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大飯原発見学記

1ヶ月前の話で恐縮だが、神戸市関連の団体の研修会として大飯原子力発電所の見学会があった。
今から20年ほど前に 何の気なしに美浜原子力発電所を視察したことがあったが、最近は代表的温暖化ガスであるCO2を排出しない原子力発電が注目されており、個人的にも環境リスク管理に興味が有った。だが、行きの貸切バスの中での事前の関電広報担当者からの説明で 時流に乗った“クリーンなエネルギー”との表現には やはり違和感と 大きな時代の変化を感じたものだった。



大飯発電所は関電最大発電量の471万kWであり、かつて見た美浜原子力発電所は167万kWであるので その規模は段違いであり、大飯は本格的な原子力発電所と言える。また、他タイプの関電内の代表的発電所の規模は、(大阪)南港火力は180万kW、あの巨大なダムを擁する黒部川第4(水力)は33.5万kWなので 原発の規模・容量は ずば抜けて大きいことが分かる。
ちなみに関電の原発比率は52%であり、その内大飯は26%。



貸切バスによる行程は 神戸市役所(三宮)を午前8時に出発。神戸トンネルから六甲北有料道路、舞鶴若狭道を経て小浜西インターチェンジから、関電・原発見学施設のエルガイアおおいに10時半頃到着。
ここには、子供向けのゲーム施設があり、子供に帰った気分で遊んだ後、映像による原子力発電の原理および発電所の機能概要についての説明を受けた。

地元の食堂で昼食後、午後一小浜湾を囲む大島半島の突端にあるエル・パーク・おおい“おおいり館”に入る。大飯発電所とは山と隔てられた入口にあって、発電所の詳細な説明をする施設となっている。つまり、大飯原発の詳細を1/3模型(1/3ワールド)で見れるようになっているのだ。つまり、テロ対策として政府当局からの指導で一般人の発電所内の見学を禁じられているため 正確な模型で見学者の満足に応えるようになっているようだ。かつて見た美浜原子力発電所では 確か原子炉には近づけなかったが、発電タービンと発電機のある建物内には入って視察できたように記憶しているが、ここでも時代の変化を感じた。
模型であっても 正確に作られているため、実物を見るよりも炉内や設備の断面が見れるため理解し易くなっている印象だった。




その後、実際の発電所施設の見学は関電側のバスに乗車して、山の向へトンネルを抜けた所のゲートで検問を受けて、バスから下車することなく外周を巡ることになった。検問と言っても人員数の確認と 怪しそうな人物を見定めるためのガード・マンによる人相の見定めのようであった。ここでは 写真撮影は禁じられる。恐らく、外国なら ここでは実弾を装てんした銃を持った兵士や警察官によるものだろうが、平和な日本では 丸腰のガード・マンで緊張感は 低い。
原子炉は4基あり、全景は壮観である。1,2号機は117.5万kW、3,4号機118万kWで関電の場合はいずれも加圧水型である。
巡回後、バス車内で質疑応答となった。
この原発での1次冷却水は圧力160kg/cm2、温度300℃で330m3/分の水量とのこと。この汚染された1次冷却水のメンテナンスや維持について詳細質問をしたが 言葉を濁されてしまった。しかし、こういう高温・高圧の汚染された水を安全に 循環するためのポンプをはじめとする装置、配管系、それぞれの溶接など接続部の維持など高度な技術を 要するものと想像される。使用水量は所全体で日量1,300トンで海水を淡水化して使用している。
原発施設稼働率は 通常60%台であるが、これを85%に引き上げるべく努力しており、今年上半期の実績は84.7%でほぼ実現したとのこと。これは定められたメンテナンスを実施してギリギリ到達する数字とのこと。操業技術が極限に達しているまで努力していることを説明したかったようだ。
関電の原発が福井県に集中しているのは、地盤が安定で最近の調査でも活断層は付近には存在していないためで、近畿地方では これ以外は和歌山県の一部しかなく、住民の理解が得られたのは福井だったという。
大飯は1979年稼動開始で、30周年を迎えるが、美浜は40年を越えつつあり、世界には40年以上経過した原発が無いが 今後 慎重なメンテを実施して安全を見極めながら運営しなければならないとのことであった。その後の発電所新設の計画は政府側にも関電自身にも無いようだとの説明であった。日本のエネルギー政策の貧困を想起させる一幕であった。
発電所の現場の技術者が 説明に立ってくれたのなら、現場の些細なことを聞いてみるつもりであったが、広報担当者とのことで、そういう質問は控えざるを得なかったのは 残念であった。
関電の構内バスを降りて、エル・パーク・おおい“おおいり館”で小休止。
乗って来た 貸切バスに乗り換えたが、かつての美浜原発では このタイミングで ガイガー・カウンターで身体検査された。つまり、核燃料の持出しを警戒していたのだが、発電所内を歩き廻った訳ではないためか、そこまではされなかった。
この発電所は どうやら海上からは山陰に隠れていて容易には攻撃され難く巧妙に配置されているように見えた。海上警備は保安庁が厳重に実施しているとのことだったが、ここでも 銃を持って警戒する兵士の姿はなく 平和な日本の一面を垣間見た印象であった。

午後2時過ぎエル・パーク・おおい“おおいり館”を離れ、主催者の“サービス精神”からか、若狭フィッシャーマンズワーフで一旦 休憩してから、来た時の経路を逆に帰途に就いた。予定通り三宮には午後6時半頃帰着した。

本来は 現物を見る前に少しは お勉強して行くべきであったろうが、イマジネーションの乏しい私としては 現物を見てから 関心が明確になり、少し お勉強してみる気になるところが 情けないところである。
その若干のお勉強の結果、どうやら、あの冷却水の管理は 原発操業の 高度なノウハウに属する問題のようであると判明。あの質問の場面で もう少し突っ込んでみるべきだったかも知れないと後悔する次第であった。
それから、無邪気に “原発は温暖化対策に有効” とは言えないのではないかと思うようになった。それは、膨大な冷却水が 温水(取水した時より+7℃)のまま海に戻されており、これが、発生させた熱エネルギーの3分の2が無駄に放出されている原因だという。そして それは一次冷却水を300℃以上に上げられない熱交換技術の限界が原因だという。
環境問題というものは 常に非常に複雑で広範な要因が絡まっており、単純な発想で直ちに了、とは行かない課題であると思う次第である。


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