徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

誰でも接種したくなる魅力的なワクチンとは(by 新見正則先生)

2017年01月11日 11時10分14秒 | 小児科診療
 先日紹介したイグ・ノーベル賞受賞の新見先生の続きの記事に、やはり興味深い記述がありました。
 魅力的なワクチンの条件を挙げて解説しており、ふむふむと頷ける内容です。
 その中で子宮頸がんワクチンにも言及しており、スムースに進まない理由を「少ない副作用に目をつぶれるほどワクチンの効果が絶大ではない」と分析しています;

■ バイオテロに備えて…天然痘「根絶宣言」でも種痘接種を
2016年9月16日:読売新聞

 ・・・僕が思う、みんなが受けたくなるワクチンの要件は、

<1> 対象が絶対に罹かかりたくない病気であること
<2> ワクチンの効果が絶大であること
<3> 費用がかからないこと
<4> 副作用が少ないこと


だと思っています。それらをすべて、種痘は満たしていました。

◇ 国策のワクチン接種なら、無料に
 天然痘にかかると40%も死亡し、そしてうまく生き残っても「あばた」が残るのでは、絶対に罹りたくない病気ですね。一方で麻疹(はしか)や風疹(三日ばしか)は、「 あえて子供の頃に罹ってしまえばいい」と主張する人がいるほど、「全員が絶対に罹りたくない病気」という範疇には入りません。一方で、がん全般に有効なワクチンや、心臓病を予防できるワクチン、そして認知症にならないワクチンなどが登場すれば、誰もが率先して接種すると思っています。
 そして種痘は接種後、数十年経っても抗体価(免疫力を測る値)が強陽性の人が半数近くいるという報告もあります。インフルエンザのワクチンが毎年接種する必要があったり、また麻疹や風疹の抗体価が10年後には相当低下することに比べると種痘の効果はすばらしいのです。
 また、種痘はWHOが主導的立場で、世界中で撲滅計画を進めました。いろいろな援助のお陰で貧しい国でも種痘接種を行えたのです。だからこそ、根絶宣言に至りました。

 乳幼児期や学童期のワクチンは基本的に無料ですが、大人が接種するには数千円が必要です。数千円は富裕層にとっては何でもない金額かもしれませんが、低賃金で必死に生活している人々にとっては相当な金額です。国策としてワクチン接種を行うには、僕はすべて無料で、つまり国のお金で行うべきだと思っています。また貧しい国では麻疹や風疹のワクチン接種などは十分に行われていません。天然痘に比べて費用対効果が悪いからです。

 副作用はゼロが理想です。しかし、種痘でも副作用はあるのです。有名なのは種痘後脳炎で、10万人に1人ほどに起こり、約半数が死亡したとも言われています。しかし、それぐらいの副作用は承知で受けたくなるぐらいに天然痘は罹りたくない病気だったのです。

 子宮頸がんワクチンは、がん全体を防止するわけではありません。すべての子宮頸がんを防止するわけでもありません。また効果が100%でもありません。つまり、ほんの少しの副作用に目をつぶるほど、頻度が高い重病に対する効果的なワクチンではないのです。だからこそ、頻度が少ない副作用でも問題視されるのです。
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