徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

インフルエンザワクチン情報-7:未来の「万能ワクチン」

2015年09月04日 07時45分55秒 | 小児科診療
 インフルエンザワクチンを毎年接種しなければならないのは、「ウイルスがマイナーチェンジを繰り返す」ためで、ウイルスとワクチンのいたちごっこ状態。
 では、変化しない部位に対するワクチンを作れば解決するんじゃないか?と素朴な疑問が生まれます。
 そうなんです、ずっと研究されてきたのですが、なかなかうまくいきませんでした。
 しかしようやく、期待できるデータが報告されました;

■ インフルエンザの「万能ワクチン」開発に前進、研究
(AFP=時事:2015/08/25)
 インフルエンザの多様なウイルス株に対して有効に作用するワクチンの開発に向けた大きな一歩を踏み出したとする研究論文2件が24日、世界的に権威のある学術誌にそれぞれ発表された。
 「万能ワクチン」は、インフルエンザに対する予防接種の取り組みの至上目標となっている。世界保健機関(WHO)によると、絶えず形を変えるインフルエンザウイルスにより、毎年最大50万人が死亡しているという。
 既存のワクチンは、常に突然変異を繰り返すインフルエンザウイルスの一部をターゲットとしているため、製薬会社や保健当局は毎年、新しいワクチンを調合する必要がある。
 英医学誌「ネイチャー・メディスン」と米科学誌サイエンスで発表された2件の研究では、インフルエンザウイルスの従来のワクチンとは異なり、より不変性が高い部分を再現する最新ワクチンを、マウス、フェレット、サルなどを用いてそれぞれ試験した。
 この不変性の高い部分とは、インフルエンザウイルスの表面にあるスパイク状のタンパク質「赤血球凝集素(ヘマグルチニン、HA)」の茎部。先端の「頭部」が変化してもほぼ同じ状態のままであることが、科学者らの間では長年知られていた。
 だがこれまで、この茎部を用いて実験動物や人間で免疫反応を誘発することは不可能だった。この免疫反応によって、ウイルスは無力化されるか、体が感染細胞を攻撃して破壊することが可能となる。
 今回の研究で、米国立衛生研究所(NIH)ワクチン研究センターのハディ・ヤシン氏率いるチームは、HAの茎部を用いて免疫反応を発生させるために、「フェリチン」と呼ばれるナノ粒子サイズのタンパク質を、頭部のないHA茎部に「接ぎ木」した。
□ 「胸躍る進歩」
 次段階では、マウスとフェレットにワクチンを接種し、その後、強毒性のH5N1型「鳥インフルエンザ」ウイルスを注射した。H5N1型は、人間の致死率が5割を超えるが、伝染性はそれほど高くない。
 実験の結果、マウスはH5N1型インフルエンザから完全に保護されたことが分かった。また、インフルエンザワクチンの人間での有効性を予測するのに最適とされる動物種のフェレットの大半も発病しなかった。
 さらに、1回目の実験で生存したマウスから採取した抗体を新しいマウス群に注射したところ、このマウス群の大半でも発病はみられなかった。マウス群には、致死量となるはずの鳥インフルエンザウイルスが注射された。
 オランダのクルセル・ワクチン研究所のアントニエッタ・インパグリアッツォ氏が率いたもう1件の研究でも、HAの「茎部だけ」のワクチンを作製する同様のアプローチが採用された。
 ワクチンはマウスで有効性を示したほか、サルでも、高水準の抗体を誘発させ、H1N1型ウイルス感染後の発熱を大幅に緩和した。H1N1型は、鳥インフルより致死率がはるかに低いが、伝染性は非常に高い。
 今回の研究に参加していない他の科学者らは、万能ワクチンへの重大な一歩と研究成果を評価する一方で、臨床試験にたどり着くまでには、おそらく長年にわたって多大な研究を積み重ねる必要があるとの見解を示している。
 英オックスフォード大学のサラ・ギルバート氏は「これは胸躍る進歩だが、今回の最新ワクチンが、人間でどのくらい有効に機能するかを調べるための臨床実験が必要」と述べ、その段階に到達するにはあと数年かかると続けた。
 NIHの米国立アレルギー感染症研究所のシニアアドバイザー、デービッド・モレンズ氏は、ネイチャー・メディスン誌に掲載された研究について「これは、このワクチンのアプローチに関する重要な概念実証だ」としながら、「この種の免疫を誘発できれば、ワクチンを接種した人は理論上、鳥や哺乳類などの保菌動物からまだ出現していないものを含む全てのインフルエンザウイルスから保護される可能性がある」と説明した。


 実用化にはまだ時間がかかりそうですね。
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