学問空間

「『増鏡』を読む会」、第10回は3月1日(土)、テーマは「二条天皇とは何者か」です。

F.ポランツァーニが描いた「ピラネージの肖像」

2017-01-13 | 古代オリンピックと近代オリンピック
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2017年 1月13日(金)20時08分18秒

前回投稿で書いたプチ疑問ですが、これは「訳者あとがき」を読んであっさり解決しました。
もともと『ピラネージの黒い髄脳』は単著ではなく、『幻想の牢獄』の復刻版を出版しようとした編集者の依頼に応じて、その復刻版の解説として書かれたものだそうです。
その復刻版には、おそらく邦訳書p9に掲載され、ウィキペディアのフランス語版にも登場する F.ポランツァーニが描いた「ピラネージの肖像」が載っていて、邦訳書p14の「≪幻想の牢獄≫の口絵の肖像」とは復刻版の口絵の肖像のことのようですね。

Felice Polanzani(1700-83)
https://it.wikipedia.org/wiki/Felice_Polanzani

この「訳者あとがき」もなかなかの名文ですので、参考までに紹介しておきます。

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 マルグリット・ユルスナールは、近年日本でも次々と作品が翻訳・紹介され、とみに名声のあがった作家であるが、評論にもすぐれ、今までに二冊、美しい評論集を出している。
 『ピラネージの黒い髄脳』は一九六一年、≪幻想の牢獄≫の復刻版のために書かれたもので、後に評論集『条件付きで』(一九六二年)に収録されている。もうひとつの評論集『時、この偉大な彫刻家』は一九八三年に出版されたが、この題を見るだけでも、古代の遺跡、廃墟、古文書、いや、「時」によって変容をこうむったあらゆるものへの、彼女の深い関心がうかがえると思う。
 ピラネージが古代遺跡の、写実的でしかも幻想的な版画を遺してくれたのと同じように、ユルスナールは、ピラネージも銅板に刻んだ聖天使城〔サン・タンジェロ〕とよばれる中世の獄屋、いな、古代の大霊廟の正統の主である皇帝ハドリアヌスを主人公として、史実に忠実でしかも芸術的に完璧な歴史小説を書いた。考えようによっては、みずから「古代の復元」に成功した作家ユルスナールは、どんな美術評論家よりも、遺跡の版画家を論ずるにふさわしい人物といえよう。ピラネージの復刻版のために、彼女に一文を草することを慫慂した編集者も、きっとそのようなことを考えていたにちがいないのである。

一九八五年 夏
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1985年夏というと日本航空123便墜落事故が起きた頃で、ずいぶん昔のことになりました。
ウィキペディアの多田智満子氏の項を見ると『ハドリアヌス帝の回想』の翻訳が絶賛されていますが、さほど大部の本でもなさそうですから、ついでにこれも読んでおこうかなと思います。

Marguerite Yourcenar(1903-87)
https://en.wikipedia.org/wiki/Marguerite_Yourcenar
多田智満子(1930-2003)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%9A%E7%94%B0%E6%99%BA%E6%BA%80%E5%AD%90
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