BCGワクチン溶解液にヒ素が混入・・・医療関係者が「ヒ素中毒」を聞くと、古い人間は「森永ヒ素ミルク中毒事件」を思い出します。
昭和30年、育児用ミルクにヒ素が「溶けやすいように」と危険性の検討をせずに添加され、それを飲んだ赤ちゃんに急性中毒症状が発現し、後遺症も残ったという事件です。
西日本を中心に、死亡者130人、被害者1万3000人。
例に漏れず、ミルクを製造した森永乳業は自分の非を認めようとせず、政府に近いお抱え大学教授は「赤ちゃんの症状の原因はヒ素によるものではなく先天性の病気」と言い逃れをして、ほとぼりが冷めるのを待つのでした。
しかしその後、疫学的手法により科学的にひ素中毒が証明され、森永乳業はとうとう事件から18年後に認めるに至りました。
BCGに混入していたヒ素のことから事件を思い出し、昔録画してあったこの事件を扱うドキュメンタリーを見てみました。
歴史的にこの類いの事件は、加害者側の会社は自分の罪を認めたがりません。
被害者側が粘り強く訴えを長年続けて、初めて救済されるのが常です。
その間、被害者である患者さんは、病気に悩まされ、かつ、世間からの批判的な視線にさらされるというつらい日々を送ることになります。
森永ヒ素ミルク中毒事件の場合は、生まれて間もない赤ちゃんに生じた異常症状のため、先天的な病気と疑われて親族からも母親が非難されて追い詰められるという悲惨さもありました。
この悲しさは、被害者が赤ちゃん、加害者が森永乳業ですが、ミルクを飲ませた母親が罪の意識に一生さいなまれたこと。
忘れてはいけない事件として、取りあげさせていただきました。
■ ETV特集「母と子 あの日から 〜森永ヒ素ミルク中毒事件60年」
(2016.7.23:NHK)
母親が赤ちゃんに与える粉ミルクに猛毒・ヒ素が混入した「森永ヒ素ミルク中毒事件」。少なくとも130人の乳幼児が死亡、全国で1万3000人以上の被害者を出した。被害者の中には、脳性まひなど重い障害が残った人も。しかし後遺症の存在は、事件から10年以上認められなかった。国、森永乳業、被害者団体が昭和48年に「恒久救済」に合意した後も、母親たちの自責の念は消えていない。被害者と親たちの60年をみつめる。
<参考>
□ 「森永ヒ素ミルク中毒事件60年 ~母と子 あの日から~|ETV特集」
さて、会社と政府が「ヒ素中毒」を認めざるを得なくなった根拠は「疫学調査」です。
一般に、化学物質と人体への障害を証明するのは難しい。
そこで「疫学」の出番です。
森永ミルクを飲んだ赤ちゃんと、飲まなかった赤ちゃんを比較して、症状が明らかに飲んだ赤ちゃんに多ければ、そのミルクが原因と間接的に証明されるわけです。
このデータを証拠として森永乳業と政府に提示し、非を認めさせたのでした。
さて、この疫学的手法はワクチンの副反応の評価にも使われます。
ワクチンの成分が副反応症状の原因になっているかどうかを証明するのは難しい。
ここでも「疫学」の出番です。
問題となるワクチンを接種した子どもと、接種していない子どもを比較して、その症状の発生頻度を比較します。
差があれば関係あり、差がなければ関係なし。
ヨーロッパでMMR(麻疹・おたふく・風疹)ワクチンが自閉症発症と関係があるという論文が発表され、そのためにワクチン接種率が下がり、あちこちで麻疹が流行して社会問題になったことがありました。
そのデータが本当かどうか検証する目的で、MMRワクチンを接種した子どもと接種しない子どもにおける自閉症の頻度を比較したところ、差がありませんでした。
つまり、MMRワクチンは自閉症の原因にはならないことが証明されたのです。
この論文はその後、データのねつ造が発覚し、掲載が取り消しになりました。
論文の著者であるイギリス人のアンドリュー・ウェイクフィールド医師は医師免許を剥奪され、現在米国で「反ワクチンキャンペーン運動」を続けているそうです。
先日彼が監督した映画「MMRワクチン告発」が日本で上映されそうになりましたが、「問題あり」として上映が中止されました。
HPVワクチン(子宮頚癌ワクチン)でも、ワクチン成分が副反応とされる症状の原因になっているかどうか、判断が難しい。
そこで「疫学」の出番です。
HPVワクチンを接種した女性と、接種していない女性で、症状の発現頻度を比較したところ、差がありませんでした。
つまり、HPVワクチンは副反応とされる症状の原因ではない、ということ。
さて、森永ヒ素ミルク中毒事件では、被害者側が疫学データを持って因果関係を証明し、加害者側に罪を認めさせました。
一方、MMRワクチンとHPVワクチンでは、加害者(?)側が疫学データを持って因果関係がないことを証明し、被害者(?)側に提示しました。
当然、ここで問題は解消するはず。
しかし、現在も完全に解決しているとは言えない状態です。
ワクチン被害者(?)側は、提示された疫学データを認めないのです。
