徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

新しい抗RSV薬「ベイフォータス」、登場!

2024年06月18日 06時49分09秒 | 小児科診療
前項で、RSVワクチンを紹介しましたが、
実は最近、新しい治療薬(抗RSV薬)も登場しました。
といっても、「モノクローナル抗体製剤」といって、治療というより予防薬ですね。

ハイリスクの赤ちゃんに使用する場合は保険適応となり、
健康な赤ちゃんに使用する場合は自由診療(自費)?
ちょっと設定が複雑です。
臨床現場でどう扱われるようになるのか、注視していく必要があります。

でも、これまで特効薬がなかったRSV感染症に、
強い味方が登場したことには変わりありません。

■ 基礎疾患のない乳幼児に接種可能な抗RSウイルス薬
 2024年5月22日、抗RSウイルスヒトモノクローナル抗体ニルセビマブ(遺伝子組換え)(商品名ベイフォータス筋注50mgシリンジ、同筋注100mgシリンジ)が薬価収載と同時に発売された。同薬は3月26日に製造販売が承認されていた。適応は
(1)生後初回または2回目のRSウイルス感染流行期の重篤なRSウイルス感染症のリスクを有する新生児、乳児および幼児における、RSウイルス感染による下気道疾患の発症抑制。
(2)生後初回のRSウイルス感染流行期の(1)以外の全ての新生児および乳児におけるRSウイルス感染による下気道疾患の予防」、
用法用量は
「生後初回のRSウイルス感染流行期には、
 体重5kg未満の新生児および乳児に50mg、
 5kg以上の新生児および乳児に100mgを1回、筋肉内注射する。
 生後2回目のRSウイルス感染流行期には、200mgを1回、筋肉内注射する」
となっている。
・・・
 RSVはほぼ全ての乳幼児が2歳までに感染することが報告されており、乳幼児の入院は基礎疾患を持たない場合も多い。月齢別の入院発生は生後1~2カ月時点でピークとなるため、生後早期からの予防策が必要とされている。
 現在、RSV感染症に対しては、重症化抑制薬として抗RSVヒト化モノクローナル抗体パリビズマブ(遺伝子組換え)(商品名シナジス)が、「基礎疾患を有する児や早産児」に使用されている。さらに、組換えRSVワクチン(アレックスビーアブリスボ)は対象を60歳以上の高齢者(アブリスボは妊婦も接種対象)に限定されている。しかし、パリビズマブでは基礎疾患を持たない正期産児および乳児に使用できないことが課題となっていた。
 ニルセビマブは、既存のパリビズマブと同様にRSVを中和するモノクローナル抗体で、血清中の消失半減期を延長するように改良されている。RSVが有するF蛋白質の膜融合前構造に対する、長時間作用型の遺伝子組換えヒト免疫グロブリンG1κ(IgG1κ)モノクローナル抗体製剤である。また、パリビズマブの対象患者のみならず、健康な新生児、乳児のRSV感染症による下気道疾患も抑制することが可能となっており、また用量が体重に応じて固定されているため、調整を必要としない。
・・・海外では、2024年1月現在、欧米など世界30カ国で販売されている。
 副反応として、主なものに発疹、注射部位反応、発熱(各0.1~1%未満)がある。重大なものとして、アナフィラキシーを含む重篤な過敏症反応、血小板減少を生じる可能性があるので、十分注意する必要がある。
 薬剤使用に際して、下記の事項についても留意しておかなければならない。

●重篤なRSV感染症のリスクを有する新生児、乳児および幼児に使用する場合の基準に関しては、添付文書の「効能又は効果に関連する注意」を確認すること
●心肺バイパスを用いた心臓手術により血中濃度が低下するため、術後安定した時点で速やかに補充投与すること(具体的な用法用量に関しては添付文書の「用法及び用量に関連する注意」の項を参照)
●保険給付は、「生後初回または2回目のRSV感染流行期の重篤なRSV感染症のリスクを有する新生児、乳児および幼児における、RSV感染による下気道疾患の発症抑制」に使用した場合に限る
●医薬品リスク管理計画書(RMP)では、重要な潜在的リスクとして「重篤な過敏症反応」「血小板減少」が挙げられている

この記事を読んで、ちょっと違和感を感じたこと。
それは「RSV感染症の流行期」というワードです。

昔はRSV感染症は冬に流行するのが定番でした。
しかし近年、冬以外にも流行する事象が増えてきて、
その常識が通用しなくなってきました。
私は小児科医ですが、実際に6月に入ってもRSV陽性患者に遭遇します。

はて、どう設定するんだろう?

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« RSVワクチン、登場! | トップ | 学校健診で「しゃがみ込み」... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

小児科診療」カテゴリの最新記事