学問空間

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岡田温司著『グランドツアー 18世紀イタリアへの旅』

2017-01-12 | 古代オリンピックと近代オリンピック
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2017年 1月12日(木)11時04分26秒

古代オリンピックが「発見」される過程の参考にと思って岡田温司氏の『グランドツアー』(岩波新書、2010)を読んでみたところ、岡田氏らしく軽妙に書かれていながら内容はけっこう濃くて、多方面に好奇心を掻き立てられる本でした。

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『グランドツアー 18世紀イタリアへの旅』

折しもポンペイ遺跡発見の頃,ヨーロッパ中の知識人や芸術家が馬車にゆられてアルプスを越え,ローマを,ナポリを,ヴェネツィアを目指した.〈観光旅行〉のはじまりともいうべき旅のなかで,彼らを魅了した人,自然,遺跡,そして芸術とは? ゲーテの『イタリア紀行』で知られる当時のイタリアを,疾走感とともに描く.

中でもピラネージは特に興味深い人物に思われました。(p135以下)

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ギリシアVS.ローマ ピラネージの論争

 このように、パエストゥムのドーリス式神殿の「発見」は、単純にして力強い古代ギリシアというイメージを広めるのに大きく貢献したが、これにたいして古代ローマのほうはというと、逆に退廃と逸脱に侵された世界であったという見方が、一部で根強く浸透していた。第Ⅰ章でも述べたように、とりわけモンテスキューやヴォルテールといったフランスの啓蒙主義者たちにそれは顕著で、たとえば共和制のローマを栄光に満ちあふれた時代ととらえるのは「子供じみた誇張」にすぎないというのが、彼らの大方の見解であった。
 こうしたローマ観にたいして果敢に論争を仕掛けていったイタリアの建築家がいた。古代をモチーフにした数多くの版画やデッサン類を残したことでも知られるピラネージである。一七四三年、生まれ故郷のヴェネツィアからローマに居を移したピラネージは、単純明快さや規則性という理想的な古代イメージにたいして、あえて多様性や異種混淆性に富み、奇想(カプリッチョ)や想像力にあふれる古代のイメージを提示してみせようとしたのである。飽くなき論争家、それが彼の天命である。
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Giovanni Battista Piranesi(1720-78)

ピラネージについては結構な数の画集や研究書があって、深入りしたら暫く帰って来れなくなりそうですが、とりあえずはマルグリット・ユルスナール著・多田智満子訳の『ピラネージの黒い髄脳』(白水社、1985)くらいにとどめておこうと思います。
昔、「世善知特網旧殿」の如月さんからユルスナールや多田智満子についてのお話を聞いたことがあったのですが、当時の私はフランス文学や思想に興味がなくて、馬の耳に念仏、猫に小判状態でした。
最近は如月さんの世界にも少し近づいたような感じがします。

「世善知特網旧殿」

>筆綾丸さん
>浜松いなさICから国道257を少し南下すれば龍潭寺があって

『青柳瑞穂の生涯─真贋のあわいに』を確認してみたところ、青柳瑞穂の最初の妻の実家が旧・伊平村(現・浜松市北区引佐町伊平)にあったそうで、地図をみたらまさに「浜松いなさICから国道257を少し南下」して龍潭寺に行く途中ですね。
ただ、私が龍潭寺関係の話と記憶していた骨董にまつわるエピソードは、実際には摩訶耶寺というお寺に関するもので、いい加減な記憶に基づいて適当な話をしてしまいました。

「おんな城主 直虎」推進協議会サイト内 「ゆかりの地」

※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。

新東名はすべて山の中である 2017/01/11(水) 16:33:45
小太郎さん
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%9C%E6%9D%BE%E3%81%84%E3%81%AA%E3%81%95%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%82%B8
昨年、新東名で二度ほど京都を往復しましたが、浜松いなさICから国道257を少し南下すれば龍潭寺があって、今年の観光名所になりそうですね。往昔、もののけ姫が跋扈していたのか、と考えると、素通りして申訳なかったような由緒正しいインターチェンジです。

http://www.ghibli-museum.jp/
中央線三鷹駅以西は不案内ですが、国立駅から都心に少し戻ると多摩墓園を挟んでジブリ美術館があるので、一橋大学「社会学部」の中でも霊感の強い研究者は宮崎監督の磁場にシンクロするのかもしれないですね。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170107/k10010831921000.html
京都妙傳寺の半跏思惟像は、曜変天目茶碗くらいの骨董的価値があるようですね。
今日の日経一面に、中国の国有企業「珠海格力」の董事長である董明珠(女性)が共産党に睨まれて解任された、という記事がありますが、骨董と董事では意味がまるで違いますね。董という姓の董事長といいい、名の一字(珠)が企業名にあることといい、冗談のような感じすらします。
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