自分の都合で科学的データに頼ったり、逆に自分の都合で科学的データを無視したり・・・人間ってしょうもない生き物です。
昭和30年、育児用ミルクにヒ素が「溶けやすいように」と危険性の検討をせずに添加され、それを飲んだ赤ちゃんに急性中毒症状が発現し、後遺症も残ったという事件です。
西日本を中心に、死亡者130人、被害者1万3000人。
例に漏れず、ミルクを製造した森永乳業は自分の非を認めようとせず、政府に近いお抱え大学教授は「赤ちゃんの症状の原因はヒ素によるものではなく先天性の病気」と言い逃れをして、ほとぼりが冷めるのを待つのでした。
しかしその後、疫学的手法により科学的にひ素中毒が証明され、森永乳業はとうとう事件から18年後に認めるに至りました。
BCGに混入していたヒ素のことから事件を思い出し、昔録画してあったこの事件を扱うドキュメンタリーを見てみました。
歴史的にこの類いの事件は、加害者側の会社は自分の罪を認めたがりません。
被害者側が粘り強く訴えを長年続けて、初めて救済されるのが常です。
その間、被害者である患者さんは、病気に悩まされ、かつ、世間からの批判的な視線にさらされるというつらい日々を送ることになります。
森永ヒ素ミルク中毒事件の場合は、生まれて間もない赤ちゃんに生じた異常症状のため、先天的な病気と疑われて親族からも母親が非難されて追い詰められるという悲惨さもありました。
この悲しさは、被害者が赤ちゃん、加害者が森永乳業ですが、ミルクを飲ませた母親が罪の意識に一生さいなまれたこと。
忘れてはいけない事件として、取りあげさせていただきました。
■ ETV特集「母と子 あの日から 〜森永ヒ素ミルク中毒事件60年」
(2016.7.23:NHK)
母親が赤ちゃんに与える粉ミルクに猛毒・ヒ素が混入した「森永ヒ素ミルク中毒事件」。少なくとも130人の乳幼児が死亡、全国で1万3000人以上の被害者を出した。被害者の中には、脳性まひなど重い障害が残った人も。しかし後遺症の存在は、事件から10年以上認められなかった。国、森永乳業、被害者団体が昭和48年に「恒久救済」に合意した後も、母親たちの自責の念は消えていない。被害者と親たちの60年をみつめる。
<参考>
□ 「森永ヒ素ミルク中毒事件60年 ~母と子 あの日から~|ETV特集」
さて、会社と政府が「ヒ素中毒」を認めざるを得なくなった根拠は「疫学調査」です。
一般に、化学物質と人体への障害を証明するのは難しい。
そこで「疫学」の出番です。
森永ミルクを飲んだ赤ちゃんと、飲まなかった赤ちゃんを比較して、症状が明らかに飲んだ赤ちゃんに多ければ、そのミルクが原因と間接的に証明されるわけです。
このデータを証拠として森永乳業と政府に提示し、非を認めさせたのでした。
さて、この疫学的手法はワクチンの副反応の評価にも使われます。
ワクチンの成分が副反応症状の原因になっているかどうかを証明するのは難しい。
ここでも「疫学」の出番です。
問題となるワクチンを接種した子どもと、接種していない子どもを比較して、その症状の発生頻度を比較します。
差があれば関係あり、差がなければ関係なし。
ヨーロッパでMMR(麻疹・おたふく・風疹)ワクチンが自閉症発症と関係があるという論文が発表され、そのためにワクチン接種率が下がり、あちこちで麻疹が流行して社会問題になったことがありました。
そのデータが本当かどうか検証する目的で、MMRワクチンを接種した子どもと接種しない子どもにおける自閉症の頻度を比較したところ、差がありませんでした。
つまり、MMRワクチンは自閉症の原因にはならないことが証明されたのです。
この論文はその後、データのねつ造が発覚し、掲載が取り消しになりました。
論文の著者であるイギリス人のアンドリュー・ウェイクフィールド医師は医師免許を剥奪され、現在米国で「反ワクチンキャンペーン運動」を続けているそうです。
先日彼が監督した映画「MMRワクチン告発」が日本で上映されそうになりましたが、「問題あり」として上映が中止されました。
HPVワクチン(子宮頚癌ワクチン)でも、ワクチン成分が副反応とされる症状の原因になっているかどうか、判断が難しい。
そこで「疫学」の出番です。
HPVワクチンを接種した女性と、接種していない女性で、症状の発現頻度を比較したところ、差がありませんでした。
つまり、HPVワクチンは副反応とされる症状の原因ではない、ということ。
さて、森永ヒ素ミルク中毒事件では、被害者側が疫学データを持って因果関係を証明し、加害者側に罪を認めさせました。
一方、MMRワクチンとHPVワクチンでは、加害者(?)側が疫学データを持って因果関係がないことを証明し、被害者(?)側に提示しました。
当然、ここで問題は解消するはず。
しかし、現在も完全に解決しているとは言えない状態です。
ワクチン被害者(?)側は、提示された疫学データを認めないのです。
自分の都合で科学的データに頼ったり、逆に自分の都合で科学的データを無視したり・・・人間ってしょうもない生き物です。