感染対策の基本として常識となっている「マスク」。
先日のNHKの「ためしてガッテン」で特集をしていました。
題して「そのマスク、大丈夫? 予防効果10秒超UP術」。
一般常識や思い込みがくつがえされる、目から鱗の情報が目白押し。
■ 市販のマスクを装着してウイルスの通過阻止率を調べると惨憺たる結果に。
「ウイルス・花粉を99%カット!」とうたう高機能マスクでも粉塵の通過阻止率を調べる専門的方法ではなんと「0%」という結果に「エ~ッ!」「まったくやくにたたないの?」と被験者たちは愕然。
一方、病院で使用するサージカルマスクでは「75%」とまあまあの成績。このカラクリは?
■ ウイルスの大きさはとても小さいことを認識すべし。
マスクを1万倍に拡大した模型が登場、数cmの編み目のある網状構造となっている。
そこにウイルスを1万倍に拡大したもののイメージをゲストに質問・・・サッカーボール程度?それとも卓球の球の大きさ?
→ 答えは「ごま粒程度」。
スタジオ内が騒然とし「スカスカじゃん」「ウイルスはマスクを素通り?」という嘆きのコメントも。
■ 効果的なマスク着用のコツ。
マスクの繊維そのものは隙間があっても何層も重ねることによりウイルスをトラップすることができるので可と解説。
問題はマスクと顔の密着程度で、上下左右に存在する「すき間」。
マスク本体を通すとウイルスはブロックされても、上下左右のすき間からはフリーパスなのです。
あらかじめ折るなどの成形してすき間を減らすコツを伝授すると、最初の実験で「ウイルスカット率0%」だったものが軒並み90%程度にアップし、一同から笑みがこぼれる。
病院用サージカルマスクのウイルスカット率が高かったの秘密は、感染対策専門ナースの熟練したピッタリ装着法にあったのでした。
<マスク装着の際に注意すべきポイント>
「鼻・ほほ・あごのすきまに注意!」
ワイヤー入りのマスクなら、「着ける前」にワイヤーを折り曲げておくと、鼻の横のすき間を減らせます。その際、1回折り曲げるだけでなく、鼻の形にあわせて山折り、谷折りしておくと、さらにピッタリに!
また、プリーツ式のマスクは、「あご」までしっかり伸ばすのが大切ですが、伸ばしすぎると「ほほ」にすき間ができてしまうこともあるので、両方にすき間ができない、ちょうど良い位置に!
さらに、自分にあった大きさ・形を選ぶことも重要なポイント。大き過ぎ、小さ過ぎは「すき間」ができる元になります。自分の顔にあった大きさ・形のマスク選びが大切です。
こうしたチェックポイントに注意するだけで、カット率が大幅に改善!なんと、カット率0%から、97%へ飛躍的に アップした人も。「フィット」に気を配るかどうかで、マスクの効果は大違いなのです!
■ 風邪がうつるパターンは実は「接触接触>飛沫感染」なんです。
いろんな生活パターンで風邪がうつる確率を検証した、アメリカの実験データが紹介される。
① テーブルを囲んで風邪患者がくしゃみ・咳をしているシチュエーション30分間。
② 風邪患者が使用したマグカップを触る。
③ 風邪患者と金網だけの仕切りをつくった空間で3日間生活する。
そして結果は・・・①8%、②30%、③0%、という意外な結果に。
つまり、風邪はくしゃみ・咳でうつるよりも、患者の触ったものを介して接触感染する可能性の方が圧倒的に高いと云うこと。
チラッとうつされた論文には「ライノウイルス」(ふつうの鼻風邪の原因ウイルス)の名前がありました。
<参考>
□ 「風邪は飛沫感染?」
□ 「飛沫感染と接触感染の連続性」
■ くしゃみ・咳に風邪ウイルスは思っているほどたくさんはいません。
インフルエンザ患者の咳の飛沫を集めて研究している学者さんのデータによると、数回の咳から検出されるウイルスの数は0個が50%以上とこれも意外な結果。ただし、咳を繰り返すと当然ウイルスの数はそれなりに増えてくるので、危険がないわけではない。
■ のどの保湿・接触感染予防としてのマスクの効用
口・鼻から病原体(ウイルスや細菌)が入っても奥に行かないようにするのが気道の「線毛運動」。
粘膜表面にたくさんの小さな毛があり、ほうきで掃き出すように規則正しく中から外へ向かって動いている。
しかし、乾燥するとこの運動機能が低下してしまう。
マスクを装着していると気道が乾燥しにくく、線毛運動をサポートする効果がある。
