社と比べてどうなのか評価するべきとしている。
また、“「バフェット式」投資の原則”ではバフェットが重要視しているとした“オーナー収益”について、“バフェット入門”では次のように指摘している。“実際には、オーナー収益を使っても、会社の価値を正確に測れるわけではない。なぜなら、将来の設備投資額や運転資金には、多くの推測が含まれるからだ。パフエツトもその点は認めているが、 「厳密に計算して間違うよりも、大まかにでも正しいほうがまし」だとケインズの吉葉を引用している。” そこで三原淳雄氏は それに近い指標としてフリー・キャッシュ・フローを推奨している。
また“時価総額”も重要のようだが、その適性値がいくらなのかは不明である。これも 先述したように“バリュー投資”で紹介したように1970年代の調査事例で“100万ドル以上”としていたが、これが現代日本いや世界の企業を対象とした場合に どれくらいとなるのか、良く考えてみる必要がある。
以上をさらに総括すると PBR≦1.4,PER<20とし、ROEは私なりにはとりあえず10以上として現状値でスクリーニングする。場合によってはこのスクリーニングでは選別できないこともあるかも知れないが、これらは絶対条件ではないので、ROEから基準を少しずつ緩めてみる。業種によって異なるとはいうものの、その業種が弱体であることも考えられるのであまりに酷い場合は、弱体業種は外すことも必要だろう。対象が数社に絞れたところで、それらの過去5年間の指標を洗い出す。あとは時価総額を参照しつつ詳細調査でフリー・キャッシュ・フローや その会社の経緯や“賞罰”を見てみる、といったところだろうか。そして 何より、製品等で身近な企業であること、これも非常に重要な項目のようだ。そういう意味では東証1部市場をとりあえずの舞台とするべきなのだろうか。
いや、ここまで言ったことはマハラノビス・タグチ・メソッドで分析してみるという、結構大きな宿題はありうるかも知れないのだが・・・・。
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この分野では 今やバフェットが絶対的存在だが、この本の著者クリストファー・H・ブラウンは“かつてベンジャミン・グラハムやウォーレン・バフェットを顧客に持ち、バリュー投資の実験工房として名を馳せたニュー・ヨークの名門投資顧問会社ツウィーディ・ブラウンのマネジング・ディレクター”であると言う。ところでベンジャミン・グラハムはバフェットの師である。そして、バフェットの活動の拠点となるバークシャー・ハザウェイ(会社)の株の引取りを仲介したのは、この著者の父親のハワード・ブラウンだったと言う。そこで分かるように、この本は バフェットを中心とする現代のいわば“バリュー投資”派の中心人物による書であり、これまでの彼らの経験と それを裏付ける経済学者達の調査結果を総括・紹介した本と言える。そういう背景があるためか、読んでみて 著者の自身ある記述にある種の重みを感じた。
さて、この著者ブラウンは当然かも知れないが株式へ絶対の信頼を持っている。3年以上の長い目で見れば、リターンが現預金や債権などより はるかに確実で大きいと 過去の調査結果を証拠として示している。何よりも この“事実”をベースに様々な考え方や経験、教訓を結構こと細かに展開している。
例えば次のように指摘している。“ジェレミー・シーゲル教授の‘株式投資’には1871年から1992年までを対象とした調査結果が掲載されている。この期間のうちのどの30年間をとっても、株式(株価指数)のリターンは債権と現預金を上回っている。10年ごとに区切って比較しても、株式のリターンはその期間の80%において債券と現預金を上回った。債権と現預金のリターンは、対象期間の50%においてインフレ率を上回ることができなかった。”
そして、三分の一を債券、三分の二を株にするというポートフォリオを頑なに守ることが賢いやり方とは到底思えないと言っている。債券は株の値下がり時期を乗り越える3年分の資金源としてあれば良いと断言している。もっとも、株への投資は“バリュー投資”を前提としているのだが。
次にいよいよ、その“バリュー投資”とは何かという本質テーマとなる。“誰もが、上がっている株を買い、下がっている株を売るべきだと考えているようだ”が、実は “バリュー投資”とは下がっている価値ある株を安く買い、企業の成長と共にその利益を享受する分かりやすいやり方である。バフェットの師の“グラハムは本質的価値の3分の2以下で売られている株を買うことを望んでいた。”このことによって安全を確保する、というものだ。つまり、市場の変動で価値ある企業が 不当に安く評価されて“下がっている株を買う”のである。だが、これを実践するとなると、意外に勇気がいるものだ。つまり、その時の“常識”に逆らって行動しなければならず、いわば表面的にもせよ逆張りとなるからだ。
周囲の“常識”に逆らって行動するための根拠として、如何に価値ある企業を見抜くのかが大きな課題となる。そこでは先ずPER(株価収益率=株価/1株当たり純利益)を話題にしている。次にPBR(株価純資産倍率=株価/1株当たり総資産)と至極常識的である。PERについては具体的基準は指摘していなかったが PBRについては1.4以下で、時価総額100万ドル(1970年代)以上の企業と言う事例を紹介している。
