徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

ノロウイルスもついに「ワクチンで防げる病気」に?  (附)血液型で罹りやすさが異なる病気

2011年12月28日 06時27分07秒 | 小児科診療
 12月に入ってから、当地では嘔吐下痢が大流行中です。
 嘔吐が目立つけど一晩で治まり、下痢は軽く済むタイプはノロウイルスによる感染性胃腸炎が怪しいですね。一家全滅する傾向があるのも特徴のひとつです。

 さて、11月に発売されたロタウイルスワクチンに続けとばかりに、ノロウイルスに対するワクチンの開発も進んでいる様子。
 下記の記事を読んでと意外な記述に目が点になりました。なんと、ノロウイルスへの感受性(感染しやすさ)は血液型に左右されるらしい。O型の人は罹りやすくB型は逆に罹りにくいとのこと。しっ、知りませんでした。


ノロウイルスもついに「ワクチンで防げる病気」に?
ただし「血液型B型とAB型の人は除外」の理由とは

(2011.12.12:メディカル・トリビューン)
 ノロウイルスを原因とする感染性胃腸炎は、子供だけでなく大人も苦しむ“おなかの風邪”として、特に冬に流行する。しかし、このウイルス感染症もついに“ワクチンで防げる病気”の仲間入りを果たす日が近付いているようだ。12月8日付の米医学誌「New England Journal of Medicine」(2011; 365: 2178-2187)に、世界初となるノロウイルス(ノーウォークウイルス株)ワクチンの臨床試験の良好な成績が報告された。ただし、この臨床試験では除外基準に「血液型B型とAB型の人」が含まれている。その理由とは…。

◇ 2回の接種で胃腸炎の発症・重症化が減少
 ノロウイルスワクチンは、“子宮頸(けい)がんワクチン”として知られるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンなどと同じ「ウイルス様粒子」の技術を用いて作製された単価の経鼻ワクチン。ウイルス様粒子は、ウイルスの外殻(カプシド)を構成するタンパク質だけを再現した“空の粒子”で、ウイルスの遺伝情報を含まないため感染性はないが、ウイルス粒子と同等の抗原性を生じさせることができるため、安全性の高いワクチンの開発などに応用されている。
 今回の試験対象とされたのは18~50歳の健康な成人。50人がワクチン接種群、48例が偽薬群(マンニトール・ショ糖)に割り付けられた。接種間隔を21日間空け、2回のワクチン接種を実施。この間に、ノーウォークウイルス株への曝露(ばくろ)も行われた。2回の接種を完了したのはワクチン群47人、偽薬群43人だった。
 ワクチン群の70%でノロウイルスの抗体が確認された。試験を完遂した77人における感染性胃腸炎の発症率は、プラセボ群の69%に対してワクチン群で37%と、統計学的に有意な減少が認められた。このほか、ノーウォークウイルス株感染率と感染性胃腸炎の重症化スコアも、ワクチン群で有意に低かった。
 最も多く報告された接種後の症状は鼻詰まり、鼻水、くしゃみで、有害事象(副作用)の報告率は両群で同等だった。

◇ 感染率はO型で高くB型で低い
 なお、今回の臨床試験で定められた23もの除外基準の1つに「血液型B型またはAB型」がある。また、これに関連する導入基準の1つとして「唾液中にH1抗原が確認された人」が定められている。H1抗原は、O型の人でしか残らないH抗原の亜型の1つ。
 実は、2000年ごろから、ノーウォークウイルス株が特定の血液型の抗原をレセプター(ウイルスの結合部分)として感染することが分かってきているようだ。これまでO型の人のノーウォークウイルス株感染率が高い一方、B型の人では低いことが報告されており、血液型のようなかなり個体差のある宿主のレセプターを用いる感染様式は珍しいとの意見もある(参考:広島市衛生研究所「ストップ・ザ食中毒:カキにあたる人、あたらない人」 )。
 なお、ノーウォークウイルス株はO型の人が持つH抗原に吸着すること、H抗原が赤血球表面だけでなく、ウイルスの標的臓器である腸管のほか唾液中にも分泌される遺伝子多型があること、血液型抗原への結合力が強い株は感染力が強い可能性などが明らかにされているようだ(参考:国立感染症研究所ウイルス第二部 白土東子氏ら「ノロウイルスと血液型抗原」


 血液型により発生率が左右される病気はマラリアが有名です。ただし、一般的なABO式ではなく、ダフィー型血液型というややマイナーなタイプ分類によります。

 と思ったら、最近の研究でこんな報告も;

ABO血液型に新たな意義? 疾患との関連示す報告相次ぐ
(2011.11.30:MT Pro)
 この記事の中で、二つの疾患が紹介されています。

1.超低出生体重児の壊死性腸炎
 AB型の児では他の血液型の児に比べ死亡のリスクがハザード比(HR)で2.87倍に上っていた(95%CI 1.40~5.89,P=0.003)。さらに多変量解析においてもAB型はNECによる死亡の独立した危険因子(HR 2.93,1.43~6.04,P=0.004)で,手術に次いで強い関連が示された(手術のHR 4.65,2.61~8.33,P<0.0001)

2.脳卒中
 AB型の人は脳卒中リスクが約30%高い。


 ここで取り上げた血液型に相当する方は、心中穏やかではありません。
 私はB型なので、ホッと胸をなで下ろしていますが・・・。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “セシウム花粉”飛散に「問題... | トップ | 人災としての福島第一原発事故 »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

小児科診療」カテゴリの最新記事