最近映画いってないなぁ、とつくづく思うのですが、その反動なのか、このところ映画化作品のノベライズを読んでいるような気がします。まあ大抵そういう本は、映画との相乗効果を狙っているのか、本屋さんでも目立つところに平積みされていたりしますので、ついつい手をとってしまいがちなのですが、それほどハズレた、ということもありませんし、いつも、読み終わったら映画観に行こう、と思わせることが結構あります。残念ながら、大抵行けないのですが(涙)。
さて、この作品は新聞広告で見たことがあるだけで、ほとんど予備知識なしで購入しました。ちょうど大阪に仕事に行くときのことで、車中暇をつぶすのに格好の大きさでしたし、駅構内の書店で目立つところにあったそれを一冊拾い上げ、そそくさと電車に乗り込んだのでした。
感想は、一言で言うと、『ヤラレタ・・・』という感じでしょうか。読み始めてしばらくは、これは外したか、と少し後悔もしていたのですが、途中だんだん面白みが増してゆき、ラストで文字通り脱帽する爽快さを味わいました。
主人公は、どうやら数千年単位で活動されている死神稼業のヒトならざるモノ。死期の近いヒトの近辺にそのつど適当なヒトの姿をとって現れ、対象と接触して話をすることで、死の可否を見定める役割を仕事にしています。性癖として、しばしば仕事を二の次にしかねないほど様々な音楽に耽溺するところがあります。また、どういうわけか常に雨に遭い、晴れた空を見たことがない、と言います。ただ、長生きしすぎているからなのか、あるいはビジネスライクに割り切っているためなのか、それほど長くヒトと接し、話をすることを仕事としている割に、ヒトの機微が理解できず、頓珍漢なことを言ったりすることがままあります。
最初、違和感、というか「ハズシタ」と思ったのはまさにこの部分で、一体こいつ何年ヒトと付き合っているんだ? とその頓珍漢振りが今ひとつ理解に苦しんだのです。それに、判定対象の人間は一週間観察と調査を行ったうえで死の可否を判断するのですが、1週間あれば晴れた日が一日もない、などというのはちと考えられません。更に細かいことですが、音楽好き、ということでこの死神さんはしょっちゅう街中のCDショップなどの試聴コーナーに入り浸っているのですが、昔々そういうのがなかったときはどうやってその嗜好を満足させてきたのでしょう?・・・などと思いだすと、どうしてもその設定のムズカシサに足を引っ張られ、当初は心から作品世界を楽しむことができませんでした。
ただ、全6編の短編集のためか、お話のテンポがよく、文体のリズム感もあって、違和感を覚えながらも意外なほどスムーズに心地よく読むことができました。物足りなさを覚えかねないほどスパッと話を切り上げる思い切りのよいお話ばかりですし、そんなそれぞれ全く関連なく独立したお話を読み続けた上での、ラストの「死神対老女」の一編。これは見事なものです。それまで感じていた違和感も不満も一遍に吹っ飛んでしまいました。ラストまで読んでから改めて読み返すことで、また違った楽しさも味わえそうで、なかなかにお得な一冊だと思いました。
さて、この作品は新聞広告で見たことがあるだけで、ほとんど予備知識なしで購入しました。ちょうど大阪に仕事に行くときのことで、車中暇をつぶすのに格好の大きさでしたし、駅構内の書店で目立つところにあったそれを一冊拾い上げ、そそくさと電車に乗り込んだのでした。
感想は、一言で言うと、『ヤラレタ・・・』という感じでしょうか。読み始めてしばらくは、これは外したか、と少し後悔もしていたのですが、途中だんだん面白みが増してゆき、ラストで文字通り脱帽する爽快さを味わいました。
主人公は、どうやら数千年単位で活動されている死神稼業のヒトならざるモノ。死期の近いヒトの近辺にそのつど適当なヒトの姿をとって現れ、対象と接触して話をすることで、死の可否を見定める役割を仕事にしています。性癖として、しばしば仕事を二の次にしかねないほど様々な音楽に耽溺するところがあります。また、どういうわけか常に雨に遭い、晴れた空を見たことがない、と言います。ただ、長生きしすぎているからなのか、あるいはビジネスライクに割り切っているためなのか、それほど長くヒトと接し、話をすることを仕事としている割に、ヒトの機微が理解できず、頓珍漢なことを言ったりすることがままあります。
最初、違和感、というか「ハズシタ」と思ったのはまさにこの部分で、一体こいつ何年ヒトと付き合っているんだ? とその頓珍漢振りが今ひとつ理解に苦しんだのです。それに、判定対象の人間は一週間観察と調査を行ったうえで死の可否を判断するのですが、1週間あれば晴れた日が一日もない、などというのはちと考えられません。更に細かいことですが、音楽好き、ということでこの死神さんはしょっちゅう街中のCDショップなどの試聴コーナーに入り浸っているのですが、昔々そういうのがなかったときはどうやってその嗜好を満足させてきたのでしょう?・・・などと思いだすと、どうしてもその設定のムズカシサに足を引っ張られ、当初は心から作品世界を楽しむことができませんでした。
ただ、全6編の短編集のためか、お話のテンポがよく、文体のリズム感もあって、違和感を覚えながらも意外なほどスムーズに心地よく読むことができました。物足りなさを覚えかねないほどスパッと話を切り上げる思い切りのよいお話ばかりですし、そんなそれぞれ全く関連なく独立したお話を読み続けた上での、ラストの「死神対老女」の一編。これは見事なものです。それまで感じていた違和感も不満も一遍に吹っ飛んでしまいました。ラストまで読んでから改めて読み返すことで、また違った楽しさも味わえそうで、なかなかにお得な一冊だと思いました。