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“ISOを活かす― 15. クレーム以外の顧客情報によって、顧客満足を向上させる”



今回は、顧客満足度のためのクレーム対応のやり方を検討する課題です。

【組織の問題点】
5年前にISO9001を認証取得した加工食品メーカーA社では、認証取得後も顧客の苦情は一向に減少せず、社長は困っています。
このA社の顧客苦情は 当然ながら その都度、記録を作り対処しているが 苦情が減少しないのは何が問題で、ISOマネジメント・システムをどのように改善すればよいのでしょうか、という問題です。

【ISO活用による解決策】
著者・岩波氏は まず次のように指摘します。“A社の商品を購入して満足しなかった消費者のうち、どの程度の人がA社苦情をいうかが問題です。はっきりと苦情をA社に伝えるのは、満足しなかった消費者のごく一部にすぎないでしょう。たいていの顧客は、満足しなくても苦情をいわずに、二度とその会社の商品を買わなくなることが多いのです。”
そして、著者の身近なレストランの事例を紹介して 次のように 結論付けています。
“ISO9001では、「顧客の苦情がないことが、かならずしも顧客満足度が高いことではない」(3.1.4)と述べています。これは、「顧客の苦情が聞こえてこないから問題はない」と考えてはいけないということを語っています。顧客の苦情を待つのではなく、顧客の声を積極的に聞くことによって、顧客満足度の向上に結びつけることができます。”

【ポイント】
以下が 著者・岩波氏による総括結果です。



【磯野及泉のコメント】
市場型製品の 顧客苦情についての問題です。
この社長が 顧客苦情を減らすことに どうしてこだわるのか、私には 疑問です。会社経営的にどんな意味を感じているのでしょうか。顧客苦情の減少が 顧客満足の向上を 本当に反映しているのでしょうか。
私は、顧客苦情よりも A社の商品が 消費者にどのように支持されているかを まず知るべきだ、と思います。つまり、その商品の 売上高とその変化を見ればよいでしょう。従って、例えば、個別具体的に 商品毎の売上の増減と 苦情の増減の関係から 実態を把握するべきで、商品アイテム毎に、次のような状態が考えられます。

①売上が伸びていて 苦情が減っている
②売上が伸びていて 苦情も増えている
③売上が減っていて 苦情が減っている
④売上が減っていて 苦情が増えている

①は 実にハッピーで 喜ばしい状況。その商品については当面 静観していてよいでしょう。
②は苦情が増えてはいますが、とりあえず事態は深刻ではなく 基本的には 消費者からの支持を得つつあるのですが、買ってみた顧客の数が 増えるに従い、苦情が増えていると考えるべきです。そうならば、苦情を放置して対策を打たないと、おのずと売上は減少するはずと考え、次々と 対策を繰り出すべきでしょう。このような状況は、その商品が 新発売になってしばらくした時に生じる現象ではないかと思われます。商品力を さらに一層強化するべく努力するべきでしょう。
③は 苦情が減っていますが、当該商品の基本機能の欠陥によってライフサイクルが 尽きようとしていると見るべきかも知れません。その商品がA社のメイン商品であるにもかかわらず、A社に 代替商品が 無いならば 極めて深刻な事態で、抜本的な経営戦略の見直しが必要だと考えられます。
④は 売上が減っているのに、苦情が 増えていて問題です。それも②と違い、極めて重大な問題が起きていると見るべきでしょう。この場合は ③よりも深刻です。即座の、抜本対策を 講じるか、収益状況を見て、その商品の販売継続そのものを判断するべきでしょう。

漫然と 単に“苦情の増減”だけを見ていては 何をどうするべきか、一向に見えてこないと思いますが、個別具体的に 状況を 整理し、把握すれば 対策は容易に見つかるのではないかと思うのです。



それに、いずれの事態も 問題が生じてから、“顧客が どのように感じているか”などと 悠長な調査では 間に合わないような気がします。常に 販売チャンネルを通じての “顧客情報”に 注意を払うべきでしょう。“顧客苦情は 作り手にとって やり難いことバカリ” でしょうが、トヨタ自動車は それに極力対応することで 今の地歩を築いたと聞いています。
要するに “8.2.1 顧客満足” と “8.4 データの分析 a)” を A社では 具体的にどういう情報を監視し、それを どのように継続的にチェックしていくのが 有効であるかを認識し、実施していくかの問題だと 思われます。

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