塾で授業を受けている小学生達が画面に登場。
しばらく観察すると、例外なく「手で鼻を触る動作」をすることが確認できた。
これが風邪感染につながる危険行為。
マスクをすると、自分の鼻を直接触ることができないので強力な感染対策となる。
■ マスクを使うコツは「メリハリ」をつけること。
ウイルスがたくさんいるシチュエーションとして満員電車やエレベーター内を想定。
学者さんが「おならが臭う密閉空間では咳によるウイルスの数も多いと考えましょう」とアドバイス。
そのような場面ではしっかり隙間も減らすようマスクを装着し、周囲に人がまばらな場面ではルーズな装着でも可。
ポイントは「マスクを上手に使いましょう」ということ。
私がふだんから患者さんたちに伝えたい情報を面白おかしく解説したよい番組でした。
その極意は「ふだんは多少ゆるめでもOK、イザという時、ぴったりフィット」に尽きるようです。
さて、究極の医療用マスクに「N95」という型番があります。
これは空気感染対策のもので、密着率が高く、正しく装着すると呼吸が苦しくなってくるのです。
逆に言うと、苦しくなるほど密着させないと完璧な感染対策になり得ないのです。
なお、現在知られている病原体で空気感染するものは「結核」「麻疹」「水痘」の3つだけです。
これらは、患者さんの呼吸器から排出された飛沫が水分を失ってからも空気中を浮遊し(これを専門用語で「飛沫核」といいます)、同じ空間にいるだけで感染してしまいます。
混乱しやすいのですが「空気感染」と「飛まつ感染」は別物です。
ふつうの風邪ウイルスはくしゃみ・咳を吸い込んだり呼吸器に付着すると感染が成立しますが、飛沫が水分を失うと下に落ちてしまい感染力が無くなります。ですから、風邪対策に「N95」マスクは必要ないことになります。
素人さんが情報収集したHPを拝見すると、この空気感染と飛まつ感染を混同しているものが散見されますのでご注意を。
インフルエンザも例に漏れず、空気感染ではなく飛沫感染です。
2009年に新型インフルエンザ(H1N1)登場した際は、そのリスクが未知だったので初期の検疫にはN95マスクが用いられていましたけど。
<参考>
□ 「N95マスク装着方法」(YouTube動画)
先日のNHKの「ためしてガッテン」で特集をしていました。
題して「そのマスク、大丈夫? 予防効果10秒超UP術」。
一般常識や思い込みがくつがえされる、目から鱗の情報が目白押し。
■ 市販のマスクを装着してウイルスの通過阻止率を調べると惨憺たる結果に。
「ウイルス・花粉を99%カット!」とうたう高機能マスクでも粉塵の通過阻止率を調べる専門的方法ではなんと「0%」という結果に「エ~ッ!」「まったくやくにたたないの?」と被験者たちは愕然。
一方、病院で使用するサージカルマスクでは「75%」とまあまあの成績。このカラクリは?
■ ウイルスの大きさはとても小さいことを認識すべし。
マスクを1万倍に拡大した模型が登場、数cmの編み目のある網状構造となっている。
そこにウイルスを1万倍に拡大したもののイメージをゲストに質問・・・サッカーボール程度?それとも卓球の球の大きさ?
→ 答えは「ごま粒程度」。
スタジオ内が騒然とし「スカスカじゃん」「ウイルスはマスクを素通り?」という嘆きのコメントも。
■ 効果的なマスク着用のコツ。
マスクの繊維そのものは隙間があっても何層も重ねることによりウイルスをトラップすることができるので可と解説。
問題はマスクと顔の密着程度で、上下左右に存在する「すき間」。
マスク本体を通すとウイルスはブロックされても、上下左右のすき間からはフリーパスなのです。
あらかじめ折るなどの成形してすき間を減らすコツを伝授すると、最初の実験で「ウイルスカット率0%」だったものが軒並み90%程度にアップし、一同から笑みがこぼれる。
病院用サージカルマスクのウイルスカット率が高かったの秘密は、感染対策専門ナースの熟練したピッタリ装着法にあったのでした。
<マスク装着の際に注意すべきポイント>
「鼻・ほほ・あごのすきまに注意!」
ワイヤー入りのマスクなら、「着ける前」にワイヤーを折り曲げておくと、鼻の横のすき間を減らせます。その際、1回折り曲げるだけでなく、鼻の形にあわせて山折り、谷折りしておくと、さらにピッタリに!