貸借対照表や損益計算書から読み取れる指標をこと細かに紹介しているが 各指標がいくらであるべきかの基準は書いていない。5~10年の経年変化を見ることが重要であるとは何度も述べている。そして それ以外の企業環境について何に注意するべきか16項目にわたって挙げている。その中で面白いというか ある意味深刻なのがインサイダー(当該企業内部者)が自社株をどうしているかに注目するべきだ、と言っていることだ。もしインサイダーが買っていれば、その後の株価パフォーマンスは良くなる確率は高いとしている。売っていればその逆。だが、そのインサイダーの売買状況の届け出と公開が徹底しているのは米国だけだと、世界を投資先に考えている著者も残念がっている。そればかりか、アクティビストと呼ばれる活動的投資家の挙動も株価を左右するという。
また世界の投資先について次のように見ているのも面白い。“中国はまだ共産主義国家である。上海・香港両市場の上場企業を買う多く所有し、管理しているのは中国政府である。政策が変更されても、投資家には資産の保護を求める手立てがなく、泣き寝入りするしかない。(安心して投資できる地域は)具体的には、すべての西ヨーロッパ諸国、日本、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、シンガポール、そして香港の非中国系企業である。私は、これらの安定した国々、民主主義と資本主義がほぼ確立している地域で、米国企業に適用してきたバリュ-投資の基準に従って割安な株を探し続けるつもりである。”
とは言うものの三原淳雄著の“バフェット入門”によるとバフェット自身はペトロ・チャイナの株を230億株以上購入し中国投資して話題となっていたと言う。しかし、この“バフェット入門”は2006年発行であって、“バリュー投資”は2007年発行。ところが実はバフェットは2007年には早くもそれを売却したとしてネット上でも話題になっていたようだ。株は一旦買ったら5年10年いや生涯持つべきだ、として十分に吟味して購入したはずのバフェットも さすがに 中国企業の国益最優先で、国際基準の社会的信頼を無視するパフォーマンスには嫌気をさした様子だ。
結局のところ、企業価値をどう見極めるかが“バリュー投資”の究極のテーマとなるのだが、著者ブラウンは過去の買収事例からその買収価格と、財務上の指標との相関を把握し、それに基づいて逆に個別企業の適正な価格を推算し、適正株価を推定するべきであると、再三指摘している。その財務指標とは、売上高や利払い前・税引き前利益(EBIT)、利払い前・税引き前利益、減価償却前・その他償却前利益(EBITDA)などである。だが、結局 買収価格とそれら指標とに どういう相関があるのかについては 残念ながら述べてはくれていない。
ところで、私はここまでに前々回紹介したように “バフェットの教訓”、“「バフェット式」投資の原則”を読み、それ以外に三原淳雄著の“バフェット入門”も読んでいる。これらの本で語られた“バリュー投資”のための株のスクリーニング方法について とりあえずまとめてみたい。だが“バフェットの教訓”は こういう視点ではほとんど参考にならない。
いずれもPBR、PERが重要との指摘をしているが、なかなかその適性値を明示してくれていない。PBRについては、“バリュー投資”で さきほど示した1.4以下で評価した事例を提示しているだけで、いずれも1に近い値が望ましいとしている。PERは“バフェット入門”では単純に“何倍なら割安という単純な基準はないことに注意”としている。しかし、“「バフェット式」投資の原則”では“PER<20”という式で一応の提示をしている。
“バフェット入門”では先ずはROEをPBRやPERより重要視しているが、これについても適性値がいくら以上かについては言及していない。業種平均や競合他社と比べてどうなのか評価するべきとしている。
また、“「バフェット式」投資の原則”ではバフェットが重要視しているとした“オーナー収益”について、“バフェット入門”では次のように指摘している。“実際には、オーナー収益を使っても、会社の価値を正確に測れるわけではない。なぜなら、将来の設備投資額や運転資金には、多くの推測が含まれるからだ。パフエツトもその点は認めているが、 「厳密に計算して間違うよりも、大まかにでも正しいほうがまし」だとケインズの吉葉を引用している。” そこで三原淳雄氏は それに近い指標としてフリー・キャッシュ・フローを推奨している。
また“時価総額”も重要のようだが、その適性値がいくらなのかは不明である。これも 先述したように“バリュー投資”で紹介したように1970年代の調査事例で“100万ドル以上”としていたが、これが現代日本いや世界の企業を対象とした場合に どれくらいとなるのか、良く考えてみる必要がある。
以上をさらに総括すると PBR≦1.4,PER<20とし、ROEは私なりにはとりあえず10以上として現状値でスクリーニングする。場合によってはこのスクリーニングでは選別できないこともあるかも知れないが、これらは絶対条件ではないので、ROEから基準を少しずつ緩めてみる。業種によって異なるとはいうものの、その業種が弱体であることも考えられるのであまりに酷い場合は、弱体業種は外すことも必要だろう。対象が数社に絞れたところで、それらの過去5年間の指標を洗い出す。あとは時価総額を参照しつつ詳細調査でフリー・キャッシュ・フローや その会社の経緯や“賞罰”を見てみる、といったところだろうか。そして 何より、製品等で身近な企業であること、これも非常に重要な項目のようだ。そういう意味では東証1部市場をとりあえずの舞台とするべきなのだろうか。
いや、ここまで言ったことはマハラノビス・タグチ・メソッドで分析してみるという、結構大きな宿題はありうるかも知れないのだが・・・・。
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