また、プリーツ式のマスクは、「あご」までしっかり伸ばすのが大切ですが、伸ばしすぎると「ほほ」にすき間ができてしまうこともあるので、両方にすき間ができない、ちょうど良い位置に!
さらに、自分にあった大きさ・形を選ぶことも重要なポイント。大き過ぎ、小さ過ぎは「すき間」ができる元になります。自分の顔にあった大きさ・形のマスク選びが大切です。
こうしたチェックポイントに注意するだけで、カット率が大幅に改善!なんと、カット率0%から、97%へ飛躍的に アップした人も。「フィット」に気を配るかどうかで、マスクの効果は大違いなのです!
■ 風邪がうつるパターンは実は「接触接触>飛沫感染」なんです。
いろんな生活パターンで風邪がうつる確率を検証した、アメリカの実験データが紹介される。
① テーブルを囲んで風邪患者がくしゃみ・咳をしているシチュエーション30分間。
② 風邪患者が使用したマグカップを触る。
③ 風邪患者と金網だけの仕切りをつくった空間で3日間生活する。
そして結果は・・・①8%、②30%、③0%、という意外な結果に。
つまり、風邪はくしゃみ・咳でうつるよりも、患者の触ったものを介して接触感染する可能性の方が圧倒的に高いと云うこと。
チラッとうつされた論文には「ライノウイルス」(ふつうの鼻風邪の原因ウイルス)の名前がありました。
<参考>
□ 「風邪は飛沫感染?」
□ 「飛沫感染と接触感染の連続性」
■ くしゃみ・咳に風邪ウイルスは思っているほどたくさんはいません。
インフルエンザ患者の咳の飛沫を集めて研究している学者さんのデータによると、数回の咳から検出されるウイルスの数は0個が50%以上とこれも意外な結果。ただし、咳を繰り返すと当然ウイルスの数はそれなりに増えてくるので、危険がないわけではない。
■ のどの保湿・接触感染予防としてのマスクの効用
口・鼻から病原体(ウイルスや細菌)が入っても奥に行かないようにするのが気道の「線毛運動」。
粘膜表面にたくさんの小さな毛があり、ほうきで掃き出すように規則正しく中から外へ向かって動いている。
しかし、乾燥するとこの運動機能が低下してしまう。
マスクを装着していると気道が乾燥しにくく、線毛運動をサポートする効果がある。
塾で授業を受けている小学生達が画面に登場。
しばらく観察すると、例外なく「手で鼻を触る動作」をすることが確認できた。
これが風邪感染につながる危険行為。
マスクをすると、自分の鼻を直接触ることができないので強力な感染対策となる。
■ マスクを使うコツは「メリハリ」をつけること。
ウイルスがたくさんいるシチュエーションとして満員電車やエレベーター内を想定。
学者さんが「おならが臭う密閉空間では咳によるウイルスの数も多いと考えましょう」とアドバイス。
そのような場面ではしっかり隙間も減らすようマスクを装着し、周囲に人がまばらな場面ではルーズな装着でも可。
ポイントは「マスクを上手に使いましょう」ということ。
私がふだんから患者さんたちに伝えたい情報を面白おかしく解説したよい番組でした。
その極意は「ふだんは多少ゆるめでもOK、イザという時、ぴったりフィット」に尽きるようです。
さて、究極の医療用マスクに「N95」という型番があります。
これは空気感染対策のもので、密着率が高く、正しく装着すると呼吸が苦しくなってくるのです。
逆に言うと、苦しくなるほど密着させないと完璧な感染対策になり得ないのです。
なお、現在知られている病原体で空気感染するものは「結核」「麻疹」「水痘」の3つだけです。
これらは、患者さんの呼吸器から排出された飛沫が水分を失ってからも空気中を浮遊し(これを専門用語で「飛沫核」といいます)、同じ空間にいるだけで感染してしまいます。
混乱しやすいのですが「空気感染」と「飛まつ感染」は別物です。
ふつうの風邪ウイルスはくしゃみ・咳を吸い込んだり呼吸器に付着すると感染が成立しますが、飛沫が水分を失うと下に落ちてしまい感染力が無くなります。ですから、風邪対策に「N95」マスクは必要ないことになります。
素人さんが情報収集したHPを拝見すると、この空気感染と飛まつ感染を混同しているものが散見されますのでご注意を。
インフルエンザも例に漏れず、空気感染ではなく飛沫感染です。
2009年に新型インフルエンザ(H1N1)登場した際は、そのリスクが未知だったので初期の検疫にはN95マスクが用いられていましたけど。
<参考>
□ 「N95マスク装着方法」(YouTube動画)